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測位航法学会がGPS/GNSSシンポジウム2023を開催

2023年12月04日

一般社団法人測位航法学会は2023年10月25~27日の3日間、東京海洋大学の越中島会館(東京・江東区)で「GPS/GNSSシンポジウム2023」(共催・公益社団法人日本航海学会GPS/GNSS研究会)を開催しました。初日の10月25日には、内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の岸本統久企画官が登壇して「準天頂衛星システムの最新状況」をテーマに講演を行いました。

みちびき5~7号機の軌道や信号などを解説

講演写真

岸本企画官

岸本企画官は、現在4機体制のみちびきが提供するサービスの概要を説明した上で、みちびきのSIS-URE(Signal-in-Space User Range Error:衛星の軌道・時刻に起因するユーザー視線方向の誤差)の精度評価の結果を紹介しました。2022年8月から2023年7月末まで1年間のSIS-URE精度は、平均ほぼ0.7~0.8m(95%)という結果で良い精度を継続的に提供できており、今後も引き続き性能向上を図っていく方針と述べました。

続いて、2024年頃にサービス開始予定の7機体制について開発状況を説明しました。みちびき5~7号機の開発は順調に進行中で、衛星システムでは5号機と6号機の振動試験などの衛星システム試験を進めており、7号機も年内にペイロードを衛星バスシステムに引き渡す予定です。一方、2021年10月に打ち上げた初号機後継機は2022年3月にサービスを開始しており、以後、退役した初号機は待機状態となり、2023年9月15日に軌道離脱と停波運用を完了しました。

また、管制局は、7機システムを運用可能な主管制局が2023年8月末に完成し、奄美大島の予備局1局を除いて追跡管制局もすでに完成していると説明しました。その上で地上システムについて、主管制局が常陸太田と神戸の2カ所で、予備局1局を含めた計10局の追跡管制局がみちびき追尾の観点から日本の南方域を中心に配置され、他に国内外に30局以上の監視局が設置されるとしました。

みちびき5~7号機の軌道は、1)1機以上の衛星が高仰角に可視となること、2)4機以上の衛星が長時間可視となること、3)良好な幾何学的配置(DOP)となることの3つを主目的として、5号機を準天頂衛星軌道、6号機を東経90度の静止軌道、7号機を準静止軌道に配置する計画であるとしました。

会場全景

シンポジウム会場

岸本企画官は、今後打ち上げられるみちびき5~7号機について、L1帯の信号がL1C/AからL1C/Bへと仕様変更される点も解説しました。既存の衛星は2~4号機がL1C/Aのままで、初号機後継機は5号機のサービス開始後にL1C/AからL1C/Bに切り替えられます。また、全衛星がL1C、L5を配信する計画であるとしました。L6帯におけるL6D信号においては、5号機がCLAS(センチメータ級測位補強サービス)の信号を配信し、6号機と7号機からMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)の電離層補正情報を配信する予定だと説明しました。

また、7機体制が完成するとみちびきだけで持続測位が可能になると述べ、みちびきの今後の追加サービスは、1)2022年9月から試行サービス中のMADOCA-PPPについて、2024年4月から実運用サービスを開始、2)信号認証サービス(QZNMA)、及び災危通報におけるJアラート/Lアラートに対応した機能拡張を2024年4月からサービス開始、の2件を予定していると紹介しました。

最後に、今年6月に閣議決定された新たな宇宙基本計画には、測位サービスの安定供給を目的としたバックアップ機能の強化や利用可能領域の拡大のため、みちびきの7機体制から11機体制に向けた検討・開発に着手することが盛り込まれているとして、11機体制の軌道配置についてサービス範囲や測位精度を考慮しながら検討中であることも明らかにしました。

GNSS関連製品の企業展示

小峰無線電機の展示

小峰無線電機の展示

シンポジウム会場ではGNSS関連製品の企業展示も行われ、みちびき関連の製品として、小峰無線電機株式会社がみちびき対応のマルチGNSSアンテナを展示しました。同社は発売予定の新製品として、みちびきのL6信号に対応してCLAS対応受信チップを内蔵する「RJシリーズ」を展示しました。同シリーズは、ユーブロックス製の受信チップを搭載する「RJFD9-L6」と、セプテントリオ製の受信チップを搭載する「RJCLAS-L6」の2製品を揃えています。

RJシリーズ

CLAS対応受信機を内蔵したRJシリーズ

このほか、会場ではポスターセッションも行われ、「CLASを利用した水泳分析」や「CLASのマルチコプター適用と精度検証」などCLAS関連の研究が発表されました。

CLASを利用した水泳分析

ポスターセッション

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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