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データ流通推進フォーラムで「G空間情報センター」に関する講演

2018年07月30日

2018年5月22日、東京大学本郷キャンパス(東京・文京区)で一般社団法人データ流通推進協議会が主催する第3回データ流通推進フォーラムが開催され、G空間情報センターに関する講演などが行われました。ビッグデータ時代のGNSSの役割についての示唆を含む2つの講演の概要を紹介します。
なお、本フォーラムを主催したデータ流通推進協議会は、産学官の各層が保有する、いわゆるビッグデータをやりとりする「データ取引市場」の構築などを通じ、公正で安全で効率的なデータ流通の社会基盤を整備し、日本の産業活性化・国際競争力の強化に資することを目的として、昨年から活動を始めた団体です。

当日の会場風景

東大・柴崎教授の講演

データジャケットの原理

── 東京大学 大澤幸生教授

大澤教授の講演スライド

「データ同士の結合には、共通の変数が必要です。それがなかったら結合できません」(大澤教授)

機械学習や人工知能の研究から発端し、データを活用したイノベーション創出をテーマとする研究に携わってきた東京大学大学院工学系研究科の大澤幸生教授(システム創成学専攻)は、「データジャケットの原理 ~データは『材』、コンテキストは『財』」のタイトルで講演しました。
大澤教授は「LPレコードはジャケットだけでも売れ、試聴は必須ではない。データ自体を秘匿したまま、その概要・属性を公開することで流通は可能」と考え、データジャケットの概念を提唱。そして異分野間でのデータ連携を促すIMDJ(Innovators Marketplace on Data Jackets)と呼ばれる手法を開発、その象徴的な成功例を紹介しました。IMDJの手法により生み出された「道路照明灯の設置データ(Data A)と、Googleマップ(Data B)を組み合わせ、夜間でも安心して歩ける経路(新たな価値)が見つかる」というシナリオを、データ保有者である区役所に示すことで、本来は非公開であった街灯位置データを得ることができた、という事例です。
このほか三菱地所株式会社、富士通株式会社、ソフトバンク株式会社と共同で行う、東京・丸の内エリアでのデータ利活用の取り組みを紹介しました。この取り組みは、ビル設備の稼働データや、店舗売上、人流データなどのデータを、業種を超えて利活用することで新サービス創出につなげようというもので、この5月から実証実験としてスタートしています。

G空間情報センターの概要

── 東京大学 柴崎亮介教授

柴崎教授の講演スライド

「GNSSによる座標と時刻の情報は、データを結合する時の鍵となる“データの中のデータ”です」(柴崎教授)

講演中の柴崎教授

柴崎教授

東京大学の柴崎亮介教授(空間情報科学研究センター/生産技術研究所)は、「G空間情報センターの概要/現状と課題について」と題して、産学官のさまざまな機関が保有する地理空間情報の円滑な流通を支援するため設立されたG空間情報センターの概要と現状について講演を行いました。
流通や共有が可能なデータが増えている背景として、GNSSの進歩や低廉な受信チップの普及で測位コストが大幅に低下していることを上げ、スプーフィング(偽装)への備えの重要性も指摘。同センターの役割として特に意識していることとして、「埋もれているデータの発掘や流通」「データを組み合わせて価値ある情報を生み出す」「データ保有者の利益を尊重しつつ、価値あるサービスを生み出す」「データエコノミーの創出支援」などを提示しました。
また、2016年10月の稼働開始以降、登録データセット数は2210件(2018年4月現在)に上り、登録ユーザー数、ページビューも順調に増加していると報告。同センターが核となって実現した災害時のデータ利用・提供に関する協定や、2017年7月の九州北部豪雨における「通行実績マップ配信」の事例などを紹介しました。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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