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日本航海学会春季研究会でみちびきの将来計画や性能評価報告

2021年07月19日

公益社団法人日本航海学会傘下の研究会であるGPS/GNSS研究会は5月28日、令和3年度春季研究会をオンラインにて開催しました。この日の研究会では「みちびき」をメイントピックスに据え、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長の上野麻子参事官が、「準天頂衛星システムに関する最近の動向について」と題した基調講演を行い、続いて東京海洋大学の久保信明教授が「CLAS(センチメータ級測位補強サービス)実性能評価」、電子航法研究所の北村光教氏が「SLAS(サブメータ級測位補強サービス)独立評価活動」をテーマに講演しました。発表の概要を紹介します。

「準天頂衛星システムに関する最近の動向について」

  ── 内閣府・上野参事官

上野参事官

基調講演の中で上野参事官は、4月にとりまとめた「衛星測位に関する取組方針」の概説に続き、各国の衛星測位システムの現状や、GNSSと小型衛星コンステレーション連携システムの動向などを紹介すると共に、今後日本として取組を進める技術を含む衛星測位に関する研究開発のロードマップを紹介しました。
みちびき対応製品については、本田技研工業株式会社のレベル3自動運転車両「LEGEND」やイームズロボティクス株式会社のCLAS対応農薬散布用ドローン、ニュージャパンマリン九州株式会社の自動離着岸制御装置、株式会社ブルーオーシャン研究所のSLAS対応海象ブイ、株式会社エクスプローラのSLAS対応コンテナシャーシトラッキングシステムを挙げ、その特徴を紹介しました。
海外へ向けた高精度測位補強サービスの整備状況に関しては、現在は実証信号という位置づけのMADOCA(高精度測位補正技術)について、アジア・オセアニア地域での2024年目途の実用サービス開始に必要なシステム整備の実施と、2028年目途で初期収束時間(TTFF)短縮のための高域電離層補正生成・配信機能の追加整備を実現するという今後の目標を示しました。
災害・危機管理通報サービス(災危通報)では、「Jアラート情報(ミサイル発射情報)」や「Lアラート情報(避難指示)」の追加配信、オーストラリアや東南アジア諸国への災害情報配信などの機能を拡張する方針も示しました。

「準天頂衛星のcm級補正データ簡易性能評価」

  ── 東京海洋大・久保教授

東京海洋大学の久保信明教授は「準天頂衛星のcm級補正データ簡易性能評価」と題した講演を行い、キャンパス内受信設備でのCLASの評価結果、海外基準点でのMADOCAの評価結果、キャンパス周辺での移動体による評価結果などを紹介しました。
まず静止点でのCLASの性能に関しては、近隣電子基準点3点の平均値と比較して、水平方向で1~2cm未満、高度方向も4cm未満という十分な精度が得られていると報告しました。東京大学、三菱電機と共同で2020年4月から開始しているタイ、フィリピン、マレーシア、オーストラリア、インドネシア、シンガポールなどの基準点(主に大学内に設置)での評価方法についても概説しました。

評価を行った国内及び海外の基準点

評価を行った国内及び海外の基準点(講演資料より)

また、移動体でのCLAS簡易評価としてキャンパス周辺走行時について、測量級RTK測位結果と、CLAS対応の市販受信機による測位結果、CLASLIB解析の結果の比較などを示しつつ、2020年11月にCLASの補強対象衛星数が11機から最大17機に拡大された効果が現れているとしました。加えて一層の測位性能向上のため、GNSS由来の速度ベクトルやIMU(慣性計測ユニット)による加速度データを統合する取り組みが行われていることも紹介しました。

評価結果のまとめ

評価結果のまとめ(講演資料より)

「SLAS評価結果の報告」

  ── 電子航法研究所・北村氏

国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所の北村光教氏は「SLAS評価結果の報告」と題した講演を行いました。北村氏はまずSLAS運用の概要について説明した後、2019年10月から継続して行っている静止体での評価(全国13監視局それぞれにつき、近隣2点のSLAS測位結果を評価)の結果を紹介し、「監視局からの距離に応じて誤差は増大するものの、SLASの精度仕様に対して十分な精度が確保されている」と報告しました。

名城大データセットを解説するスライド

名城大データセットを解説するスライド(講演資料より)

名城大学の目黒淳一教授がオープンデータとして提供している走行車両データ(2019年11月に取得)を活用した、移動体におけるSLAS精度の評価について、手法と結果を報告しました。北村氏は名城大データセットのうち、u-blox受信機のRAWデータからL1S信号が補足できなかったタイミングを推定、その部分の補強情報は使用しないなど、SLASのメッセージ遮蔽があり得る現実に即した形での解析を行いました。

走行車両データを活用した解析結果

走行車両データを活用した解析結果(講演資料より)

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参照サイト

※講演スライド提供:東京海洋大学・久保信明教授、電子航法研究所・北村光教氏