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中部大のGNSS小型受信機、軌道上でみちびき受信を確認

2019年04月08日

中部大学は3月29日、革新的衛星技術実証1号機(RAPIS-1)に搭載され打ち上げられたGNSS小型受信機「fireant(ファイアアント)」が、軌道上でみちびきの受信・測位利用を確認したと発表しました。

高度約500km、約95分で地球を周回しながら測位

RAPIS-1は今年1月18日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケット4号機で鹿児島県にある内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられました。衛星には6機関による7つの部品やコンポーネントが搭載されており、そのうちの一つが中部大学の海老沼拓史氏(工学部宇宙航空理工学科、准教授)が開発したGNSS小型受信機「fireant」を組み込んだアンテナ一体型の受信モジュールです。

JAXAの超小型衛星RAPIS-1

JAXAの超小型衛星RAPIS-1

太陽電池を広げたイメージ

太陽電池を広げたイメージ(2点ともJAXA提供)

fireantは、受信機部分が縦22mm/横17mm/厚さ3mmの切手サイズ(アンテナなど周辺回路と組み合わせても52mm角/厚さ11mm)で、消費電力も150mW。みちびき、GPS、GLONASSの3つの衛星測位システムに対応しており、すでに超小型衛星や観測ロケット等で利用実績を重ねてきました。

fireantを組み込んだ受信モジュール

fireantを組み込んだ受信モジュール(JAXA提供)

しかしこれまでの宇宙実証機会には、どの衛星を利用して測位を行っているかの情報は得られていませんでした。これは、言ってみれば「出題された問題に正解を出しているが、計算の過程が見えない状態」(海老沼氏)という訳で、海老沼氏は、軌道上での測位演算のプロセスを把握し、さらなる開発につなげたいとRAPIS-1のプログラムに応募しました。その結果、採択されて実施したのが、今回の軌道上試験です。

2月11日に実施された試験のデータを解析したところ、fireantは電源ONからわずか42秒で必要数の衛星を捕捉し測位を開始。ダウンロードしたデータから、どの衛星を利用していたかも明らかになり、その中で初めて、みちびきの軌道上での受信と測位利用が確認できました。

▽今回の動作試験で取得されたNMEAデータのモニター画面

今回の動作試験で取得されたNMEAデータのモニター画面

スカイプロット画面中央にある丸囲み数字193(=PRN番号)が、みちびき初号機(fireantはPRN193=初号機のみ対応)。対象となる約60機から平均16機の電波を受信し、測位を行っていることが確認できた(中部大学提供)

「初期測位開始42秒というのは、予想していた中でも良いほうの数値」と海老沼氏は言います。fireantは、地上で電波の減衰を補償するために使う計算リソースを、ドップラーシフト量の大きい衛星の測位信号捕捉に振り向け、宇宙機用に最適化したアルゴリズムを搭載した受信モジュールです。海老沼氏は、この詳細なデータを見てようやく「ホントに動いているんだ」と実感できたとして、「みちびき2号機以降への対応も今後、検討していきたい」と語っています。

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

参照サイト

※ヘッダ及び本文画像提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)、中部大学

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