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「社会課題解決型 宇宙人材育成プログラム」2015年度の成果報告会を開催

2016年02月29日

東京大学生産技術研究所の駒場コンベンションホールで2月23日、文部科学省委託事業「グローバルな学び・成長を実現する社会課題解決型宇宙人材育成プログラム」の2015年度 成果報告会が開催されました。

人材育成を行う国際教育プログラムであるG-SPASE 2が始動

東京海洋大学・久保信明 准教授

東京海洋大学・久保信明 准教授

文部科学省 研究開発局・松本和人 次長

文部科学省 研究開発局・松本和人 次長

宇宙と地上のインフラを統合し、問題抽出から課題解決に関わることのできる人材の育成と、国内外のネットワークづくりを目的とするこのプログラムは、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科が代表機関を務め、東京大学 空間情報科学研究センター(CSIS)、東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科、青山学院大学 地球社会共生学部、事業構想大学院大学 事業構想研究科が参加しています。
また、参加学生はタイ、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ラオス、オーストラリアなどの大学・政府機関などとの連携を通じ、現地の多様な社会課題に取り組んでいます。
報告会は、東京海洋大学の久保信明 准教授の開会挨拶と、文部科学省 研究開発局の松本和人 次長の「デジタル・ネイティブな若者たち」(松本氏)への期待を込めたメッセージで幕を開けました。

▼基調講演1:自身の技術を他領域への応用する手法を提示

データアーティスト株式会社・山本覚 代表取締役社長

データアーティスト株式会社・山本覚 代表取締役社長

基調講演1として登壇したデータアーティスト株式会社の山本覚 代表取締役社長は、「研究者から起業家へ、人工知能でビジネスを変革する」と題した講演の中で、ネットワーク分析の手法をデータ解析からWebマーケティング、政党支持率や、企業や商品のブランディングに適用した事例を紹介しました。さらに会場の学生に向けて、自ら起業し会社を成長させていく上で、大学・大学院時代の研究だけでなくバンドマンとしてのキャリアが役立ったと語りかけ、「自身の技術の他領域への応用可能性」「自分の技術の価値を相手に説明できる」「自分の技術の価値を広く伝えられる」というキーワードを呈示しました。

▼基調講演2:世界で活躍するにはコンピテンシーが欠かせない

株式会社IGS 代表取締役/一橋大学 特任教授・福原正大氏

株式会社IGS 代表取締役/一橋大学 特任教授・福原正大氏

基調講演2で登壇した、株式会社IGS 代表取締役・一橋大学 特任教授の福原正大氏による「宇宙/地理空間情報の分野で活躍する人材になるために」と題した講演では、海外金融市場で人工知能を使った為替予測を手がけてきた自身の経験をもとに、AIを人材教育に適用する取り組みを紹介。どんな分野であれ世界で活躍するためには「スキル」と「パーソナリティー」に加え、「コンピテンシー(成果につながる強み)」が欠かせないと指摘。どのようにそれを伸ばすかという「コンピテンシーベースの教育」の重要性を強調し、学生たちに「この分野を代表し牽引する人材となれ!」とエールを送りました。

▼東京大 柴崎教授:宇宙インフラは世界で通用するGlobal Common

東京大学 CSIS・柴崎亮介 教授

東京大学 CSIS・柴崎亮介 教授

続いて東京大学 CSISの柴崎亮介 教授が、「日本で作ったとしても、宇宙インフラであれば世界で通用する。これがGlobal Commonだ」との提起に続き、「宇宙地理空間技術による革新的社会サービスコンソーシアム(GESTISS; GEo-spatial and Space Technology consortium for Innovative Social Services)」のグランドデザインや、設立の背景、個々の活動、アジア各国の核となる大学への、教育用GNSS基準局の展開計画「MGA2016(Multi-GNSS Asia)」について報告しました。

▼慶應大 神武准教授:学び教え合う枠組みづくりを提起

慶應義塾大学大学院 SDM研究科・神武直彦 准教授

慶應義塾大学大学院 SDM研究科・神武直彦 准教授

さらに慶應義塾大学大学院 SDM研究科の神武直彦 准教授は、イベント標題の「グローバルな学び・成長を実現する社会課題解決型宇宙人材育成プログラム」のビジョンと今年度の成果を報告しました。
神武 准教授は、2012~14年度のG-SPASEプログラムで得られた教訓として、「国内外における協働プロジェクト」「学生の興味やスキル・知識に応じた教材や課題設定」「学び教え合う枠組みづくり」「実社会への展開の支援」の重要性を指摘しました。また、これを引き継ぐ2015~17年度のG-SPASE2の目標や運用シナリオについて解説し、今後整備される予定のeラーニングシステムや、連携予定の国際機関及び海外大学、起業・スタートアップ事業支援の枠組みなどを紹介しました。

▼参加学生によるプレゼンやプロジェクト報告

プロジェクト報告

ポスターセッションとそれに続く参加学生10名によるプレゼンテーションを挟んで、このプログラムに参加した学生のうち4名が、以下のプロジェクト報告を行い、会場と活発な質疑応答を行いました。
・GNSS Base Station(GNSS基準局):アジア地域におけるRTK-GNSS基準局の設置およびそれによる測位精度向上に向けた取り組み(東京海洋大学・土倉弘子さん)
・Early Warning System(早期警報システム):準天頂衛星の災危通報メッセージなどを活用したアジア各国での早期警報システムの機能性能向上による安全・安心のための取り組み(慶應義塾大学・西野瑛彦さん)
・Log Analysis(ビッグデータ解析):携帯電話のログデータやTwitterデータを用いて機械学習やデータマイニングを行うことによる、都市の魅力や課題の可視化についての取り組み(東京大学・宮沢聡さん)
・Agri-Intelligence(農業の高度化):人工衛星によるデータやディープ・ラーニングなどの技術を用いた農業モニタリングモデルによる、アジア各国での農業の革新、効率化の取り組み(事業構想大学院大学・平岡誠司さん)

▼パネルディスカッション:新たな出会いがイノベーションにつながる

、神武直彦准教授(慶應義塾大学 SDM)、柴崎亮介教授(東京大学 CSIS)、土倉弘子さん(東京海洋大学)、福原正大氏(IGS代表取締役・一橋大学特任教授)、平岡誠司さん(事業構想大学院大学)

プログラムの最後に、神武直彦准教授(慶應義塾大学 SDM)がモデレーターを務め、柴崎亮介教授(東京大学 CSIS)、土倉弘子さん(東京海洋大学)、福原正大氏(IGS代表取締役・一橋大学特任教授)、平岡誠司さん(事業構想大学院大学)の四氏がパネルディスカッションが行いました。(写真:氏名は左から右へ壇上の並び順)

その中では、「G-SPASEに関わることで視野が広がり、さまざまなキャリアパスを持った方が、いろんな仕事に関わっていることを知り、よい刺激が得られている」(土倉さん)、「中小企業の経営などに関わってきた経験を、優秀な学生さんたちの知識や意欲と絡め、プロジェクトとして動きだしつつある段階で、たいへん好奇心を刺激されている」(平岡さん)、「欧米のこの種のイベントと違うのは、お金のニオイがしないこと。メリットでもあり、デメリットでもある。起業するしないは別として、思いついたアイデアの事業計画書まで仕上げてみることをお勧めしたい」(福原氏)、「アジアの大学との関わりを通して得られたこれまでの活動の蓄積が、今後の実りにつながる期待を大きく持っている。非常に楽しみ」(柴崎教授)などのコメントがありました。

また主催者の一人、久保信明准教授(東京海洋大学)からも、「G-SPASEに関わったことで、学生さんはもちろん指導に当たる私たちの活動の幅や視野も広がった。新しい人との出会いや刺激が、研究の進展やイノベーションにつながると思う」とのコメントもありました。

このプログラムの成果報告会等は、次年度も継続的に実施される予定です。

参照サイト

※ヘッダ画像は「GESTISS」ウェブサイトより

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