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「人とくるまのテクノロジー展」で衛星測位の学術講演会

2016年05月31日

2016年5月25~27日にかけて横浜市で開催された「人とくるまのテクノロジー展2016」に併せて、主催団体である公益社団法人自動車技術会の2016年春季大会・学術講演会が行われました。

会場となった横浜みなとみらい21

講演会は機械系、材料系、制御系など96セッションで445講演に上る大規模なものですが、衛星測位に関しては「ITS ─ 安全・安心・環境・省エネルギ- I ─」に関する1セッションが割り当てられ、以下の4つの講演が行われました。

1)MADOCAの研究開発と自動車利用分野への応用についてMADOCA-PPP/PPP-ARの実証実験結果報告(宇宙航空研究開発機構(JAXA)小暮 聡氏)
2)MADOCAを使った衛星測位(2周波PPP-DR)の位置精度検証2周波PPP-DRの実証実験結果報告(株式会社デンソー 河合茂樹氏)
3)MADOCAを使った1周波PPP-ARの位置精度検証(株式会社本田技術研究所 長尾 朗氏)
4)精密測位とデッドレコニング機能付き1周波GNSS受信機の組み合わせによる測位精度および測位率の改善(古野電気株式会社 高山洋史氏)

講演者画像

講演を行った4氏。左から小暮氏、河合氏、長尾氏、高山氏

JAXA小暮氏:MADOCAを使ったPPPの実証実験

JAXAの小暮氏は、GNSSの軌道・時刻を高精度に推定するMADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis、複数GNSS対応の精密軌道クロック推定ソフトウェア)の研究開発についての概要を説明し、MADOCA暦を使った単独搬送波位相測位(PPP、Precise Point Positioning)による、つくば市(茨城県)や和光市(埼玉県)、北米ロサンゼルス市近郊で実施した実証実験について紹介し、今後の改良や改善の目標を示しました。

デンソー河合氏:2周波測位とDRを組み合わせた実験

デンソーの河合氏は、2周波測位とデッドレコニング(自律航法、Dead Reckoning=DR)技術を組み合わせて行った実証実験の結果を紹介しました。陸橋や高架下などを通過する際、測位衛星からの電波状態が悪化した場合にPPPからDRに切り替えて測位を継続し、電波状態が改善したところでDRによる座標を既知点として再びPPPに戻すという処理を行うことで、測位精度の改善効果を確認できたとしています。

本田技研・長尾氏:基地局を使わず搬送波測位を実験

本田技研の長尾氏は、基地局を用いない搬送波測位についての実証実験の概要と結果を紹介しました。基地局と移動局を携帯電話ネットワークなどで結ぶRTK法(Realtime Kinematic、固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する方法)では通信状態の悪化が精度低下につながるため、送信するデータ量が大幅に小さくなるPPP-AR(Precise Point Positioning with Ambiguity Resolution、搬送波測位における波数解析)が有効だとして、エンジン始動時及び30秒ごとにローカル補正情報を車両に伝え、収束時間を短縮させる手法について紹介しました。また、測量用の高性能アンテナと、安価な車両用のGNSSアンテナについて実測で得られた性能差などを示しました。

古野電気・高山氏:DR機能とPPPを合わせた受信機を製作

古野電気の高山氏は、汎用品の安価なDR機能付きGPS受信機と、PPPとを組み合わせた、手のひらサイズのプロトタイプ受信機を製作して実証実験を実施し、PPPのみでの測位に比べ、信頼域1.5mで10ポイント程度の精度改善が見られたと報告しました。

各講演の後には、座長を務める産業技術総合研究所の加藤 晋氏や、会場の専門家(完成車メーカー、部品・デバイスメーカーなどの技術関係者)からの質問が寄せられ、実験手順の詳細や開発目標などについて、活発な討議が交わされました。

会場となったパシフィコ横浜

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