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和光市で、SLASを活用した見守り端末「Ropot」の実証実験

2020年12月21日

Hondaグループの研究・開発機関である株式会社本田技術研究所は2020年11月26日~12月11日の期間、同社が開発中の小型見守りロボット端末「Ropot(ロポット)」の実証実験を、埼玉県和光市教育委員会の協力を得て同市内の下新倉小学校で実施しました。

小学校の校舎とRopotの画像

和光市立下新倉小学校(左)と小型見守りロボット端末「Ropot」(右)

ランドセルに装着して安全確認地点で注意喚起

Ropotは、小学校入学間もない児童の交通事故が非常に多いという課題を解決するために同社が研究開発を行っている小型ロボットで、ランドセルの肩ベルトに装着して使用します。日本の準天頂衛星システム「みちびき」のサブメータ級測位補強サービス(SLAS)に対応しており、高精度測位によって得られた位置情報をもとに、あらかじめ設定された安全確認地点に児童が近づくと、振動して安全確認を促します。また、自動車開発で培われたセンサー技術を活用して、後方から自動車が近づいてくるのを検知した際に、振動で注意喚起する機能も搭載しています。

今年9月に幕張メッセで開催された第12回教育ITソリューションEXPOに試作品を出展し、教育関係者に意見を聞いたところ、来場者からの反響が大きかったことから、このたび実証実験を行うことになりました。実際に小学生に登下校時に使用してもらい、児童・保護者へ使用感などの聞き取り調査を行うことになったものです。(今回の実証実験は、和光市のほか九州の福岡市でもほぼ同時期に実施されました。)

児童の下校風景

実証実験の初日、ランドセルにRopotを付けて下校する下新倉小学校の児童たち

地元企業の安全への取り組みに、保護者も期待

統計によると、7歳児は交通事故の死傷者数が極端に多く、“魔の年齢”とも呼ばれています。Ropotはこの課題を解決するために開発されたロボットであり、和光市の実証実験でもターゲットとなる7歳(小学1年生)に絞って、先着順で協力者を募集しました。その結果、応募してきた児童に25台のRopotを貸与して実証実験を行いました。

前島氏

和光市教育委員会の前島氏

和光市教育委員会事務局の前島祐三氏(事務局次長、兼教育総務課長)によると、下新倉小学校における今年の1年生は全部で約100人。今回の募集枠はその4分の1に当たる25人でしたが、希望者ですぐに埋まってしまったそうです。
「本田技術研究所は和光市の地元企業であり、その会社が子どもの安全に資する開発に取り組んでいるということに保護者は大きく期待しています。(今回の1年生だけでなく)他学年の保護者からも参加したいという声が聞かれたほどです」(前島氏)

和光市の北東部、荒川近くに位置する下新倉小学校は、周辺を車通りが多い幹線道路に囲まれ、通学路が大型車の抜け道として使われることもある環境です。一方で、小学校の近隣は住宅が多く、ビルなどの高い建物が少ないため、衛星測位の環境として良好です。
「Ropotは交差点に差しかかった時に、そこが安全確認が必要な場所だと教えてくれるロボットです。誤差が5~10mになったのでは、リマインドするタイミングが全く変わってしまいます。みちびきのサービス(SLAS)を使えばそれが1~2mになるので、Ropotにはとても有効だと思います」(前島氏)

スタッフ登下校ルートを歩いた軌跡(サンプル画面)

ルートはスマホで確認可能(スタッフが歩いたサンプル画面、画像提供:株式会社本田技術研究所)

前島氏は、Ropotの開発担当者である本田技術研究所ライフクリエーションセンターの桐生大輔氏(完成機開発室 知能・制御ブロック チーフエンジニア)と以前から交流があり、9月に行われた幕張メッセの展示会で実際にRopotを目にして、実証実験への協力を申し出たそうです。
「自動車メーカーであるホンダから、交通事故の削減のために何とかしたいという熱い気持ちを感じました。われわれ教育に携わる者としても、子どもたちが少しでも安心・安全に学校生活を送れるようにぜひとも協力したい、という話になりました」(前島氏)

ユーザーに受け入れられるかを、実証実験で確認したい

桐生氏

本田技術研究所の桐生氏

本田技術研究所の桐生氏に、今回の実証実験の目的を聞きました。
「Ropotを家庭の生活サイクルの中で、小学生に実際に使ってもらうのは、今回が初めての機会でした。Ropotが本当にユーザーにとって価値あるものとして受け入れられるかどうかを確認する、というのが一番大切なことだと考えています」(桐生氏)

下校風景

和光市での実証実験の初日となった11月26日午後、下新倉小学校では、Ropotを肩に載せた児童たちが元気よく校門から下校していきました。そこには開発者である桐生氏の姿もありました。
「見た目で子どもたちにすごく受け入れられているのが分かるので、このデザインは“入口”としては良かったと思います。あとは実証実験の終了後に、保護者の方に感想を聞いて、この製品の使い心地や改善点などをしっかり聞きたいと思います」(桐生氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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