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セルスター工業、災危通報に対応した初のドライブレコーダーを発売

2020年01月06日

近年、前方を走る車両との距離を極端に詰めたり、無理な追い越しをしようとする「あおり運転」が社会問題化し、その対策が急務となる中、車の前方だけでなく後方の映像も撮影できる、2カメラタイプのドライブレコーダーに人気が集まっています。
神奈川・大和市に本社を置き、自動車関連のエレクトロニクス製品を製造・販売するセルスター工業株式会社は2019年11月、前方と後方の2カメラでフルHDの高画質な動画を撮影できるドライブレコーダー「CS-91FH」を発売しました。同社がフラッグシップモデルと位置付けるこの製品は、他社に先がけてみちびきの災危通報(災害・危機管理通報サービス)の機能に対応したことでも話題となりました。国内外からさまざまな企業が参入し、競争が激化しているドライブレコーダー市場において、同社はこの製品でどのように差別化を図ろうとしているのか。製品の開発を担当した技術部の渋谷勇治氏(ソフトウェア課 次長)と帆苅努氏(製品規格課 次長)に話を聞きました。

帆苅氏と渋谷氏

帆苅氏(左)と渋谷氏(右)

走行中に災危通報を小型ディスプレイに表示

CS-91FH

CS-91FHの本体カメラ前面(右)と別体カメラ(左)

CS-91FHは、ソニー製のCMOSセンサー「STARVISTM IMX327」を撮像素子に採用し、急激に明るさが変化しても白とびや黒つぶれを低減するHDR(ハイダイナミックレンジ)に対応しています。また、夜間やトンネル内などの暗い環境を走行する際にノイズの少ない画像を録画できる機能(ナイトビジョンVer.3)も搭載しました。さらに、後方車が接近すると警告音やイベント録画によってあおり運転を警告する「後方キャッチ機能」も搭載しています。

このようにドライブレコーダーとして高い基本性能を備えた上で、さらにみちびきの災危通報とSLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応しました。この点については、どういう意図があるのでしょうか。
「ドライブレコーダーは製品自体が熟成しており、他社との差別化を図るための付加価値として顧客に何か新機能を訴求できないかと考えて、みちびきの災危通報への対応を思いつきました。もともと事故やあおり運転などのトラブルからドライバーの安全を守るための製品であり、新たに災危通報も受け取れるようにすることで身を守る情報源の一つとして使っていただけると考えたのです」(帆苅氏)

帆苅氏

帆苅氏

SLAS対応で安定した測位が可能に

CS-91FH

CS-91FHの本体カメラ背面(右)と別体カメラ(左)

災危通報は、政府機関が発令する地震や洪水、土砂崩れ、津波、浸水、台風、噴火などのさまざまな防災情報や気象情報などを、みちびきのL1S信号によって発信するサービスです。これにより、携帯電話が圏外のエリアにいたり、災害時で通信インフラが不通となっていたりしても衛星から情報を受け取れます。

CS-91FHでは、走行中に災危通報が発令された場合、警告音と共にその内容を小型ディスプレイにいち早く表示できます。また、みちびきのSLASも災危通報と同じL1S信号を利用しており、SLASと災危通報の2つのサービスへの対応が実現しました。
「ドライブレコーダーで録画した映像はWindows用のビューアーソフトで再生でき、走行軌跡や撮影地点を地図で見ながら映像を再生できます。SLASに非対応の製品と比較するとより安定した軌跡を残せるようになりました」(渋谷氏)

CS-91FHには独自開発のマルチGNSS受信モジュールが搭載されています。そのため、衛星測位システムはGPSとみちびきのほか、ロシアのGLONASSや欧州のGalileoにも対応しています。
「今回採用した受信モジュールは、従来品のファームウェアを改造し、マルチGNSS受信能力を維持しながらL1S受信に対応させられたので、SLASや災危通報を利用できました。また、一般的にGNSSアンテナは横に寝かせた状態の方が衛星を多く捕捉できますが、ドライブレコーダーは筐体デザインの関係でどうしてもアンテナを縦に置く必要があり、対応する測位衛星が少ないと測位が不安定になりがちでした。今回の受信モジュールは計81基の測位衛星に対応していて、安定した測位が可能です」(帆苅氏)

「情報をどう削って画面に収めるか」に苦労

画面イメージ

災危通報の表示イメージ。画面左上にみちびきロゴマークを配置している

災危通報に対応したドライブレコーダーは、業界初となります。開発に当たってどんな苦労がありましたか。
「災危通報は情報量が多く、小さなディスプレイで見やすくするために情報をどう削るかという点で苦労しました。テキストをスクロールしなくていいよう、表示のすべてが一画面に収まるように工夫しました。都道府県単位で届いた情報を“○○地方”と大まかにまとめたり、震源位置を示す時に緯度・経度などの細かい情報は出さないようにするなど、さまざまな点で表示を簡略化しました」(渋谷氏)

渋谷氏

渋谷氏

今後、位置情報を始めとするみちびきのサービスをどのように製品づくりに活かしていきますか。
「災危通報に対応した製品は初めてなので、市場にどう受け入れられるか分かりませんが、顧客の支持が得られるようなら、災危通報の表示機能をベーシックモデルに展開することも検討します。また、SLASも高速道路と一般道を区別したり、逆走を検知したりといった用途に利用できる可能性があり、さらにドライバーの安全を守る用途に活用できればと考えています」(渋谷氏)

社会的関心の高いドライブレコーダーに採用されたみちびきのSLASと災危通報の機能が、これからどのように世の中に普及していくのか。業界全体の動向も含めて、引き続き注視していく必要がありそうです。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※製品画像提供:セルスター工業株式会社

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