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SeptentrioがCLAS対応受信モジュールとOEMボードを発売

2022年01月31日

GNSS受信機の設計・製造・販売を行うセプテントリオ(Septentrio N.V.)は、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応した小型GNSS受信モジュール「mosaic-CLAS」とOEMボード「AsteRx-m3 CLAS」の提供を2022年2月18日から開始します。この2製品はいずれもCLASを実現するL6信号を受信でき、デコードしてセンチメータ級の高精度測位を行うことができます。みちびきのほか、GPSやGLONASS、Galileo、BeiDouなどさまざまな衛星測位システムにも対応したマルチバンド製品です。販売開始を前に、同社の日本法人でカントリーマネージャーを務めるヤン・デターク(Jan De Turck)氏と、西日本地区のセールスマネージャーである井上雅永氏に話を聞きました。

デターク氏の写真

ヤン・デターク氏

井上氏の写真

井上氏

コンパクトサイズにCLASの測位機能を搭載

2019年にmosaic-CLASの前モデル「mosaic-x5」を発売した際、デターク氏はmosaicにCLASの補強機能を搭載してパッケージ化し、単独でセンチメータ級測位を行える製品を開発すると表明していましたが、いよいよ今回それが実現しました。
mosaic-CLASが縦31mm×横31mm、AsteRx-m3 CLASが縦47.5mm×横70mmと、2製品とも小型のコンパクトサイズで、ベースバンド信号とRF(高周波)信号の処理回路をそれぞれASIC(特定用途に向けた集積回路)化した共通のチップを搭載しています。mosaic-CLASに搭載されるASICが1系統なのに対し、AsteRx-m3 CLASは2系統のASICを搭載し、アンテナも2系統接続できます。

製品画像

mosaic-CLAS(左)とAsteRx-m3 CLAS(右)(画像提供:Septentrio N.V.)

同社は株式会社コアとの協業により、CLASの補強機能を搭載したOEMボード「AsteRx4」やGNSS受信機「AsteRx-U」をすでに発売していますが、今回の製品はそれを更に改良したものです。
「みちびきからL6信号を取得する際、従来は最初に受信した衛星の信号を継続受信していましたが、今回は仰角の変化に応じて衛星を自動的に切り替えられる仕様とし、常に良好な受信状態を維持できるようになりました」(デターク氏)

加えて、従来はみちびきから受信する信号にはL1とL2を使わず、L6信号のみを使用し、L1・L2は他衛星の信号を受信していましたが、今回はみちびきの受信にもL6だけでなくL1とL2を使えるようになりました。
「2020年11月にCLASの補強対象衛星数が11機から17機へ拡大し、以後は17機の衛星をフルに使って高精度測位を行えるようになりました。それにより測位精度は従来比でほぼ倍になり、さまざまな環境においてFIX率も向上しました」(デターク氏)

2つのアンテナで方位や傾きを検知

接続可能なアンテナ数は、mosaic-CLASの1台に対し、AsteRx-m3 CLASは2台接続できます。デュアルアンテナにはさまざまな用途があり、船舶やロボット、ドローン、自動車などで前後にアンテナを配置すれば、各アンテナの位置情報から方位やピッチ(縦方向の傾き)が分かり、左右に配置すればロール(横方向の傾き)を検知できます。
「1台のアンテナでも移動時の位置から方位を演算したり、磁気コンパスを使用したりすることはできますが、2台使うことでより高い精度を実現できます」(デターク氏)

アンテナ2台による方位の精度はサブデグリー(1度未満)を実現しており、たとえば建設機械のクレーンにアンテナを搭載し、位置情報だけでなくクレーンの方向を検知する使い方なども可能です。他にはアンチジャミングと電波障害監視システム「AIM+」、電離層攪乱やマルチパスの低減機能も搭載しています。また、電力消費をmosaic-CLASは最大1.1W、AsteRx-m3 CLASは最大1.6Wに抑えて、低消費電力も実現しました。

CLAS対応を図りつつ、低価格を実現

販売開始に向けて研究者向けに行った講演では、特にmosaic-CLASに大きな反響があったそうです。
「小さなパッケージでCLAS測位まで行える点に大きな魅力を感じてもらえました。携帯電話会社などが提供する高精度測位サービスに比べ、CLASはランニングコストがかかりません。そうした利点をアピールしながらセールスを広げていきたいと思います」(井上氏)

今回発売する2製品は、価格面でもコストパフォーマンスが向上しており、AsteRx-m3 CLASは従来品のおよそ半額、デコード機能を追加したmosaic-CLASも従来品と同価格に据え置きました。デターク氏によると、2つの製品の選択は「デュアルアンテナが必要かどうかで決めてほしい」といいます。どちらを選ぶかを迷った場合は、まずはAsteRx-m3 CLASで製品のプロトタイプを開発し、その評価でアンテナ2台は必要ないと確認できたら、mosaic-CLASに切り替えればよいと考えてほしいそうです。
「GNSSを使った製品開発を考えている方が必ずしもGNSSのエキスパートとは限らず、CLASのメリットや制限を十分に把握できている訳ではありません。まずはこれらの製品を使って動くものを作り、検証してみることをお勧めします」(デターク氏)

同社は、この製品の販売先として農機や建機などを想定しているほか、今後需要の伸びが期待できる分野として農薬散布用ドローンなどにも注目しています。
「CLASは、RTK(リアルタイムキネマティック)のように基準局から補正データを受信する必要がありません。受信機が衛星からの補正データを受信するだけで完結するため、シンプルでスケールアップしやすいことが魅力だと思います。今後のサービス拡充に期待しています」(デターク氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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