コンテンツです

ユーブロックスが車載用の自律航法GNSSレシーバーの説明会開催

2016年07月19日

スイスのチップメーカー「u-blox」の日本法人であるユーブロックスジャパン株式会社は7月13日、車載向けのGNSSレシーバー「NEO-M8U」及び「EVA-M8E」の製品技術説明会を都内で開催しました。この説明会には、u-blox本社からプロダクト・マーケティング・マネージャーであるフロリアン・ブスケ(Florian Bousquet)氏が来日して参加しました。その模様を紹介します。

u-blox プロダクト・マーケティング・マネージャー:フロリアン・ブスケ氏

u-blox:フロリアン・ブスケ氏

電波を受信困難な場所でも高精度な自律航法が可能

みちびきの4機体制などで今後、衛星測位の精度向上が見込まれていますが、その一方で、高層ビルの谷間やトンネル内など衛星測位が困難なケースはまだまだ少なくありません。このような場合によく使われる、衛星測位を補って精度の高い測位を実現する技術の1つが、ジャイロセンサーや加速度センサーによる自律航法(推測航法、デッドレコニング=Dead-Reckoning)です。

「NEO-M8U」

NEO-M8U

2016年2月に発表された「NEO-M8U」は、6軸のジャイロセンサー及び加速度センサーが内蔵されたGNSS受信モジュールで、測位衛星の電波を受信困難な場所でも高精度な自律航法が可能となります。速度パルス(車速信号)などを接続しなくても自律航法ができるこの技術は「UDR(Untethered Dead Reckoning、アンテザード自律航法)」と呼ばれています。UDRは車両との電気的接続を必要としないため、配線が不要で簡単に自動車に搭載することができます。測位衛星は、みちびきのほか、GPS、GLONASS、Galileo、BeiDouの5システムに対応しています。

自律航法GNSSレシーバー「EVA-M8E」

EVA-M8E

2016年6月には、この「NEO-M8U」のGNSSレシーバー部をチップ化した「EVA-M8E」も発表されました。「EVA-M8E」も、外部にジャイロセンサーや加速度センサーを接続することにより、「NEO-M8U」と同様に自律航法が可能となります。

同社では「NEO-M8U」の用途としてメーカー製のカーナビなどの高度なテレマティクス製品、「EVA-M8E」の用途として、車両警報システムやドライブレコーダー、後付けのカーナビ、ETC車載器、レーダー探知機、運行管理システムといった、車両販売後に取り付けられるオプション品やメンテナンス用品など、いわゆる「アフターマーケット製品」をターゲットとして考えています。

このほか、短期間での製品開発をサポートするため、UDRの評価キット「EVK-M8U」と、内蔵アンテナを搭載したアプリケーションボード「C93-M8E」も提供します。

アプリケーションボード「C93-M8E」

C93-M8E

低コストで大量生産する商品に適したモジュール

説明会においてブスケ氏は、「GNSSの測位精度は、デバイスが座席下などに設置されたり、高層ビルに囲まれた場所を走行したりすると高精度な測位が困難になるほか、製品やアンテナが小型化する場合でも測位精度に影響がある」と語りました。

その上で、「NEO-M8U」及び「EVA-M8E」は電波が弱い場所でも優れたパフォーマンスを実現し、信号が途切れた場合も継続してナビゲーションを行えるとアピールしました。さらに、車両の速度パルスへの接続が不要であると共に、最高20Hz(1秒間に20回)の測位も可能で、低コストで大量に生産する商品に適していると説明しました。

軌跡ログの比較事例を紹介

このほか、「NEO-M8U」及び「EVA-M8E」と、GNSSのみの測位との測位精度を分かりやすく説明するため、両製品の軌跡ログの比較事例を紹介しました。

1)シンガポール市街の事例では、「EVA-M8E」(黄色)と「標準のGNSSモジュール」(黄緑)のログ比較で、地図の右下にあるパーキングガレージ周辺の軌跡に大きな違いが出ました。

シンガポール市街での「EVA-M8E」と「GNSSのみ」の軌跡ログ比較

シンガポール市街での軌跡ログ

2)新宿の高層ビル街の事例では、評価キット「EVK-M8U」(EVA-M8E)と「EVK-M8N」のログ比較で、「EVK-M8U」はマルチパスによる測位誤差が大幅に少ないことが分かります。

新宿の高層ビル街での軌跡ログ

新宿の高層ビル街での軌跡ログ

3)首都高速の大橋ジャンクションの事例では、「EVK-M8L」(自動車用自律航法、ADR=Automotive Dead Reckoning)と「EVK-M8U」(EVA-M8E)(アンテザード自律航法、UDR)のログ比較で、高さの精度において「EVA-M8E」が優れていることが分かりました。

大橋ジャンクションでの軌跡ログ

大橋ジャンクションでの軌跡ログ

「NEO-M8U」及び「EVA-M8E」のサンプル出荷と「EVK-M8U」及び「C93-M8E」の出荷は、すでに開始しています。「NEO-M8U」の量産開始は2016年8月中、「EVA-M8E」の量産開始は2016年第4四半期を予定しています。

参照サイト

※ヘッダ及び本文画像は、ユーブロックスジャパン株式会社の製品技術説明会にて撮影。2016年7月22日、u-blox社の指摘により製品説明の一部を追記・修正しました。

関連記事