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コアがCLAS対応のGNSS受信機「Cohac∞ Ten」を発売

2022年03月07日

株式会社コアは、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応したマルチGNSS受信機「Cohac∞ Ten(コハク インフィニティ テン)」を2月末に発売しました。同社GNSSソリューションビジネスセンターのセンター長を務める山本享弘氏(執行役員)と、営業統括部の牧弘尚部長に製品の特長や開発の経緯を聞きました。

山本氏

山本氏

牧氏

牧氏

従来に比べて大幅な小型軽量化を実現

Cohac∞ Tenは、名刺に近いコンパクトサイズ(横100mm×縦67mm×厚さ24mm)と100g以下の軽量を実現したマルチGNSS受信機です。既発売のCLAS対応受信機「Cohac∞ Chronosphere-L6 II」と比べ、筐体サイズは体積で約50%減、重量は約66%減を実現しました。小型軽量(底面直径44.2mm×高さ62.4mm、重量42g)の小型アンテナと共に、大型の重機や農機だけでなく、重量の制約が厳しい小型ドローンなどにも容易に搭載でき、屋外などで携帯して利用することも可能となりました。衛星測位システムは、みちびき以外にGPSやGLONASS、Galileo、BeiDouなどに対応し、最大100Hzの高頻度で測位を行えます。

Cohac∞ Ten

Cohac∞ Ten本体(左)と付属アンテナ(右)

コネクタなど使い勝手にこだわり利便性を重視

Cohac∞ Tenには、入出力のインターフェイスが豊富に備えられています。2つのmicro USBポートで、測位結果の出力や無線通信モジュールとの接続などを行えるほか、UART及びRS232Cに対応したシリアルポート、電源供給用のDC INポート、アンテナコネクタなどを備えています。USBポート2つとDC IN、シリアルポートの計4カ所で電源供給できます。

本体側面の入出力コネクタ

本体側面の入出力コネクタ

受信機の設定や状態確認、そして受信機で測位した結果の確認は、スマートフォンやPCのWebブラウザでも行えます。スマートフォンやPCと受信機とは、1)USBケーブルによる有線接続、2)Wi-FiやBluetoothによる接続、のどちらでも対応可能です。microSDカードスロットも搭載しているため、機器単独でロガーとしても利用できます。

スマートフォンの設定画面

スマートフォンの設定画面

「外部にパソコンがないとデータが取れないのでは使い勝手が悪く、microSDカードスロットを設け、メモリーカードに直接ログを記録できる点にこだわりました。これで、電源を入れたらすぐに測位と位置情報の記録を開始できます」(牧氏)

USBポートから電源供給できるため、バッテリーを使ったモバイルでの使用も可能です。測位間隔や無線通信の使用などの条件に拠りますが、バッテリーは連続で概ね半日程度は使い続けられるとのことです。

Septentrioとモジュールを共同開発

Cohac∞ Tenには、ベルギーのセプテントリオ社(Septentrio N.V.)が発売した最新の小型GNSS受信モジュール「mosaic-CLAS」が内蔵されています。mosaic-CLASは1つのモジュールの中にCLAS補強機能までを含めた製品で、これを採用することで基板サイズを名刺サイズ以下(約50mm×60mm)にコンパクト化しました。基板だけの重量はさらに軽量(約30g)で、筐体を省いた基板単体での提供も可能です。

mosaic-CLAS

mosaic-CLAS

Cohac∞ Tenに搭載されているボード

Cohac∞ Tenに搭載されているボード

コアは2019年からSeptentrioと協業してCLAS対応の受信モジュールやOEMボードの共同開発を行っており、mosaic-CLASの開発にも携わっています。コアの山本氏によると、SeptentrioはGalileoを始めとした高精度測位用マルチGNSS受信機の開発・販売を行っており、CLASにも対応したいという意向と合致して、協業に至ったそうです。

「共同開発は、直接技術者同士が内部まで踏み込んで議論してきたことで、より望ましい設計を実現することができました。また我々が国内で行った評価結果をもとに、細かくチューニングしてきたことで、測位精度も向上させることができました。」(山本氏)

mosaic-CLASの開発では、ハードウェアはSeptentrioのmosaicシリーズをベースに、受信したL6信号をデコードした上で、CLASに対応したSSR(状態空間表現、個別誤差)データをOSR(観測空間表現、自己位置における総合誤差)データに変換するソフトウェアライブラリをコアが担当しました。
価格を抑えるためにはグローバルで共通のハードウェアを使用することが望ましく、メモリ容量などのリソースに制約がある中でソフトウェアの実装を変える必要があるなど、完成までにさまざまな課題がありました。また、CLASは内部的には仮想基準点を作ってRTKを実施しますが、測位精度に違いがあるためにRTKの測位エンジンをそのまま使用するとFIXが外れやすい点や、物理的な基準点と異なり、仮想基準点は切り替わりのタイミングを制御できますが、切り替わり回数と基線長のトレードオフの中でどう設定するかなど、CLAS独自の課題にも苦労しました。

「精度を追求しつつ、汎用性やユーザビリティとどこまで両立させるかを見極めるのは大変でしたが、リソースの少ない中で可能なかぎり高い精度を実現できました」(山本氏)

受信機からGNSS活用したソリューションへ拡張

コアは先端技術を活かしたITソリューションの提供会社であり、GNSSソリューションの中で受信機の開発はその中の一部と位置づけています。高精度なGNSS受信機で得られた位置・時刻情報をどう活用するかというフェーズに入ってきたと考えており、ドローンを使ったソリューションや、クラウドと連携した位置管理ソリューションにも力を入れています。そして、その顧客から更なる受信機の小型軽量化を求められたことが、今回のCohac∞ Tenの開発の背景となっています。

「同じCLASでも、すべての対応受信機で同じ精度になる訳ではありません。前述のチューニングにより、真値と比較した場合の精度やFIX率、電波が途切れた時の復帰時間などにおいて当社の製品は非常に優れていると自負しており、静止した状態での測位精度にはさほど違いがなくても、移動体で使用した場合や、マルチパスなどが発生しやすい場合など、条件が厳しくなった時に違いがお分かりいただけると思います」(山本氏)

みちびきのサービスでは、今後導入予定のL5S対応受信機や信号認証機能などにおいてオリジナリティを持ちつつ、共通プラットフォームの中でも動かせる汎用性・互換性の両立について期待しており、同社は今後もSeptentrioなどさまざまな企業と連携を図りながら、みちびき対応製品の開発に取り組んでいく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

※株式会社コアは3月18日、東京海洋大学の久保信明教授を招き、今回発売した「Cohac∞ Ten」を紹介するウェビナーを開催します。詳細は、下記ページでご確認ください。

参照サイト

※本文中の画像提供:株式会社コア

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