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レフィクシアが傾斜補正機能付きCLAS対応受信機を発売

2023年04月19日

東京・六本木を拠点にIoT機器や太陽光発電所の設計・解析などの事業を行うレフィクシア株式会社が、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応したGNSS受信機「LRTK Pro2」を2023年5月に発売します。このLRTK Pro2は、アンテナ及びバッテリー一体型の受信機で、ポールなどの先端に取り付けて使用する際、ポールが傾いた状態でも正しく測位できる「傾斜補正機能」を搭載しているのが特徴です。

バッテリー・アンテナ一体型「LTRK Pro2」

LRTK Pro2

LRTK Pro2

受信機発売に先立って、開発元のレフィクシアで代表取締役を務める高安基大氏に「LTRK Pro2」を開発した経緯と製品の詳細を聞きました。高安氏は、東京工業大学在学中にMEMS(半導体製造技術などを応用して作られる微小電気機械システム)加速度センサーの研究に取り組み、2018年に博士課程を修了後、2019年にレフィクシアを創業しました。現在は太陽光発電所の設計・解析と、GNSS関連製品開発の2つの事業を軸に展開しています。

高安氏

レフィクシア代表取締役の高安氏

同社が初めてGNSS関連の製品を発売したのは2021年の夏で、バッテリーとアンテナを内蔵したオールインワンのRTK測位(リアルタイムキネマティック)対応受信機「LRTK Pro」でした。受信モジュールにはu-blox製の「ZED-F9P」を採用しました。この受信機を開発したきっかけは、土木用建機を扱う企業から、既存のアンテナ・バッテリー一体型受信機が高額でサイズが大きいので、よりリーズナブルで使い勝手がよい製品がほしいと求められたためでした。

来月発売される「LTRK Pro2」は、そのLRTK Proの上位機種となる新型のCLAS対応受信機です。開発のきっかけはやはり土木・建設企業からの声で、現場がある山の中はモバイルネットワークが通じないところが多く、そこで使える受信機がほしいという要望が寄せられたのでした。高安氏は、モバイルネットワーク圏外でも高精度測位が可能になる方法がないかを調べて、CLASを初めて知ったそうです。
「太陽光発電所の設計・解析でも、ドローン測量のための対空標識を設置する場所がネットワーク圏外だと、そこで作業が滞ることが課題となっていました。圏外でも高精度測位を使いたいという要望は、私たち自身のニーズでもありました」(高安氏)

ポールを傾けた状態で先端の座標を取得

LRTK Pro2は、u-bloxの受信モジュールZED-F9Pに、みちびきのL6補強信号を受信可能なモジュールNEO-D9Cを組み合わせることでCLASによる測位を可能としています。アンテナとバッテリー一体型で、ポールの先端に取り付けて使用することを想定しており、価格は税別548,000円。すでに事前の予約を多数、受け付けているそうです。

傾斜補正機能

傾斜補正機能を使えば座標を割り出せる

製品の特徴は、測位時にポールを傾けても、ポールの長さと傾斜角度をもとに計算すれば、ポール先端の座標を簡単に割り出せる「傾斜補正機能」です。測位したい地点の真上に障害物があっても、斜め上からポールを差し込めば、狙った位置の座標を取得できます。事前にポールの長さを入力し、内蔵されたMEMS加速度センサーのキャリブレーション(校正)を行っており、高安氏が大学時代に取り組んでいたMEMS加速度センサーの研究を応用した機能です。

土木・建設コンサルタントの顧客から、受信機を赤白ポールに装着して使う際、垂直でしか測れないのは困ると言われたのがきっかけで、測位する度に水準器を確認するのが面倒なこともあり、傾斜補正機能を自社で開発して搭載したそうです。
また、この受信機では、自分たちが現場作業で急な雨降りにあって困った経験から防水・防塵にもこだわっており、保護等級IP67相当の性能を実現しています。

自社開発のアンテナを採用

LRTK Pro2

LRTK Pro2

LRTK Proは既製品のアンテナを使っていましたが、LRTK Pro2ではみちびきのL6信号を受信できる4周波対応アンテナを自社で開発しました。その結果、LRTK Pro2(直径101mm×厚さ55mm)は、LRTK Pro(直径100mm×厚さ47mm)と直径はほぼ同じですがアンテナ分の厚みが増しました。高安氏によれば、「アンテナ作りは非常に難しく、電磁界解析と材料の選定などさまざまな要素を吟味しながら開発しました」とのことです。

また、バッテリーは容量3000mAhのリチウムポリマー電池(Bluetooth未接続時で最大16時間、接続時は最大13時間使用可)を搭載し、測位した座標は32GBメモリで記録できます。特定省電力無線(920MHz)の通信機能も搭載しており、LRTK Pro2を基準局として、複数のLRTK Pro2/Pro(移動局)に向けて補正情報を無線で送信し、移動局の高精度測位を可能にする「L-link(エルリンク)」という独自機能も搭載しています。

LRTKアプリ

LRTKアプリの画面イメージ

LRTKアプリ

Bluetooth通信機能により、iOS/Androidに対応した無料の「LRTKアプリ」をインストールしたスマートフォンやタブレットと連携して位置座標を記録できます。同アプリを経由して取得した位置座標をクラウドサービス「LRTKクラウド」と同期させ、PCからウェブブラウザを使って取得した位置を地図上で確認できます。「傾斜補正機能」のポールの長さを設定したり、キャリブレーション(測定精度の較正)もアプリを使って行います。

LRTKクラウド
LRTKクラウド

LRTKクラウドの画面イメージ

同社はアプリやクラウドサービスを自社で開発し、太陽光発電所の設計・解析においてGNSS関連製品を使用しているため、社員自らがハードウェアやソフトウェアの使い勝手の良し悪しを検証できるのも強みです。GNSS測量の知識がないスタッフにあえて事前に何も説明せずに使ってもらい、その意見を製品開発にフィードバックしたりもしています。

設計から製造まで社内で一貫できる強み

同社はGNSSアンテナを自社で開発できる技術の強みを活かして、独自開発の超薄型のアンテナと受信機を内蔵したヘルメット「LRTKヘルメット」も提供しています。

LRTKヘルメット

LRTKヘルメット

また、スマートフォン一体型のRTK受信機「LRTK Phone」も提供しており、将来はこの製品もアンテナを自社開発にしてコンパクト化を目指す予定です。

LRTK Phone

LRTK Phone

両製品は現在、RTK測位にしか対応していませんが、技術的にはCLAS対応を図ることも可能であり、今後ニーズがあればCLAS対応のLRTKヘルメットやLRTK Phoneの開発も視野に入れており、GNSSアンテナや受信機を内蔵したウェアなどの開発も検討しているとのことです。

同社は、六本木の自社オフィスに製造ラインを設置して、受信機の筐体などの設計・開発や製造・塗装も自社で行っており、設計から製造まですべてを社内で行えるため、製品の種類を増やしても在庫リスクなく生産することが可能です、
「社員の平均年齢が25歳と非常に若く、世の中にまだ存在しない新しい製品を開発したいと思いが強くあります。GNSS関連製品のニーズは、現在は建設・土木分野が多いですが、スポーツやエンタテイメント分野からも問い合わせいただいており、今後拡大していければと思います」(高安氏)

さらに今年2月からは、GNSS関連製品をより便利に使えるサブスクリプションのクラウドサービスを提供開始しており、サブスク提供により月々の支払はそのままで機能を拡充させていくというビジネスも展開しています。
「携帯電波が圏外となる海上でも、みちびきは利用可能であり、RTKよりも用途が広くビジネスとして大きな魅力があります。当社は『ものづくりを究めたい』という思いが根幹にあり、これからも高精度測位を活かしたハードとソフトの両方の開発を妥協なく続けていきます」(高安氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※画像提供:レフィクシア株式会社

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