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アイサンテクノロジーが測量用UAVの実証実験 [後編]

2015年11月24日

小型軽量の電池やセンサやモーターが登場し、衛星測位や機体制御の技術を統合することで生まれたドローン(マルチコプター)は、他の多くの有用な技術と同様に光と陰の両面をもつことから、節度ある利用が求められてきました。12月10日からは航空法の一部改正により、ドローンやラジコン機等の無人航空機(UAV=Unmanned aerial vehicle)の飛行ルールが新たに導入され、空港周辺や人口集中地域、高度150m以上の飛行が禁止されます。

明確なルールが決まり、グレーゾーンが狭まったことで、ドローンの有効利用はいっそう進むものと期待されています。そして、ドローンと衛星測位の活用で開発が進んでいるのが、測量の分野です。愛知県の「新あいち創造研究開発補助金事業」として、アイサンテクノロジー株式会社と株式会社プロドローンが11月16日に実施した、測量用UAV(ドローン)の飛行実証実験の模様を引き続きレポートします。

かつての自動走行バス専用道でUAVを飛ばす

実験の会場となったのは2005年愛知万博の跡地「愛・地球博記念公園モリコロパーク」で、飛行実証事実験が行われたルートは、万博会期中にバスが専用軌道上を無人走行する次世代交通システム「IMTS(Intelligent Multimode Transit System)」が運行されていた付近。IMTSの自動走行時にはモリゾー(写真・緑)やキッコロのぬいぐるみが運転席に置かれていました(IMTSの写真は2005年当時のもの)。

2005年愛知万博で専用道を走る「IMTS」

IMTSの運転席に座る「モリゾー」のぬいぐるみ

トンネル通過や高度など設定を何度も変更

前回は飛行前の準備状況を中心にお伝えしました。無事に飛び立った測量用UAVは、モリコロパークの西駐車場から北駐車場に至る、公園西北部の約600mの道路上を飛行します。

往路の飛行が終わったら、再度機体を整備して、同じルートを出発地点へ折り返します。ルート上には、上を走る別の道路と交差するトンネルなど障害物が何カ所かあります。トンネルの上を飛行するか、中をくぐるかなど、想定をその都度、変えて飛行します。これを一日に何回か繰り返して、さまざまなデータを取得を重ねます。

実験ルートのトンネル内を通過させる

この日の実験では、測量用UAVにトンネル内を通過させ、「一時的に測位衛星の信号が途絶える」ケースの飛行も試みられました。

トンネルの上を飛行させる

レーザースキャナの解像度(分解能)を確認する試験体

逆にトンネル上を交差して走る道路の、さらに上を飛行させる試験も行いました。あらかじめ高度を指定し、この時は50mまで上昇しました。単に往復飛行するだけでなく、実際に測量する際の設定に近い状況を想定し、試行錯誤を繰り返します。また、経路の途中には、レーザースキャナの解像度(分解能)を確認する試験体も配置されています。

UAVの活用は、GPS登場以来の革命的出来事

実験の合間にアイサンテクノロジーの加藤 淳・取締役 経営企画室長(左)と佐藤直人・MMS事業部部長代理(右)に話を聞くことができました。

佐藤氏は、測量用UAVの安全対策として「(1)バッテリー残量が30%を切る、(2)操縦者との接続が一定時間以上途絶える、(3)操縦者が専用のスイッチで命令を送る、のいずれかの状況が生じると、スタート地点に自動的に帰還する"GO HOME機能"を備え」ており、他にも「二重三重の安全対策を講じ、実用化へとつなげたい」と語ります。

加藤氏も「UAVの活用は、測量業界でGPS登場以来の革命的な出来事」だとして、「人間がGPS受信機を携えてその場に行かなくても済むのは、災害直後の現場でも測量が可能ということ。自動走行はもちろん、さらに幅広い分野でメリットを生かしたい」と語っています。

同社では測量用UAVの実験と開発を今年度中に終え、2016年にシステムとして販売を予定しているとのことです。

実証実験に関わったスタッフたち

この日、実証実験を行ったスタッフの面々

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