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レフィクシアがiPhoneと一体化して使用できるCLAS対応デバイスを発売

2024年05月13日
製品写真

LRTK Phone 4C 圏外対応(提供:レフィクシア株式会社)

レフィクシア株式会社は2023年12月、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応したGNSS受信デバイス「LRTK Phone 4C 圏外対応」を発売しました。この製品は、アンテナとバッテリーが一体型の小型デバイスで、iPhoneに装着することでCLASによる高精度測位が可能となり、専用アプリを使って高精度位置情報を付与した写真を撮影したり、3D点群データを取得したりすることができます。このユニークなCLAS対応デバイスを開発したレフィクシア社は、東京・六本木を拠点として衛星測位に対応したIoT機器や太陽光発電所の設計・解析などの事業を展開する東工大発ベンチャーです。同社で代表取締役を務める高安基大氏に、開発の経緯と製品の詳細を聞きました。

製品を持つ高安氏

レフィクシアの高安氏

高安氏は、東京工業大学にてMEMS(半導体製造技術などを応用して作られる微小電気機械システム)加速度センサーの研究に取り組んだ後、2019年にレフィクシアを創業しました。2022年には東工大発ベンチャーに認定され、現在はレフィクシアの代表取締役を務めると共に、東京工業大学の科学技術創成研究院にて特任助教も務めています。
今回発売した「LRTK Phone 4C 圏外対応」は、同社が2022年に発売した、iPhoneに装着することでRTK(リアルタイムキネマティック)による高精度測位を可能とするデバイス「LRTK Phone 4C」に、圏外対応スタータキットのオプションを付けてCLASに対応したもので、携帯電話の電波を受信できず、RTK補正情報を取得できないエリアでも使用できます。

製品写真

LRTK Phone 4C 圏外対応(左)とRTK専用モデルのLRTK Phone 4C(右)

同社がLRTK PhoneのCLAS対応モデルを開発した理由は、顧客の要望が数多く寄せられたためです。土木・建設作業やインフラ管理の現場では携帯電波が圏外になる場面が多く、圏外エリアでもみちびきのCLASを受信してデバイスを使用可能にすることで、顧客に大きな安心感を与えられます。
「今年1月の能登半島地震の際は、地元の土木業の方がたまたま圏外対応モデルを購入していたため、被災状況を写真で記録することができました。CLASであれば携帯電話の電波が通じなくても使えるので、このモデルを作っておいて本当によかったと思います」(高安氏)

現地撮影写真を表示

能登半島地震の被災地で現地の状況を記録(提供:レフィクシア株式会社)

LRTK Phone 4C 圏外対応は、iPhoneに装着することでバッテリーやアンテナも含めたすべてが片手に収まり、CLASによる高精度測位を簡単に行えます。iPhoneとはBluetoothによる無線接続で連携するため、わずらわしいケーブル類は不要です。iPhoneと離した状態でもデバイスを使えるので、一脚や三脚に取り付けて定点測位も可能です。

iPhoneに装着せずに使用

iPhoneに装着しない形の使用も可(LRTK Phone 4Cモデル、提供:レフィクシア株式会社)

スマートフォンと一体化させて使うため、筐体は可能なかぎり小型軽量化しました。基板の厚さは通常1.6mmサイズを使いますが、LRTK Phone 4C圏外対応では、できるだけ薄く、軽くするために1.0mm厚の基板を採用しました。複数の層を積み重ねて構成される基板を薄くするには、各層を均一に薄く製造する必要があり、その分コストが上がります。
筐体の樹脂も、薄すぎると強度が下がり、厚すぎても熱収縮で反りが出るため、最適な厚さを見つけるのに苦労しました。電子部品を高密度化することにより熱暴走のリスクも高まるため、熱が発生しやすい部品同士の距離を離し、いかに分散させて配置するかを試行錯誤して、ようやく完成に至りました。

LRTK Phone 4C 圏外対応は、iPhoneに専用アプリ「LRTK」をインストールして使用します。アプリは単一の点を測位する単点測位機能と、1秒間に10点(10Hz)間隔で移動軌跡を記録できるロギング(連続測位)機能を備えています。また、撮影した写真にCLASによる高精度な位置情報を付与し、地図上の撮影位置に写真を配置し、各写真の撮影方向を表示することもできます。撮影方向は独自技術により高精度な方位計測を行っています。

緯度・経度・標高と撮影方向を記録

写真を撮影すると、緯度・経度・標高と撮影方向を記録(提供:レフィクシア株式会社)

クラウド上の画像を表示

撮影した写真を地図上に配置し、クラウドへアップする(提供:レフィクシア株式会社)

さらに、記録したポイントを目標地点として、地図やレーダー画面上で目的地までの距離や方向を示す機能を備えています。また、以前に撮影した際の方向も記録しているため、撮影の方向をAR表示による矢印で指示もしてくれます。

画面に目的地を表示

目的地までの距離や方向を表示(提供:レフィクシア株式会社)

レーダー画面

レーダー画面で左右と高さを示し、前回の記録位置へ誘導(提供:レフィクシア株式会社)

ストリートビューによる表示

ストリートビュー上に目的地の方向をAR表示し(左)、方位が合うと緑枠が出る(中央)。過去の撮影写真との比較も可能(右)(提供:レフィクシア株式会社)

また、LiDAR(レーザースキャナー)を搭載するiPhoneと組み合わせれば、地形など対象物の3D点群データを取得する「地形スキャン」機能も利用できます。点群データを構成する1つ1つの点には、CLASによる高精度位置情報が付与されます。このほか、ねらった地点をピンポイントに測量できる「被写体測位」の機能もあります。
LRTKアプリで取得した位置情報や写真、3D点群データなどは、同社が提供する「LRTKクラウド」にアップロードして保存できます。このサービスを使うことで、ウェブブラウザ上でデータ管理や日報作成、他ユーザーとの資料共有などを行えます。

3D点群データ

アプリで取得した3D点群データをLRTKクラウドで表示(提供:レフィクシア株式会社)

被写体測位

被写体測位を行っている様子(提供:レフィクシア株式会社)

同社は、LRTK Phoneで取得した素材を有効に活用するために、LRTK(専用アプリ)とLRTKクラウド(Webサービス)などのソフトウェアも合わせて提供しています。

港区六本木に拠点オフィスを持つレフィクシアですが、同社はここで3周波対応の基板・アンテナの開発から製造までを行っています。東京工業大学で高周波アンテナを研究開発してきた知識を活かして、3周波アンテナの電磁界解析や高周波基板を設計しているほか、設計だけでなく実際に試作から評価、製造までを自分たちで行う環境を実現しました。
ハードウェアの筐体を製造する設備や、耐熱や防水テストなどを行える試験装置など様々な機器を備えて、基板の切り出しから部品の実装、筐体製作、塗装・印刷、耐久試験に至るまでの工程を社内で行っています。

電磁界解析で3周波アンテナを制作

電磁界解析で3周波アンテナを制作。評価~試作を自ら実現(提供:レフィクシア株式会社)

高安氏はCLASに対応したLRTK Phoneを用いるメリットを、次のように説明します。
「土木・建設作業やインフラ管理の現場では携帯電波が圏外になる場面が多いため、圏外エリアでも使えるみちびき・CLAS対応のLRTK Phoneはたいへん好評です。圏外になったらどう測位しようという心配がなくなったと喜ばれます。最近は、災害の際に携帯ネットワークが停止した時にもLRTK Phoneが有効だということも分かりました。山奥の現地調査でも、災害時でも使える安心をみちびきCLAS対応のLRTK Phoneで提供していきたいです。圏外エリアでの測位や、携帯ネットワークのない場合の測位でお困りの方はぜひお問い合わせください」(高安氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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