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u-bloxの仲氏が語るCLAS対応「NEO-D9C」

2021年12月20日

スイスu-bloxの日本法人であるユーブロックスジャパン株式会社(u-blox Japan)は11月24日、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応した受信モジュール「NEO-D9C」を発表しました。NEO-D9Cは、高精度測位に対応したGNSS受信モジュール「ZED-F9P」と組み合わせることでCLASによる測位が可能となるモジュールです。同製品の詳細について、u-blox Japanのマーケティング担当を務める仲哲周氏に話を聞きました。

仲氏

u-blox Japanの仲氏

ZED-F9P直結のL6信号デコード用モジュール

NEO-D9Cは、みちびきが配信するL6信号の補強データを受信可能なモジュールで、同社のGNSS受信モジュール「ZED-F9P」と組み合わせることでCLASによる高精度測位が可能となります。
NEO-D9Cは、受信したL6信号をデコードして、CLAS及びMADOCAに対応したSSR(State Space Representation:状態空間表現、個別誤差)データを出力します。SSRには、衛星軌道・クロック誤差、衛星信号バイアスや大気圏遅延誤差(電離層遅延、対流圏遅延)などの補正情報が含まれています。

NEO-D9C

NEO-D9C

SSRデータはOSR(Observation State Representation:観測空間表現、自己位置における総合誤差)データに変換することにより、PPP-RTK(精密単独測位型リアルタイムキネマティック)による高精度測位が可能となりますが、従来はデコードして出力したSSRをいったんホストへ送り、変換ソフトウェアを使ってOSRに変換した上で測位演算を行うGNSS受信モジュールへと出力し直していました。この方式では回路が複雑になり、コストの削減も難しくなってしまいます。
そこでu-bloxは、GNSS受信モジュールであるZED-F9Pに、SSRからOSRに変換するアルゴリズムを実装することで、NEO-D9CとZED-F9Pを直結させ、NEO-D9CでデコードしたCLASの補正データをZED-F9Pに直接送れる仕組みにしたのです。

従来の仕組み

従来の仕組み

NEO-D9CとZED-F9Pの組み合わせ

NEO-D9CとZED-F9Pの組み合わせ

「NEO-D9CとZED-F9Pを直結することで、従来よりも大幅に小型化かつ低コスト化でき、NEO-D9Cの評価用ボード(C101-D9C)とZED-F9Pの評価用ボード(C099-F9P)、L1/L2/L6対応アンテナを含む評価用セットが約5万円という低価格を実現できました。これにより、CLASの普及にもつながると考えています」(仲氏)

評価用セット

評価用セット

みちびき2機のL6信号を同時にデコード可能

NEO-D9Cのもう一つの特徴は、2機のみちびき衛星から発信されたL6信号を同時にデコードできる点です。L6信号をデコードする回路を2系統搭載することで、一方の受信状況が悪い場合は、もう片方の衛星からデコードした信号に切り替えて使用する仕組みになっています。
「CLASの補正信号は携帯電話などの地上回線ではなく、測位衛星から受信して取得するため、ロバスト性(外的要因に対する強さ)を高める目的でこの機能を搭載しました」(仲氏)

D9C受信機は、L2帯域(L2CM / L2CL)で最大6つのQZSS衛星の追跡とデコードをサポートします。同時に最大2つのL6チャネルを自動的に選択し、高精度測位を継続して使えるように工夫しています。
「もはやCLASは実験段階ではなく、より実用的に使うためにこうした機能が必要と考えたのです」(仲氏)

今後はL1C/B信号への対応にも取り組む

u-bloxは、GNSSチップ及びモジュール、セルラーモジュール、ワイヤレス通信用モジュールなどを提供するグローバルメーカーで、1997年にスイスのチューリッヒで設立され、2007年にスイスの証券取引所に上場しました。自動車向け製品や産業機器、民生機器など幅広い市場をターゲットにしています。
「NEO-D9Cの開発は、2016年9月に三菱電機株式会社様とu-bloxがCLAS対応の自動車向け受信チップの共同開発で提携した時から始まり、5年かけてようやく開発に成功できました。日本市場向けに特化したモジュールとして、今後は販売に力を入れていきます」(仲氏)

u-bloxは現在、高精度測位を実現する補強信号を、通信衛星インマルサットからLバンドを使って配信する「PointPerfect」サービスをグローバル市場向けに展開しています。PointPerfectに対応するデコード用モジュール「NEO-D9S」をZED-F9Pに組み合わせることで、PointPerfectの利用が可能となります。

先月の製品発表以来、NEO-D9Cには多くの問い合わせが寄せられ、同社は販売に期待を寄せています。みちびき対応については、初号機後継機や今後打ち上げられる5~7号機で使用されるL1C/B信号への対応に取り組むなど、同社は今後もみちびき対応製品の拡充を図っていく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

画像及び図版提供:ユーブロックスジャパン株式会社

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