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日本測量協会が刊行する「応用測量論文集」について住田専務理事に聞く

2026年06月15日

公益社団法人日本測量協会では毎年、GNSS測量を始め様々な応用測量分野に関する研究成果や事例報告を募集して「応用測量論文集」を刊行しています。近年はみちびきやGNSSに関連した論文が増えており、昨年(2025年)8月刊行の第36巻では、掲載された22件のうち3件がタイトルにCLAS(センチメータ級測位補強サービス)を含むものでした。その中には、先日当ウェブサイトで紹介した日本大学の佐田達典教授による論文や、2023年度のみちびきを利用した実証事業に参加した株式会社松本コンサルタントの論文も含まれています。そこで今回は日本測量協会に住田英二専務理事(兼常務理事)を訪ねて、応用測量論文集の果たす意義や、測量分野におけるGNSSの活用について詳しく伺いました。

取材写真-1

住田氏

公益社団法人日本測量協会は、戦後間もない1951年に産官学の有志によって創立された測量技術者の会員団体です。1949年に測量法が制定され、国が行う測量とは別に、地方公共団体や民間企業が実施する測量が規定されたことに伴い、広く測量技術者を育成することを目的として設立されました。
創立の翌年には社団法人化し、2013年には内閣府に認定された公益社団法人へと移行して、現在は1万1千名を超す正会員及び約2,200社の特別会員(賛助企業)を擁する技術者団体へと成長しています。また、2011年には日本学術会議から協力学術研究団体に指定され、測量分野を代表する学術研究団体としても活動しています。
その活動内容は、月刊誌『測量』の刊行、測量関連図書の出版、各種講習会や技術セミナーの開催、「測量・地理空間情報イノベーション大会」や「G空間EXPO(地理空間情報フォーラム)」などのイベント開催、測量関連の論文をまとめた「応用測量論文集」の刊行、「測量CPD(Continuing Professional Development:継続教育)制度」の運営、空間情報総括監理技術者や地理空間情報専門技術者の資格制度の運営、測量機器・成果の検定など多岐にわたります。
測量技術者を育成する教育機関であると共に、測量関連の事業や研究活動を支援する団体でもある協会の位置付けを、住田氏は次のように説明します。
「世間から“業界団体”という目で見られがちですが、私どもはどちらかというと“学会”に近い存在と認識しており、測量技術を深めるための学術研究をきちんとフォローしながら技術者を育むことが重要と考えています」

論文集表紙

応用測量論文集 第36巻の表紙

応用測量論文集は、協会が学術研究活動の一環として継続して取り組んでいるもので、1990年から毎年刊行され、2025年に第36巻に到達しました。応用測量の分野における研究成果を対象としており、論文だけでなく実務や技術的な事例報告、測量教育などの事例報告など幅広い成果を募集しています。
テーマはGNSS測量やレーザ測量、移動体計測、工事測量、環境測量、構造物計測、遺跡計測、地形情報処理、 測量機器開発、計測システムのほか、地理空間情報の利活用や測量教育、測量史、実務利用事例、関連する法令・制度、新規事業ビジネスモデルなど、地理空間情報に関する幅広い領域を対象としています。
協会には全国各地に10の支部組織がありますが、この論文集は当初、関東支部で独自に立ち上げられました。その後、十数年前に論文集の運営が本部に移管され、現在に至ります。論文集を刊行する意義を住田氏に訊きました。
「現在は、地理空間情報を利用する場面が大きく拡がり、カーナビやスマートフォンで誰でも自由に地図を見ることができるようになりました。この論文集は、地理空間情報の様々な利活用が見込める分野において技術研鑽の場を用意すること、そして新たな研究を奨励することを目的としています」(住田氏)
論文の応募条件は、執筆者のうち1名以上が日本測量協会の会員であることです。受け付けた論文は、十数人の識者で構成される編集委員会において、1つの論文に対して3人が査読を行った後に掲載されます。年齢制限がなく、大学生・大学院生を含め、若手からシニアまで幅広い年代の技術者・研究者から毎年約20の論文が応募されてきます。また、論文を発表する場として毎年、技術研究発表会が開催されています。

取材写真-2

論文集に掲載される中で、特に優れたものに対して「応用測量論文奨励賞」が授与されます。数は特に決まっていませんが、毎年2~5点の論文が受賞しています。受賞論文は、編集委員会の会議で選考の上、決定されます。
現時点で最新の第36巻(2025年刊行)では、5点の論文に応用測量論文奨励賞が授与されました。その中には、みちびきのCLASに関連した2点の論文、「CLASを利用した地籍調査の新手法に向けて:農耕地・樹園地における精度検証と実務適用評価」(株式会社松本コンサルタント 猪木幹雄氏・尾﨑弘氏・菅野雄一氏)と「VRSの測位解点検方法との比較によるCLASの測位解点検方法の提案」(日本大学 佐田達典教授・元日本大学大学院 飯塚洸貴氏・元日本大学 志村悠斗氏)が含まれます。

▽「CLASを利用した地籍調査の新手法に向けて:農耕地・樹園地における精度検証と実務適用評価」 (株式会社松本コンサルタント 猪木幹雄氏・尾﨑弘氏・菅野雄一氏)

精度検証点でのCLASの精度検証結果をもとに、土地の境界を測る“一筆地測量”の作業マニュアル案を作成した上で実地検証を行いました。地籍測量は市街地や農地、森林など地域によって求められる精度が異なりますが、精度区分において甲区分の中でもっとも誤差許容範囲の広い甲三地区(*2)と、農地や山間部の乙一地区(*3)おいて一筆地測量に必要な精度を確保できていると確認できました。これは、農地などであればCLASを地籍測量に十分活用できることを示す結果であり、実用性のあるアプローチが評価されたと住田氏は説明します。

(*2)甲三地区:大都市または中都市以外の市街地及び村落並びに整形された農用地区域
(*3)乙一地区:農用地及びその周辺の区域

実地検証の様子-1

実地検証(徳島県佐那河内村)

実地検証の様子-2

実地検証(千葉県長南町)

▽「VRSの測位解点検方法との比較によるCLASの測位解点検方法の提案」
(日本大学 佐田達典教授・元日本大学大学院 飯塚洸貴氏・元日本大学 志村悠斗氏)

公共測量で使用可能なVRS方式(仮想基準点方式)のネットワーク型RTK(リアルタイムキネマティック)の点検に準じた方法で、CLAS及びVRSの点検を実施して比較した論文です。この中では、基準点においてFix解を取得してから一定時間で再初期化を繰り返す静止測位実験を行い、その結果について統計グラフを用いて分析し、時間変動を比較したほか、公共測量の「作業規程の準則」で示されている点検方法の信頼性を評価しました。こちらはCLASとRTKの精度評価を緻密に取り組んだ点が評価されたと、住田氏は話します。

静止測位実験の様子-1

静止測位実験(CLAS)

静止測位実験の様子-2

静止測位実験(RTK)

表彰式写真

2025年の応用測量論文奨励賞 受賞者(提供:公益社団法人日本測量協会)

発表会写真

第36回応用測量技術研究発表会(2025年8月、提供:公益社団法人日本測量協会)

応用測量論文集には、GNSSやレーザ測量、3D都市モデルなどをテーマとする論文が数多く応募されており、みちびきに関連した研究報告も増えてきました。今年刊行される第37巻にも、みちびきをテーマにした論文が掲載される予定です。
住田氏によれば、GNSSによる測量が始まった当初は、GNSSをどういう条件でどうやって活用すれば精度が良くなるのかという研究が数多く行われたといいます。
「それが今ではスタンダードな技術として、国土交通省が規定する公共測量の『作業規程の準則』にも掲載されるようになりました。今後、全国各地でみちびきに関する様々な研究が行われ、事例が蓄積されれば、測量に用いる際のいろいろな決めごとがさらに規定されていくことになります」(住田氏)

取材写真-3

日本測量協会は2026年6月30日と7月1日の2日間、協会が単独で主催する「測量・地理空間情報イノベーション大会2026」を都内で開催します(オンデマンド配信は7月21日~8月18日)。日本全国から測量技術者が集まって交流を図るイベントであり、今年は人材育成をメインテーマに、測量関連企業による人材育成の講演や、生成AI、リモートセンシング、3次元計測など幅広い分野の講演が行われます。

人材育成については、測量の現場から技術者の確保や育成がどんどん厳しくなってきているという声が数多く寄せられており、喫緊で取り組まなければいけない課題としてメインテーマに設定されました。住田氏は、こうした課題を解決するためにも、みちびきのサービスがもっと日常生活に入り込んでいってほしいと話します。
「測量の世界は、これまであまり世間から認知されてきませんでした。しかし、地理空間情報が地図アプリやカーナビなどのサービスを支える“陰の力”として存在感を増しており、今後みちびきの活躍の場がどんどん広がっていくと期待しています」(住田氏)
測量分野における課題解決に向けて、みちびきのさらなる活用拡大への期待を語り、インタビューを締めくくりました。

取材写真-4

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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