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日本海事新聞がCLAS応用のボート自動着岸技術でセミナー開催

2020年09月14日

海運・物流に関する日刊専門紙を発行する株式会社日本海事新聞社は2020年8月31日、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)を応用した自動操船技術を紹介するウェブセミナーを開催しました。「宇宙から、船を動かせ。」と題したセミナーでは、2019年度みちびきを利用した実証実験に採択され、小型プレジャーボート自動着岸の実証実験を行ったニュージャパンマリン九州株式会社の山本茂・取締役社長がオンラインで講演しました。

開催のきっかけは、2月の横浜での実証実験

ウェブセミナーの告知

日本海事新聞社の加護谷元基氏(メディア事業局 営業企画部 部長)は今回のセミナー開催のきっかけについて、ニュージャパンマリン九州が2020年2月に横浜で行った実証実験の様子を記事にしたところ、多くの問い合わせが寄せられたことだと話します。SNSで紹介した実験動画も多数視聴され、続いて2020年7月に掲載した大型船への応用も見据えた解説記事にも読者から反響がありました。
「自動操船は業界の大テーマですが、この“新しい船舶制御の緒となる技術”をより多くの方々に詳しく紹介したいと思ったのです」(加護谷氏)

同社は2020年春、教育研修事業「海事アカデミア」を新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からオンライン配信でのライブ中継に切り替えており、そのウェブセミナーの枠でこのテーマを取り上げました。

みちびきの測位を高付加価値サービスの基盤に

山本氏画像

山本氏

大分県国東(くにさき)市からオンラインで講演したニュージャパンマリン九州の山本社長は、会社沿革や製品群、納入実績などを紹介しつつ、「小型ボートの定点保持制御技術が、自動操舵技術の出発点になった」と開発経緯を説明。実証実験の着岸動画を交え、3つのアンテナ・受信機のセットを使うことで位置・向き・姿勢を把握するシステムの仕組みを詳しく解説しました。2021年度の市場投入を見据えて開発中の、試験艇の概要などを紹介すると共に、ボート市場の将来予測や、水上タクシー普及における課題などにも言及しました。

セミナーには内閣府宇宙開発戦略推進事務局の飯田洋企画官も登壇し、ホスト役の加護谷氏の質問に応える形で、準天頂衛星システムの概要や、7機体制の整備に向けた取り組みを紹介し、「みちびきで実現する高精度の位置情報を高付加価値のサービスを生み出す基盤として使っていただきたい」とアピールしました。また、大型商船分野への応用の見通しを聞かれ、「実現までさらに必要となる技術はあるが、それに向けた第一歩を踏み出したことは間違いない」と語りました。

海運のボトルネックに光を与える技術

加護谷氏画像

加護谷氏

セミナーを終えた加護谷氏は、次のように話してくれました。
「たとえば東京湾のように多数の船舶が行き交う混雑した海域では、大型商船などの乗組員に適切な水路を教え、操船を指示する水先人(水先案内人、パイロット)と呼ばれる専門家の乗船が必須です。この水先人の高齢化が進んでおり、近い将来に人材不足で、ここが安全な航海のボトルネックとなるという危機感を多くの海事・海運関係者が共有しています。みちびきを使った自動着岸技術は、こうした課題の解決にも光を与える技術ではないかと感じました。引き続きフォローしていきたいと思います」

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

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※ヘッダ及び本文画像提供:株式会社日本海事新聞社、ニュージャパンマリン九州株式会社

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