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コアがCLAS対応ドローンを活用したソリューションでウェビナー開催

2022年06月20日

株式会社コアは5月31日、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)対応受信機「Cohac∞ Ten」を搭載した国産ドローン「ChronoSky PF2」のソリューションを紹介するウェビナーを開催しました。ドローンを開発した株式会社ACSLでCMO(最高マーケティング責任者)を務める六門直哉氏も外部講師として参加したウェビナーの模様を紹介します。

山間部でCLAS対応ドローンの飛行試験

六門氏画像

ACSLの六門氏

産業用ドローンメーカーとして2013年に創業したACSLは、独自開発の自律制御システムをコア技術として、顧客の業務に必要な用途特化型ドローンを開発・提供しています。そのACSLの六門氏は、現在のドローンをめぐる国内の状況を次のように解説します。

航空法改正に伴う有人地帯上空における目視外飛行(レベル4)の緩和や免許制度の整備など、近年ドローン市場を取り巻く環境は急速に変化しており、ドローンは今、実証実験フェーズが収束し、大手企業や政府がドローンの本格的な導入を決定し始めている段階です。ACSLはこうした中で、すでに提供している用途特化型機体の社会実装に加えて、新用途の開発やセキュア対応、他分野への展開などに取り組んでいます。
同社が提供する用途特化型機体は、小型空撮ドローン「SOTEN」、配水管などの閉鎖環境を点検する「Fi4」、火力発電所の煙突内部や調圧水槽内などの非GNSS環境を自動で飛行する煙突点検ドローン、5kgペイロードを搭載できる物流専用ドローン「AirTruck」の4製品で、このうち昨年12月に発売したSOTENは、みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応しています。

ACSLが提供する用途特化型ドローン

ACSLが提供する用途特化型ドローン(図版提供:株式会社ACSL)

これらの製品のUX(ユーザーエクスペリエンス)/UI(ユーザーインタフェース)の向上や、安全・安心を支える技術の拡充、サポート体制の充実などにも取り組んでおり、中でも安全・安心を支える技術として、高精度測位への対応を進め、株式会社コアと共同でCLAS対応ドローン「ChronoSky PF2」を開発しました。
今年3月には山梨県小菅村で、山間部におけるChronoSky PF2の飛行試験を実施し、CLAS測位により事前の飛行計画に沿った精密な飛行が可能であると確認しています。この試験では、意図的に利用する衛星数を限定し、CLASがFIX(収束した状態)からFloat(精度が低い)状態になりやすい環境を作ることで状態遷移時の挙動についても確認しました。

ChronoSky PF2の飛行試験

ChronoSky PF2の飛行試験(図版提供:株式会社ACSL)

標定点不要の効率的なドローン測量

樋口氏画像

コアの樋口氏

六門氏による講演を受けて、株式会社コアの樋口志樹氏(GNSSソリューションビジネスセンター)が、みちびきのCLASを活用してシンプルな構成で高精度なドローン測量を実施する、同社のソリューションの仕組みを説明しました。

ドローン測量ソリューションの特長

ドローン測量ソリューションの特長(図版提供:株式会社コア)

一般にドローン測量において点群精度を確保するには、標定点(GCP=Ground Control Point)を地上に設置し、RTK補正データを得るためのネットワーク環境を整えることが必要です。CLAS対応ドローンを活用すればこれらが不要となり、また、CLAS対応ドローンを使わなくても、従来のRTK対応ドローンとCLAS測位を活用した基準局を組み合わせることでも同様のメリットを享受できます。
標定点の設置・計測がなくなれば、設置の計画や回収などの事前・事後作業、計測エリア周辺の住民との調整も不要となり、作業日程の自由度が向上し、斜面などの危険エリアへの立ち入りもなくなります。管理すべき計測データが減り、設置位置の計測忘れや、データ取得の失敗、座標の記録ミスといったヒューマンエラーも防げます。

標定点の設置やネットワーク環境が不要

標定点の設置やネットワーク環境が不要(図版提供:株式会社コア)

株式会社コアは、ドローン本体や処理用PC、ソフトウェア、導入サポート、使い方のレクチャーなど、導入に必要な機材や運用手順をパッケージとして提供し、飛行計画の作成から現場での撮影、点群化・オルソ化、生成データの活用までをサポートしています。さらにドローンが撮影したデータをシステムと連携するために、AIによる認識技術を用いて取得データを分析することで省力化・データベース化を図り、他のGIS情報と連携して可視化することも可能です。
このシステムは、ChronoSky PF2のようなマルチコプター以外にも、可搬性を重視した小型マルチコプターや、より広範囲を観測するVTOL型固定翼機にも対応しています。撮影するエリアの地上に検証点(マーカー)を8点設置し、事前に地上測量で位置を測定した上で、マルチコプターと固定翼機それぞれで撮影し、3D点群化して精度を比較する検証を行ったところ、マルチコプターと固定翼機いずれも1~3cmの誤差に収まり、CLASを利用した点群生成は十分な精度を保つことが確認できたといいます。

地上に8点のマーカーを設置して検証

地上に8点のマーカーを設置して検証(図版提供:株式会社コア)

写真測量に十分な精度を実現

写真測量に十分な精度を実現(図版提供:株式会社コア)

樋口氏は、株式会社コアのドローン測量ソリューションのメリットを、「ネットワーク環境が不安定な場所でも、CLASを利用した高精度測位でドローンの飛行をサポートすると共に、標定点に関わる作業をなくしてドローンによる写真測量の作業を効率化すること」と語り、講演を締め括りました。
同社は6月21~23日に幕張メッセで開催される「Japan Drone 2022」に出展し、ブースでみちびきのCLASに対応した国産ドローン「ChronoSky PF2」やCLAS対応受信機「Cohac∞ Ten」、およびこれらを活用したソリューションの展示を行う予定です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※本文中の画像・図版は、当日のウェビナー画面より(提供:株式会社ACSL、株式会社コア)

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