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構造計画研究所、「GNSS位置測位セミナー」を開催

2016年02月10日

株式会社構造計画研究所は2月4日、東京・中野にある同社の本所新館で「GNSS位置測位セミナー」を実施しました。同社は建設・防災、情報通信、製造分野などの分野で工学をベースとしたソリューションを提案している、エンジニアリング・コンサルティング会社です。このセミナーには、通信、電機、電子デバイス、建設のほか、大学・アカデミズムなど幅広い分野から100名近くが参加しました。

▼中部大学工学部 講師 海老沼 拓史氏

中部大学工学部 電子情報工学科 講師の海老沼 拓史氏

最初に登壇した中部大学工学部電子情報工学科講師の海老沼拓史氏は、「GNSSを用いたセンシングや高速飛翔体におけるGNSS測位の動向」と題して講演を行いました。

信号の品質保証やセキュリティ確保が重要な課題

海老沼氏はもともと人工衛星用のGPS受信機開発に取り組んでいました。人工衛星のような高速飛翔体では、ドップラー効果によりGPS信号の周波数シフト量が地上の移動体の10倍程度と大きくなります。

開発した機器を検証したくとも、衛星並みの速度を再現するのは困難であり、そのような用途の信号シミュレータも非常に高価だったため、安価で小型のものが登場し始めたSDR(Software Defined Radio、ソフトウェア無線)ボードを使ってシミュレータを自作した経緯を紹介しました。自ら開発した"gps-sdr-sim"はオープンソース・ソフトウェアとして公開しています。

海老沼氏は、比較的安価な機器でもGPSスプーフィング(なりすまし)が可能となっている昨今、みちびきの実運用開始に向け信号の品質保証やセキュリティ確保が重要な課題となっていると指摘しました。
 
さらにスマートフォンを使ったRTK測位や、GPS反射信号を使った海上風・海氷密接度観測など、GNSSの応用研究の事例についても概説し、今年10月打ち上げ予定のNASAのCYGNSS(Cyclone Global Navigation Satellite System)計画を紹介しました。この計画は、GPS 反射波を使い、小型衛星8機の編隊飛行で台風の目を詳細に観測するものです。

▼構造計画研究所 藤井義巳氏・古川 玲 氏

構造計画研究所の藤井義巳氏

構造計画研究所の古川 玲 氏

続いて構造計画研究所の藤井義巳氏と古川 玲 氏が、同社のGPS信号シミュレータ「SDR-SAT」と、GPS電波伝搬シミュレータ「GPS-Studio」を紹介しました。

藤井氏は、「SDR-SATを活用したGNSS受信機の誤差分析」と題した講演の中で、SDR-SATの概要や実測データとシミュレーションデータの比較のほか、追加機能としてみちびきやGLONASSへの対応の予定も示しました。

古川氏は、「GPS-Studioを活用したGNSSの誤差分析」と題した講演で、都市部の3Dモデルデータ(市販)を利用して実施したマルチパスシミュレーションの概要とデモンストレーションを紹介し、追加機能としての「SDR-SAT」連携機能の対応予定などを示しました。

▼早稲田大学高等研究所 助教 鈴木太郎氏

早稲田大学高等研究所 助教の鈴木太郎氏

最後に登壇した早稲田大学高等研究所助教の鈴木太郎氏は「衛星測位における3Dモデルを用いたシミュレーション技術の活用」と題して講演を行いました。

間接波のみ受信する「不可視衛星」のマルチパスが、特にやっかい

屋外の自律移動ロボットを研究テーマとしてきた鈴木氏は、GNSS測位と3D地図の統合の重要性をまず指摘。

衛星測位の精度を悪化させるマルチパスには2種類があり、特にやっかいなのが不可視衛星のマルチパス、すなわち間接波のみが受信されるケースだとして、GoogleMapで提供される都市内の3D地図から、天頂を見上げた時の開空形状を推定して衛星の可視/不可視を判定、不可視衛星からの信号を測位に使用しないことで、測位精度を向上させた事例を紹介しました。
 
またGNSS衛星の可視数を考慮し、なるべく多くのGNSS衛星が見える経路を選ぶ自律移動ロボットの研究や、マルチパス誤差を修正するソフトウェアGNSS受信機の研究、複数のGNSSアンテナを搭載したUAV(ドローン型マルチコプター)で、機上アンテナ間でRTK(リアルタイムキネマティック、Realtime Kinematic)測位を行うことにより、UAVの姿勢検知を行う研究などを紹介しました。

今回のセミナーは、GNSSシミュレータ「SDR-SAT」、「GPS-Studio」の販売開始を記念して行われたもので、講演後の質疑応答や懇親会でも活発な議論が交わされました。

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