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コア、CLAS対応受信機の評価実験結果を報告するWebセミナーを開催

2022年04月11日

株式会社コアは3月18日、同社が新たに発売したCLAS対応のGNSS受信機「Cohac∞Ten」を含む各社のCLAS(センチメータ級測位補強サービス)対応受信機を使って行った評価実験の結果を紹介するWebセミナーを開催しました。このセミナーには、外部講師として東京海洋大学の久保信明教授も参加し、実験結果を報告しました。

久保教授

東京海洋大の久保教授

都心でも大きなミスFIXなく高い信頼性

久保教授は冒頭、高精度測位は以前からRTK測位(Realtime Kinematic, 固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する方式)が広く利用されていたものの、国内においてはCLASの補正データをみちびきから無料で入手でき、端末さえあればセンチメータ級の測位が可能で、端末の低価格化も最近進んできた、とCLASのメリットを紹介しました。
また、海外におけるみちびきの高精度測位サービスの今後の見通しとして、高精度単独測位(PPP=Precise Point Positioning)はまだ技術実証の段階で、現在は収束時間が長いという課題はあるものの、今後は電離層の補正情報を放送する予定や、GalileoやBeiDouにも採用される予定があり、大いに期待できると語りました。

続いて、都内で実施したCLAS対応受信機の評価試験について報告しました。静止状態の評価結果では、東京海洋大学の研究室屋上でコア社がSeptentrio社と共同開発したCLAS対応受信機「AsteRx4」を使って試験を行い、24時間平均の誤差や標準偏差は水平方向で1~2cm未満、高度方向も4cm未満で、FIX率は一部を除いて99%以上と、RTK測位とほぼ変わらない結果となりました。

静止状態での評価結果

静止状態での評価結果(当日の講演資料より、東京海洋大学 久保信明教授 提供)

移動体での簡易評価は、東京海洋大学周辺を車で走行しながらAsteRX4を使って5Hzで測位データを取得したところ、RTKのFIX率98.2%に対してCLASは71.0%となり、高架下などを除いて比較的安定してFIX解を出すことができました。FIX解の部分だけで誤差を比較した場合も標準偏差が2~3cmという結果となり、移動体においても高精度が保たれることを確認できました。

移動体での評価結果

移動体での評価結果(東京海洋大学 久保信明教授 提供)

また、東京海洋大学周辺のビル街及び住宅街、高速道路の高架下などを含むルートの走行でもFIX率が72.7%と安定した結果となり、大きなミスFIXがなく信頼性が高いことを確認できました。

ビル街や高架下を含むルートでの評価結果

ビル街や高架下を含むルートでの評価結果(東京海洋大学 久保信明教授 提供)

栃木県大田原市の岩城農場においてトラクターに搭載したCLAS対応受信機で移動しながら位置情報を取得する簡易実験を行ったところ、FIX率は100%で標準偏差は1cmを切る結果となり、RTKと比較してほぼ遜色ない結果となりました。実験後に東北道を移動する際もさらに続けて簡易実験を行ったところ、FIX率は79.5%と8割近くなり、非常に安定した測位結果が得られました。
久保教授は、加えてIMUや速度センサーなどの他センサーと統合した実験の結果も報告し、CLAS対応受信機とこれらのセンサーとの統合により、水平最大誤差を約1.5m以内に抑えることは十分可能であるとしました。各社から低価格帯のCLAS対応受信機が登場し、性能も期待できることから、「CLASは今後、RTKのレベルまでは必要ない分野において、大いに利活用が期待される」との見通しを示しました。

コアもCohac∞Tenの性能試験結果を紹介

続いて主催者である株式会社コアが自社のCLAS対応GNSS受信機「Cohac∞ Ten」を使った性能試験の結果を紹介しました。Cohac∞ Tenは同社が発売したばかりの受信機で、従来に比べて大きさが約1/2、重さが約1/3と大幅な小型軽量を実現し、最大100Hz(10msec周期)で測位することが可能で、BluetoothやWi-Fiの通信にも対応しています。

Cohac∞Ten

Cohac∞Ten(株式会社コア提供)

同社は、小型軽量である点を活かしてドローンや自動運転車両へ組み込みに期待しているほか、100Hz出力を活かして高速で移動する鉄道での利用や、RTKとは異なりネットワーク回線なしで利用可能な点から、山間部での利用も想定しています。
そして今回は、100Hz測位のメリットを伝えるため、ドローンが空中で静止している時に細かくふらついてしまう状況を想定し、加速度変化の激しい振り子運動時における100Hzと10Hzの測位結果の比較を紹介しました。
水平方向の実験では、中心部分の振り子の速さが時速約1.8kmの時、100Hzは隙間なく測位できましたが、10Hz測位では測位間隔が約5cm離れてしまいました。これを時速約70kmで飛行するドローンに換算すると、10Hz測位では約2mの測位間隔となってしまいます。高さ方向の測位結果も、100Hzでは細かい動きまで捉えているのに対し、10Hzでは補完できない箇所が多く見られました。

振り子運動時の測位結果

振り子運動時の測位結果(当日の講演資料、株式会社コア提供)

同社は、静止点と移動体における性能試験の結果も紹介しました。静止点(定点)観測では、オープンスカイの環境で12時間の連続受信を行ったところ、測位精度の平均は水平で2.14cm、垂直で5.43cmとなり、みちびきのパフォーマンススタンダード(PS-QZSS)が記載しているCLASの精度の範囲内であることを確認できたといいます。

静止点での試験結果

静止点での試験結果(株式会社コア提供)

移動体の試験では、東京都稲城市の高い建築物や歩道橋などが存在するコースで走行試験を行い、RTK測位を基準とした誤差とFIX率を計測したところ、FIX率が93.8%と高く、歩道橋通過後の復帰も早いと確認できました。ミスFIXも見られず、誤差は水平2.0cm、垂直5.8cmという高精度を記録しました。

移動体での試験結果

移動体での試験結果(株式会社コア提供)

ウェビナーの中で同社は、コンパクトサイズのCohac∞Tenを使ってみちびきのCLASを導入する方法として、資材を運搬するフォークリフトに受信機を搭載して資材保管位置を記録したり、廃棄物を運搬・埋設する重機に受信機を搭載して埋め立て位置を記録したりする事例なども紹介しました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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※本文中の画像・図版提供:東京海洋大学 久保信明教授、株式会社コア

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