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G-SPASE(社会課題解決型宇宙人材育成プログラム)2016年度成果報告会を開催

2017年03月02日

慶應義塾大学三田キャンパス(東京・港区)で2月23日、文部科学省委託事業「グローバルな学び・成長を実現する社会課題解決型宇宙人材育成プログラム」(G-SPASE)の2016年度最終成果報告会が開催されました。

会場風景

会場となった慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール

このプログラムは、宇宙と地上のインフラを統合し、問題抽出から課題解決に関わることのできる人材の育成と、国内外のネットワークづくりを目的としており、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科が代表機関を務め、東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科、青山学院大学地球社会共生学部、事業構想大学院大学事業構想研究科が参加しています。

東京海洋大学大学院 久保信明准教授

開会挨拶を行う東京海洋大学の久保准教授

参加学生はアジアやオセアニアなどの大学・政府機関などとの連携を通じ、現地の多様な社会課題に取り組んでいます。報告会は、東京海洋大学大学院の久保信明准教授の開会挨拶で幕を開けました。

横断的な情報サービスの提供が社会を動かす

── 東京大学・柴崎亮介教授

東京大学・柴崎亮介教授

東京大学CSISの柴崎亮介教授は、「宇宙技術・地理空間技術を利用した社会イノベーション」と題した講演を行いました。近年は衛星の開発コストが下がって観測衛星を増えたことに加えて、RTK-GPSによる高精度測位の機器も価格が大幅に下がったことにより、上から絶えず画像が見えて、下では何が動いているかを把握できる環境になったと、現在の状況を説明しました。そのような中では、データを蓄積し、それを知識に結びつけることで継続的に世の中を良くしていくことが大切であり、そのためにも個々の組織を超えた横断的な情報サービスの提供が社会を動かしていくと語りました。

教える取り組みを通じて学ぶ「半学半教」を実施

── 慶應大大学院・神武直彦准教授

慶應大大学院・神武直彦准教授

慶應義塾大学大学院SDM研究科の神武直彦准教授は、イベント標題の「グローバルな学び・成長を実現する社会課題解決型宇宙人材育成プログラム」の目標および運用シナリオ、そして今年度の成果を報告しました。神武准教授は、学生の学びのスタイルは、従来、先生が一方的にスキルや知識を伝える形だったのに対して、本プログラムでは、基本的なスキルや知識を獲得した後は、自分の興味や強みを学生同士が共有したり、いろいろな人に教えたりする取り組みを通じて学びを深める「半学半教フェーズ」を実施し、最後にアイデアを具現化する「スタートアップフェーズ」に移るという運用シナリオを紹介しました。さらにこれまで行ってきた主な取り組みとして、「e-Learningシステム」や「サマースクール/ワークショップ」、「国際シンポジウム」、各国との「協働プロジェクト」、毎月開催の「マンスリーチュートリアル」などの取り組みを紹介しました。

学生の“学び”を主軸に独自の教育を展開する

── ミネルバ大学日本連絡事務所・山本秀樹代表

ミネルバ大学日本連絡事務所・山本秀樹代表

ミネルバ大学日本連絡事務所代表の山本秀樹氏は、「ミネルバ大学と高等教育の未来」と題して、学生の“学び”を主軸とした独自教育を展開するミネルバ大学の設立の背景や、具体的にどのような教育を行っているのかを紹介しました。同大学では、効果的な学習を可能にするための方法として、生徒による能動的な講義への参加を促す専用のオンラインプラットフォーム「Active Learning Forum」や、毎週行われるさまざまな外部組織とのプロジェクト、企業や研究所への有給インターンなどを行っています。また、シンプルなオンライン形式の入試を採用し、4年間で7つの都市に居住させて、すべての生徒は寮に住んで共同生活を経験するという独自の取り組みを行っています。山本氏は締めくくりとして、ミネルバ大学の目的は、既存のエリート校に改革を促すことができる存在となることであり、才能ある学生が未来の社会で活躍できる実践的な知恵を適切な学費で実現することを目指していると語りました。

参加学生によるプレゼンやプロジェクト報告

本プログラムで学生が実施したプロジェクトを紹介するポスターセッションに続いて、各プロジェクトごとに口頭発表を行いました。

ポスターセッション

ポスターセッション

学生による口頭発表

学生による口頭発表

▽学生プロジェクト・口頭発表(その1)

  • Disaster Management:日産スタジアム内に設置されたビーコンを使って警備員や避難者の現在地を表示する「どこ混むシステム」(東京大学・鶴田未奈美さん)
  • Public Health:GISおよびスマートフォンの顕微鏡を活用したコミュニティベースのハマダラカ生息地のマッピング(東京大学・Ali Javedさん)
  • Log Analysis:バンコクのタクシーのプローブデータを活用した課題解決の取り組み(東京大学・Saurav Ranjitさん)
  • Tokyo2020:訪日外国人向けのFree WiFiのログデータを用いたインバウンドの行動分析(東京大学・和田健さん)
  • Urban Mapping:都市交通ネットワークや施設データなどのマッピングおよび分析の取り組み(東京大学・宮澤聡さん)

▽学生プロジェクト・口頭発表(その2)

  •  Asian Base Station:アジア各国における高精度衛星測位技術の普及と応用(東京海洋大学・土倉弘子さん)
  • UAV:UAVを用いたココナッツ農園のモニタリングシステム(東京海洋大学・西等知己さん)
  • Sports Innovation:スポーツ用GNSSデバイス開発とスポーツデータプラットフォーム構築(事業構想大学院大学・後藤剛士さん)
  • Disaster Nursing:療養者のための遠隔コミュニケーション技術を用いた社会参加支援と災害時への応用検討(慶應義塾大学・佐藤亮さん)
  • Agriculture Intelligence:人工衛星による高精度測位を利用したマレーシアにおけるアブラヤシ植林支援の効率化(慶應義塾大学・増間智昭さん)
  • Seamless LBS:シームレス屋内外測位技術を利用した、多機能トイレ活用のためのアプリケーションやサービスの設計・構築及び検証(慶應義塾大学・水村潔美さん)

新たな出会いがイノベーションにつながる

── パネルディスカッション

プログラムの最後には、神武准教授(慶應義塾大学大学院SDM)がモデレーターを務めてパネルディスカッションが行われました。パネリストとしては、柴崎教授(東京大学CSIS)やGitHubの堀江大輔氏、東京大学の福代孝良氏(非常勤講師)の4名のほか、プロジェクト口頭発表の登壇者など、学生を交えて意見を交換しました。

パネルディスカッション

パネルディスカッション

学生からは、本プログラムに参加した感想として「アイデアソンなどで、みんなでソリューションを作る場に参加できたのが良かった」「サマースクールに参加して、夜遅くまで世界中から集まった学生と議論して、いろいろな国の人と一緒に話し合うことで意見をまとめて、そこから新しい考え方を生み出すのが面白かった」「普通に研究室に通うだけでは出会えなかった社会人の方に会うことができて世界が広がった」「チームのプロジェクト管理の難しさを知ることができた」「プロジェクトを継続するモチベーション維持の難しさを痛感した」といったコメントがありました。

閉会の挨拶として、主催者の一人である青山学院大学の古橋大地教授から「来年も、よりさまざまなメンバーと一緒に社会課題の解決に取り組んでいきたい」とのコメントがありました。このプログラムの成果報告会等は、次年度も継続的に実施される予定です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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