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ユーブロックスが高精度GNSSレシーバーのセミナーを開催

2016年12月25日

ユーブロックスジャパン株式会社は2016年12月16日、東京海洋大学越中島キャンパス(東京・江東区)で「高精度GNSSレシーバーセミナー実践編 ─NEO-M8P評価レポートと事例─」と題したセミナーを開催しました。ユーブロックスジャパンは、測位チップなどを供給するスイス「u-blox AG」の日本法人であり、当日は第一線の専門家や研究者らが集まって高精度測位実験の事例などを報告しました。
冒頭、主催者であるユーブロックスジャパン株式会社の仲 哲周氏(カントリーマネージャー)の挨拶に続き、まず東京大学大学院農学生命科学研究科の海津裕氏(准教授)が「農業分野におけるRTK-GNSSの展開と課題」と題した講演を行いました。以下、この日の講演内容を順番に紹介します。

今後は低コストでのGNSS利用がターゲット

── 海津 裕氏(東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授)

海津 裕氏(東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授)

海津氏

東京大学大学院の海津氏は、農業における精密測位の必要性や現在使用されているツールなどを紹介し、GNSSによる精密測位利用の歴史と現状について報告した上で、「今後は低コストでのGNSS利用がターゲットとなってくる」との見方を示しました。
そして、農地が大規模化・機械化された後でも畦(あぜ)や畝(うね)の草刈りは農家の大きな負担として残るため、その部分での負担軽減策が必要との観点から、三陽機器株式会社と東京大学が共同で開発を進めている「草刈りロボット」をデモ映像と共に紹介しました。指定された4点に囲まれたエリアを往復自走しながら草刈りを行い、40度の傾斜地まで対応可能なロボットです。
また、ワンボードマイコン「ラズベリー・パイ3」や、高須知二氏(東京海洋大学 客員研究員)作成による無償のオープンソースソフトウェア「RTKLIB」、ユーブロックス社のNEO-M8Tチップなどを使って自作した受信システム2セットによる「電子コンパス」の評価試験の結果も報告しました。

“測位衛星100機時代” が間もなく到来する

── 岡本 修氏(茨城工業高等専門学校電子制御工学科 准教授)

岡本 修氏(茨城工業高等専門学校電子制御工学科 准教授)

岡本氏

続いて茨城工業高等専門学校電子制御工学科の岡本 修氏(准教授)が「つくばチャレンジの場を使ったRTK測位の実証実験 ─RTKモジュールNEO-M8Pの利用事例の紹介─」と題した報告を行いました。岡本氏は、みちびきウェブサイトで提供されているソフトウェア「GNSS View」を使ってGNSSの種類と位置を示しながら、“測位衛星100機時代” が間もなく到来するとの展望を示しました。
また、RTK測位(Realtime Kinematic:固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する方法)の基礎や、自動車による評価実験を紹介した後、茨城県つくば市の中心部で7~11月に行われた自律移動ロボットのコンテスト「つくばチャレンジ」参加者に、1周波RTKによる高精度測位システムを提供し、実際にコースで行った測位の実証実験の結果を紹介しました。
清水建設株式会社や株式会社菱友システムズと共に開発した「地下埋設物可視化システム」についても紹介。地中に埋まっている配管などを事前に知り、支障を与えないよう工事を進めるシステムに、土木工事業界から非常に高い関心が寄せられていると報告しました。

琵琶湖周辺で高精度測位実験を実施

── 木村法由氏(コンピュータ・システム株式会社 代表取締役)

木村法由氏(コンピュータ・システム株式会社 代表取締役)

木村氏

京都市を本拠に測量機器レンタルやシステム販売を行うコンピュータ・システム株式会社の木村法由氏(代表取締役)は、「SOI通信BOX」とNEO-M8Pモジュールを活用した高精度測位実験について報告を行いました。
同社が開発した「SOI通信BOX」は、インターネット回線を介してケーブル直結と等価なシリアル通信を提供する、Wi-Fi/3G/LTE回線に対応した通信モジュールです。RTK基地局からの補正情報を、この「SOI通信BOX」を使って移動局に伝送して、琵琶湖周辺の路上や湖上で行った高精度測位実験の結果を、測量用の2周波受信機とNEO-M8Pモジュールを使った1周波受信機との比較データと共に示しました。

受信システム6セットでRTK測位のFIX率向上

── 鈴木太郎氏(早稲田大学高等研究所 助教)

鈴木太郎氏(早稲田大学高等研究所 助教)

鈴木氏

早稲田大学高等研究所の鈴木太郎氏(助教)は、「UAVでの1周波RTK-GNSSの利用とその応用」と題して講演しました。鈴木氏は、2周波のGNSS受信機と高性能ジャイロスコープやIMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)を使ってシステムを構築すれば、現状では数千万円のコストがかかるところを、それに匹敵する性能を廉価な1周波GNSS受信機のみのシステムで構築しようという研究開発を行っています。その一環として行った、6セットのアンテナと受信機を使ったUAV(Unmanned Aerial Vehicle、自律型無人飛行機)の測位性能評価実験や、レーザースキャナーによる3次元地図作成の実験などの結果を紹介しました。
6セットの受信システムを使うことで、RTK測位のFIX率(センチメータ精度の測位解が得られる率)が大幅に向上し、姿勢推定についても良好な結果が得られるほか、マルチパス検出・除去にも期待を持てるデータが取れたと報告しました。

廉価で高性能のソリューション提供が重要な使命

── ピーター・へアーハースト氏(ユーブロックス 市場開拓マネージャー)

ピーター・へアーハースト氏(ユーブロックス 市場開拓マネージャー)

へアーハースト氏

最後に、スイスのユーブロックス社で市場開拓マネージャー(Market Dvelopment Manager)を務めるピーター・へアーハースト(Peter Fairhurst)氏が、同社の製品戦略とその背景の解説を行いました。講演の中で同氏は、ドローン、農機、建機、自動車、船舶など毎年何億台もの移動体(vehicle)が市場に出回っているが、そのすべてにより高い自律性と高度なナビゲーション機能が求められており、そこに廉価で高性能のソリューションを提供するのがユーブロックスの重要な使命であると強調しました。
特に日本市場に注目している理由として、みちびきのLEXサービスで試みられた、大陸に匹敵する広いエリアをカバーするセンチメータ級の補正信号ブロードキャストにいち早く取り組んでいる点や、2020年に向けてUAV物流輸送や自動運転タクシー、自動農機などさまざまな用途開発が進められている点などを挙げました。

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