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総務省、異業種間の連携を深める「みちびき」フォーラムを開催

2017年10月27日

総務省関東総合通信局と関東情報通信協力会は10月19日、異業種連携「みちびき」フォーラムを都内で開催しました。このフォーラムは、みちびきの運用開始により、地域社会や国民生活にどのような効果をもたらすか、どのようなビジネスチャンスが生まれて経済の活性化が図られるかといった点について有識者を交えて議論し、異業種間の連携を深めることを目的としています。
当日は、最初に総務省関東総合通信局の関啓一郎氏が挨拶した後、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科の神武直彦准教授がイントロダクションとして、みちびきの概要や、みちびきを含むマルチGNSSの利活用の今後の可能性と課題、そして、フォーラム全体の構成について解説しました。

[イントロダクション]

── 慶應義塾大学大学院SDM研究科 神武直彦准教授
慶應義塾大学の神武准教授

慶應義塾大学の神武准教授

神武准教授は、米国以外にもロシアや中国、EU(欧州連合)、インドなどさまざまな国が測位衛星を打ち上げており、さまざまな測位衛星の信号を組み合わせて測位を行うマルチGNSSによって測位性能が向上すると説明しました。さらに、測位衛星の信号だけを使ってできるビジネスには限りがあり、いろいろなものを組み合わせることで新しい価値を生み出せると述べました。また、宇宙のインフラには測位衛星の他に地球観測衛星や通信・放送衛星があり、これらを組み合わせたり地上のセンサーとデータを組み合わせたりすることで課題を解決するのが、これからのビジネスチャンスになると語りました。そして、みちびきによって向上するのは測位精度だけでなく、位置情報が従来よりも時間や場所に左右されることなく、いつでも安定して正確に取得できる点において重要なインフラであると指摘しました。

[基調講演] 準天頂衛星システム みちびきが目指すこと

── 内閣府宇宙開発戦略推進事務局準天頂衛星システム戦略室 小林伸司参事官補佐
内閣府の小林参事官補佐

内閣府の小林参事官補佐

基調講演として登壇した内閣府の小林伸司参事官補佐は、スマートフォンやカーナビが普及した現在、衛星測位は私たちの生活に不可欠になっており、今後はみちびき対応製品が普及することで、より高精度な測位が可能になると述べました。また、みちびきの現状についても、2号機は9月15日から試験サービスをすでに開始しており、3号機と4号機は現在、各種試験やチューニングの作業中で、3号機は12月、4号機は1月に試験サービスを開始予定であると説明しました。さらに、みちびきは自動運転や農業、土木・建設、スポーツ・健康サービス、観光、ドローン配送、防災などさまざまな分野で活用が期待されており、みちびきの利活用を促進する高精度衛星測位サービス利用促進協議会(QBIC)や、スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)による新産業・新サービス送出支援の取り組みを紹介しました。

[事例1] レジリエントシティ湘南(G空間シティ構築事業)

── 湘南広域都市行政協議会(藤沢市財務部税制課 主幹)山本慎一郎氏
湘南広域都市行政協議会の山本氏

湘南広域都市行政協議会の山本氏

続いて事例発表として、湘南広域都市行政協議会の山本慎一郎氏が、2014~15年にかけて湘南エリア(茅ヶ崎市、寒川町、藤沢市)で実施した「G空間シティ構築事業」を紹介しました。この事業は「世界最先端のG空間防災モデルの確立」をテーマに、発災前(平常時)、発災時、避難後のプロセスごとに課題を整理・解決し、広域のレジリエントな(防災力のある)地域社会の実現を目指しました。
1)発災前の実証としては、避難訓練アプリを作成して住民や観光客に提供し、自治体は管理用のウェブアプリケーションを使用しました。また、人口データや津波避難ビルの高さ情報をもとにシミュレーションを行ってアプリに情報を提供し、実際に避難訓練も行いました。
2)発災時の実証では、みちびきのメッセージ機能を使って、実際にM2M(Machine to Machine)でメッセージを受信した機械が自動的に自機の位置情報を判定し、それに合わせたメッセージを発信する実験を行いました。
3)避難後の実証では、被災者が避難した先で困っている内容を行政に伝える仕組みとして、ウェブ上で行政から質問を出し、それに対して答えるというシステムを構築しました。災害時には自分の位置情報を加えた情報を行政側に送ることで、どれくらいの人が避難しているかを行政が把握できます。

[事例2] 測位情報の活用による新たなスポーツ体験

── 株式会社アシックス スポーツ工学研究所IoT担当マネージャー 坂本賢志氏
アシックスの坂本氏

アシックスの坂本氏

株式会社アシックスの坂本賢志氏は、みちびきのスポーツへの活用法として、ウォッチ型デバイスを使ったマラソンの実証実験や、プレイヤートラッキングの実証実験を紹介しました。マラソンの実証実験では、トップランナーの走行軌跡をみちびきで測位し、後続ランナーが特定の場所を通り過ぎると、腕時計デバイスでコース攻略の情報を受け取れる「リアルタイムコーチング実証実験」を実施しました。また、プレイヤートラッキングでは、テニスコート上でプレイヤーがみちびき対応受信機を使って測位したログを、みちびきを使用した場合と使用しない場合で比較しました。さらに、測定したログをもとにプレイスタイルを分析して、各人に合ったシューズを提案するといった活用法も紹介しました。このほか、みちびきの今後の技術展開として、トレイルランニングやハイキング、クロスカントリースキー、バイアスロン、マウンテンバイクなど山岳で行うスポーツに活用でき、運動継続のモチベーション向上や、地域ごとの運動量の比較などにも利用できると語りました。

[パネルディスカッション]

後半は、慶應義塾大学大学院SDM研究科の神武直彦准教授がコーディネーターとなり、基調講演および事例発表を行った登壇者3氏に加え、識者として明星大学大学院人文学研究科社会学専攻の天野徹主任教授、特定非営利活動法人GIS総合研究所いばらき理事・事務局長の三上靖彦氏の2名を加えて、「みちびきは魅力ある地域社会や活力ある経済活動へどう導くのか」をテーマにパネルディスカッションを行いました。

(左から)パネリストの山本氏、坂本氏、天野氏、三上氏

(左から)パネリストの山本氏、坂本氏、天野氏、三上氏

みちびきに価値を見出した点、改善が望まれる点、ユーザビリティとプライバシーのバランス、などさまざまなテーマで意見を交わしたほか、参加者からも活発に意見が寄せられました。そして最後に、パネリストが一人ずつみちびきへの期待を述べ、この日のフォーラムは終了しました。

「今後は街づくりのさまざまな場面でスマートフォンが使われていくと思いますので、精度の高い測位を期待しています」(三上氏)
「みちびきのサービス開始により、被災者や帰宅困難者の誘導などで、もっと人が効率的に動けるようになるので、そうした点に期待しています」(天野氏)
「デバイスの価格が安くなればさらに普及すると思いますので、複数の企業が連携してこれを実現すれば、みちびきをより価値あるものにできると思います」(坂本氏)
「位置情報は公共施設のマネジメント、特に道路の維持管理に有効だと思います」(山本氏)
「みちびき対応の受信機が安価になり、さまざまなデバイスに組み込まれ、みちびきを使うのが普通な世の中を目指して、推進に取り組んでいきたいと思います」(小林氏)
「みちびきの可能性の一つに、アジアや太平洋へのサービス展開による世界規模での貢献も可能になりつつあるので、来場者の皆さまにもぜひいろいろと使い方を考えていただければと思います」(神武氏)

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

参照サイト

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