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国土地理院、電子国土基本図の迅速更新にCLAS活用のメド

2021年07月05日

国土地理院による「地理院地図」を始めとするデジタル地図は、変化する国土の様相を反映するため日々アップデートが続けられています。その営みに、みちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)を活用するシステムが試みられ、成果を上げました。今回は国土地理院が整備する「電子国土基本図」の概要と、その更新にCLASが活用され効率化が期待される事例について紹介します。

日本の国土の“マスターデータ”を「迅速更新」し提供

NEXCO東日本のウェブサイト

常磐道4車線化事業の完成を伝えるNEXCO東日本のウェブサイト

6月13日、常磐自動車道いわき中央IC~広野IC間の4車線化事業(27km)が完成し、4車線道路として運用が開始されました。国土地理院がWebで提供する「地理院地図」でも同日より、この区間の属性が「高速道路-5.5m以上13m未満」から「高速道路-19.5m以上」と表示されるようになりました。

地理院地図

「地理院地図」で示した、6月13日供用開始の常磐道のいわき四倉IC~広野IC付近。NEXCO東日本では渋滞緩和・輸送力増強に加え災害時の東北道代替ルートであることも4車線化整備の理由に挙げている

あらゆる地図のグランドマスター的存在

国土地理院が整備する「電子国土基本図」は、日本で使われるあらゆる地図のグランドマスターデータに相当する存在です。その作成と維持管理を担当する同院の基本図情報部 管理課長の笹嶋英季氏はこう説明します。
「電子国土基本図は3レイヤーの情報で構成されます。航空写真から作成されたオルソ画像、地名情報、そして、いわば白地図にあたる『電子国土基本図(地図情報)』です。ここには、位置の基準となる道路・建物や、土地の状況を表す植生・崖・岩・構造物などの情報が含まれており、民間の地図やカーナビやスマホ用の地図なども、これに依拠しアップデートを行っています」(笹嶋氏)

笹嶋氏

笹嶋氏

そして地図情報が電子的に提供されるようになり、地図の「新鮮さ」がより一層、重要になっており、そのための努力や仕組みづくりが進められています。
「社会生活や防災面の影響が大きい高速道路・一般国道の、新設や車線数増加など大規模な変化については、工事計画図面などの情報提供を受け供用と同時に更新・提供を行う体制を整えています。その他の道路でも、同様の大規模な変化がある場合には、都道府県道では3カ月以内、それ以外の道路では6カ月以内を目標として、更新・提供に努めていますが、そのもとになる工事図面などの資料が、すでに供用開始されている道路でも収集できないような地域もあるのです」(笹嶋氏)

地理院地図で示された月次の更新情報

月次更新情報の一部。数値地図(国土基本情報)の更新は2021年5月だけで129件に上る(提供:国土地理院)

「過去に向かう作業」を大幅に効率化

同日更新に向けた作業はいわば未来に向かう仕事ですが、すでに供用されている道路の更新は過去に向かう仕事といえるでしょう。予算や人員などリソースが限られる中で「過去に向かう、地味な仕事」を効率化するツールとして、CLASの活用が検討されました。

「みちびきのCLAS信号に対応したGNSS受信機とカメラを搭載した車両で、新設道路を走行しデータを取得する実験を山梨県の富士河口湖町で行いました。同じ区間を往復走行した解析データから得られた軌跡は、電子国土基本図(地図情報)に使用する道路中心線として、十分な精度が確保されていることが確認できました。道路の幅や車線数についても、現地での計測と映像から検証が可能です」(笹嶋氏)

計測車のドライブレコーダ画像

富士河口湖町で実施した計測・検証作業の様子(計測車のドライブレコーダ画像より、提供:国土地理院)

更新前の地図
更新後の地図

上記計測対象地域の地理院地図。上が更新前、下が更新後(提供:国土地理院)

CLAS対応のいわば「高性能ドラレコ」を使うことで、軌跡データから新設道路の位置情報を十分な精度で取得する目途が立ちました。従来なら測量チームを派遣しての現場作業が必須ではなくなった訳です。今後のシステムの活用が広がれば、現場の負担が軽減され、地図更新の一層の迅速化が期待される成果です。

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

参照サイト

※画像・図版提供:国土交通省 国土地理院、NEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)