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国交省が位置情報活用サービスを考えるハッカソン開催

2016年12月01日

国土交通省は2016年11月19・20日の2日間、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、スポーツイベント時の位置情報を活用したサービス創出を考えるハッカソンを横浜市の日産スタジアムで開催しました。

開発中の様子

開発中の様子

これは高精度測位社会プロジェクトの一環として開催されたもので、衛星測位やビーコンなどを組み合わせた高精度な屋内外シームレス測位技術を活用して、日産スタジアムの場内や同競技場のある新横浜公園、スタジアムへたどり着くまでの駅構内や店舗情報とも組み合わせた新しいサービスを考えることを目指しています。場内各所にはBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンも設置され、GPSだけでなく衛星電波の届きにくいスタジアム構内でもシームレスな測位を実現します。

ビーコンを設置

エレベーターの入口付近などにビーコンを設置

ビーコン

設置したビーコン

アイデアソンで考えたアイデアを具現化

ハッカソンに先立って、11月6日には同様のテーマについてアイデアを考えるアイデアソンも開催されています。アイデアソンには、横浜市及び日産スタジアムの関係者のほか、横浜F・マリノスの関係者、位置情報・空間情報ビジネスに関係している人、サッカー及びスポーツの関係者、大学生・大学院生などが参加し、6チームに分かれてアイデアを考えました。ハッカソンでは、ここで創出された6つのアイデアをベースに、アプリやサービスの形に具現化しました。
初日の19日は、アイデアソンや11月9日に東京・豊洲で開催したプレハッカソンの振り返りの後、チームごとに分かれて開発を行いました。途中には、日産スタジアムの中を見学する時間も設けられました。2日目も引き続き、午前から開発をスタートしました。各チームは開発の最終仕上げや、成果発表に使うプレゼンテーション資料を作成し、アプリを実証するため、午後にはスタジアム内でフィールドワークを行いました。

スタジアム内

スタジアム内をフィールドワーク

フィールドに降りた参加者

フィールドに降りた参加者たち

集合写真

参加者とスタッフ一同

6チームがそれぞれアプリを作成

フィールドワークの後は、いよいよ成果発表です。次の6タイトルが発表されました。

Share Senses(チーム名:ワーッ!!)

画面例

「視線ビュー」機能

スマートフォンのGPSやビーコン、速度センサーなどの位置情報を使って歓声や盛り上がりをキャッチし、ヒートマップ表示したり、写真やムービーでシェアできるソリューションで、ユーザーの視点からスタジアムを写した写真を共有できる「視線ビュー」機能を搭載します。「スポーツに関心はあるが、現地では観戦しない」という人に、スタジアムに来てもらうことを目指しています。今後の展開として、ウェアラブルデバイスの活用や視線ビューのマーケティング活用なども検討しています。

どこ混むシステム(チーム名:パラレルズ)

画面例

混雑している場所が分かる

来場客が持つスマートフォンアプリが収集したデータをもとに、スタジアム内の混雑状況をリアルタイムに可視化する「どこ混むシステム」。スタジアム管理者に対して、警備員配置マップや混雑状況マップ、避難完了人数データなどを配信すると共に、警備員のスマートフォンに避難誘導指示を配信してスムーズな避難誘導を実現します。来場客向けには、スタジアム内の売店で使えるクーポンやトイレの待ち時間情報などを提供して、アプリの利用を促進します。

ランマス(チーム名:PPAP)

画面例

ランニング時のラップタイムなどを記録

新横浜公園のランニングコースのナビゲーションができるアプリです。公園内のネットワークデータを利用し、コースの難易度も選択可能です。また、公園内に設置されたビーコンで、ランニング時のラップタイムや最終タイムも取得でき、これを陸上選手の記録と比較するサービスの導入も検討しています。走行記録はランキング形式でウェブサイトやデジタルサイネージに公開します。将来的には、新横浜公園で実施可能なスポーツそれぞれのサポートツールをつくることを目標としています。

シチュアシ(チーム名:バリスタ)

画面例

点が入ると「Shake!」と表示

視覚障害者や聴覚障害者に向けたバリアフリーアプリです。駅からスタジアムまでのナビゲーションや、トイレなどの施設を目的地として選ぶと、現在地の位置情報をもとに案内する機能があります。視覚障害者向けに、音声による操作やナビゲーション機能も搭載します。また、試合中に応援しているチームに点が入ると「Shake!」と表示され、それに従ってスマートフォンを振ると、その熱狂を集計し、数値化してヒートマップ表示します。さらに、スタジアムからの帰宅時の混雑度もヒートマップで表示します。

AELU ROAD(チーム名:炭水化物)

仕組み説明図

「AELU ROAD」の仕組み

駅からスタジアムまでの道中に、仲間とスムーズに合流し、ストレスなくスタジアムへ行くためのアプリです。アプリを起動すると、GPSによって移動データが記録・解析されます。スタジアムへの希望到着時刻を設定して、入口となるゲートを入力すると、最寄り駅から合流ポイントを経てスタジアムまで行くルートが表示されます。グループメンバーのルートはそれぞれ異なり、無理なく自然に合流できるように、音楽と音声で方向などが案内されます。合流ポイントはグループごとに異なるため、ポイントが分散されて混雑・滞留を回避できます。

Easy Stadium(チーム名:ハッカソンじゃけぇ)

画面例

ボールゲームを搭載

訪日外国人向けのスタジアム観戦支援サービスで、空港からスタジアムの席までをスムーズに案内します。試合会場を探して、スタジアム周辺の情報を確認し、スタジアム内の売店やトイレ情報などを確認できるほか、友人と待ち合わせる機能も搭載します。空港や電車、バス、スタジアム運営会社、Jリーグ運営会社などさまざまな組織がもつ情報やデータをアプリに一元化して提供します。待ち合わせの際、待ち時間に楽しめるボールゲームも提供します。

今後の実証実験に成果を役立てたい

プレゼン終了後は、各チームのメンバーが他チームのテーブルを巡りながら成果を共有し合う「ワールドカフェ」も実施しました。
最後に審査員による表彰が行われました。NTTデータ賞は「Easy Stadium(チーム名:ハッカソンじゃけぇ)」、横浜市環境創造局賞は「AELU ROAD(チーム名:炭水化物)」、日産スタジアム名誉場長賞は「ランマス(チーム名:PPAP)」、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)委員長賞は「Share Senses(チーム名:ワーッ!!)」、メンバーの投票によって決められる高精度測位社会プロジェクト賞は「シチュアシ(チーム名:バリスタ)」が受賞しました。また、総合賞となる国土情報課長賞は「どこ混むシステム(チーム名:パラレルズ)」が受賞しました。

神武氏の説明

神武准教授

締めくくりにモデレーターを務めた慶應SDMの神武直彦准教授が講評として、「今回のハッカソンで生まれたアイデアをいきなりすべて実現するのは難しいですが、これをきっかけに皆さんの次の何かに繋がればいいと考えています。このイベントは国土交通省の高精度測位社会プロジェクトの一環なので、今後行われる実証実験などの取り組みに、今回の成果を役立てられればいいと思います」と語りました。
今回の成果をもとに、2020年のオリンピック・パラリンピック開催に向け、どのようなスポーツ関連の新サービスにつながっていくか注目されます。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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