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IoTエンジニアの注目を集めるGPS付SBC「ドラゴンボード410c」

2017年03月04日

私たちが利用するスマートフォンの心臓部には、SoC(System on a Chip、システム・オン・チップ)と呼ばれる半導体集積回路が使われています。一つのチップの中にCPU(中央演算処理装置)のほか、カメラの画像処理やディスプレイ描画、無線通信、測位演算など、スマートフォンやタブレットが必要とする多くの機能やそれを実現する回路が詰め込まれており、同時にサイズと消費電力の制約をクリアするよう設計されたものです。

一方、そうした多機能で高性能なSoCの普及により、シングルボードコンピュータ(SBC:Single Board Computer)という新たな形態のコンピュータも登場しています。クレジットカード程度かそれ以下のサイズながら、コンピュータとして必要な機能がすべて盛り込まれたもので、英国の非営利法人が企画した「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」が代表格です。Raspberry Piは価格が低く設定されたこともあって、2012年の発表以来、現在までに1100万枚超が販売される大ヒットとなりました。他にも多くのシングルボードコンピュータが世に送り出され、新たな市場が生まれています。

単体でGPSに対応した初のシングルボードコンピュータ

ドラゴンボード410c

シングルボードコンピュータ「ドラゴンボード410c」。左辺にアンテナパターンがあり、上辺にはUSB×2ポート、microUSB、HDMI、microSDカードスロットが並ぶ

2015年の暮れ、スマートフォン向けチップセットで大きなシェアを誇るクアルコム(Qualcomm)社のスナップドラゴン(Snapdragon)を搭載した、アロー・エレクトロニクス(Arrow Electronics)社のシングルボードコンピュータ「ドラゴンボード410c」が、国内最大級の電子部品通販サイト、チップワンストップで販売開始されました。

このドラゴンボード410cには標準でGPSが搭載されており、電子基板の表面には配線でアンテナパターンが描かれました。GPSによる衛星測位に単体で対応した、最初のシングルボードコンピュータとして登場したわけです。

販売ターゲットは、製造業やサーバ系のエンジニア

アロー・ユーイーシー・ジャパンの目黒氏

アロー・ユーイーシー・ジャパンの目黒氏

日本でこの製品のプロモーションに関わるアロー・ユーイーシー・ジャパン株式会社IoT事業推進室長の目黒学氏は、製品の位置づけを次のように説明します。

「ドラゴンボード410cは、製造業のエンジニアはもちろんサーバ系のエンジニアなどもターゲットとして企画された製品です。タッチディスプレイと3G/LTE通信機能がないだけで、ほぼAndroidスマートフォンと同じものと考えていただいて結構です。電子工作やホビー中心のRaspberry Piに比べ、さらにビジネスに近いところをねらっています」

同社が運営するチップワンストップは、製造業のエンジニアを中心に会員数20万人以上を有する大規模サイトであり、その注文や販売の動向は、業界の関心がどう動いていくかを示すインデックスとしても見ることができます。

IoTエンジニアなどから高い関心を集める

「ドラゴンボード410cは、IoT(Internet of Things)のハードウェアの開発・設計に関わるエンジニアからの関心が高まっています。比率として多いのはインジケーターやサイネージなどディスプレイとしての用途ですが、GPS機能を使い、位置情報を連続して記録するロガー機能や、ゴルフカートなど移動体での利用を考えているお客さんもいらっしゃいます」(目黒氏)

この種の用途では、世代更新が速いスマートフォンとは比べ物にならないほど息の長い製品サポートが求められます。クアルコム社もIoT向けに提供するSoCでは10年間の長期供給を約束しています。同社では今後、3G/LTEやLoRaWAN(=IoT向け通信技術である低消費電力広域ネットワークの一つ)などの通信機能を持った拡張ボードなどを提供し、もっと多くの潜在ユーザーに働きかけたいとしています。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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