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新宿中央公園でドローンを活用した災害対応実証実験

2017年02月14日

損害保険ジャパン日本興亜株式会社、SOMPOリスケアマネジメント株式会社、工学院大学、株式会社理経、新宿区の5者から成る「チーム・新宿」は2月11日、超高層ビル街における災害時の情報収集および滞留者誘導を目的に、小型無人航空機(ドローン)活用の実証実験を実施しました。

飛行中のドローン

飛行中のドローン

「チーム・新宿」は、2007年から10年間、大規模地震を対象とした地域連携訓練や地域の防災リテラシー向上に取り組んできた「新宿駅周辺防災対策協議会」のメンバーで、これまでの活動を通して災害発生直後の情報収集や円滑な誘導のための情報発信、主要拠点間での円滑な情報共有を課題と考えていました。今回の実証実験はこうした課題を解決する取り組みであり、高層ビル街においてドローン活用の実効性および課題を確認することを目的に行われました。

高層ビル街におけるドローン活用を検証

発着場となった新宿中央公園

発着場となった新宿中央公園

実証実験は、新宿中央公園で午前10時からスタートしました。公園内の「水の広場」を発着地点としてドローンを飛行させ、付近にある新宿区役所(区対策本部設置場所)と工学院大学(西口現地本部の設置場所)の3拠点を無線通信で結び、ドローンが撮影した動画などを拠点間で情報伝達しました。

使用したドローンは、損害保険ジャパン日本興亜が平常業務で使用しているDJI社の「Matrice600」です。拠点間の通信には、4.9GHzの長距離無線LANを使用し、新宿中央公園に無線伝送装置の移動局、工学院大学に基地局および中継局、新宿役所に基地局を設置しました。

長距離無線LANのアンテナ

長距離無線LANのアンテナ

DJI製「Matrice600」

DJI製「Matrice600」

スピーカーを搭載

スピーカーを搭載

会場に設置されたモニタ

会場に設置されたモニタ

ドローンが撮影した映像は、エンコーダーによって圧縮符号化し、IPに変換した上で工学院大学へと伝送しました。伝送されたデータをデコーダーによって映像信号に戻すことで、モニター上に映像が表示されます。さらに、工学院大学の中継局を経て新宿区役所にも同じ情報伝送されて、区役所のモニター上にも映像が表示されました。

映像の伝送のほかに、ドローンに搭載したスピーカーから地上の滞留者に音声を発する実験も行われました。ドローンを発着地点のほぼ真上に飛行させた状態で、飛行高度を50m、75m、100mの3段階に切り替えながら、発着地点から約150m離れた地上において、音声の聞き取りやすさを検証しました。

衛星測位を活用した自動飛行実験も実施

自動操縦での飛行も実施

自動操縦での飛行も実施

今回の実証実験では、超高層ビル街において、ドローンの安定飛行が可能かどうかも検証しました。風や電磁波、GPS測位におけるマルチパス(建物等での反射)の影響など、さまざまな飛行データを取得しました。さらに、手動による飛行のほか、衛星測位を活用した自動操縦プログラムによる自動飛行実験も実施しました。

RTK-GPSのアンテナ

RTK-GPSのアンテナ

RTKの固定局

RTKの固定局

衛星測位には、RTK方式(Realtime Kinematic、固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで高精度に位置を測定する方法)を採用し、発着地点に固定局を設置した上で補正データをドローンに送信し、精密飛行を検証しました。

損害保険ジャパン日本興亜の高橋氏

損害保険ジャパン日本興亜の高橋氏

損害保険ジャパン日本興亜の損害調査企画室技術部長 高橋良仁氏は実証実験後、「高層ビル街でドローンを飛ばした場合の実験データは、過去にありませんでした。これまで、もしかしたら電波干渉が起きるのではないか? GPSの電波がマルチパスの影響で乱反射して誤差が発生するのではないか? といった想像はしても、だれも試したことがありませんでした。今回は大きな一歩を踏み出せたのではないかと思います」とコメントしました。

この実証実験は、ドローンや無線通信網の応用研究を進めながら継続的に実施していく予定で、今後も新宿駅周辺の防災対策を強化していく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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