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GESTISS、宇宙利用の可能性を探る入門セミナーを開催

2018年06月18日

慶應義塾大学、東京大学、東京海洋大学、青山学院大学、事業構想大学院大学の5校で構成されるコンソーシアム「GESTISS」(Geospatial and Space Technology Consortium for Innovative Social Services=革新的ソーシャルサービスのための地理空間・宇宙技術コンソーシアム)は6月8日、社会課題解決型宇宙人材育成プログラム「G-SPASE」の一環として、講演及びハンズオン(体験学習)によるセミナー「宇宙ソリューションデザイン入門コース1:Power of Space ─ 宇宙利用の可能性を探る ─」を、慶應義塾大学日吉キャンパス(横浜市)で開催しました。

セミナー会場

宇宙技術を活用して社会課題を解決できる人材を育成

G-SPASEは、宇宙分野の社会課題解決に興味のある人を対象として、“宇宙の力”をキーワードに議論を行う研究講習会で、みちびきやGPSなどの測位衛星や地球観測衛星、通信衛星などの宇宙インフラと地上のインフラを統合して、社会課題の解決に取り組むことのできる人材育成と国内外でのネットワークづくり、事業運営を持続的・発展的に行う目的で実施されています。
開催に当たって、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)の神武直彦教授が、イントロダクションとして、セミナーの狙いと概要を説明しました。

慶應大の神武教授

慶應大の神武教授

このセミナーは、G-SPASEがこれまで行ってきた大学院生向けの人材育成プログラムに続くネクスト・アクションであり、宇宙ソリューションデザイン入門コースでは、宇宙に興味のある人が、社会問題解決のための宇宙インフラ活用について、なぜ(Why)、何を(What)、どうやって(How)取り組むかを理解し、考察し、行動できる人材を育成することを目指しています。
コースの初開催となる今回は、学生から社会人まで幅広い年齢層の参加者が70名ほど集まりました。また、文化系と理科系の学生が一緒になって日本の宇宙開発を考える「宇宙開発フォーラム実行委員会」(SDF=SPACE Development Forum)もこのセミナーに賛同しており、所属する学生らが運営に参加しました。
イントロダクションではこのほか、参加者同士の自己紹介の後で、神武教授が、人工衛星や宇宙ステーション、ロケットなどの輸送システム、地上管制局/追跡局などで構成される宇宙システムの概要を説明しました。また、宇宙技術の利活用の事例として、マレーシアのパームヤシ栽培で植林する位置を決めるのに衛星測位を活用したり、スポーツ選手の位置情報を衛星測位で記録したりする取り組みも紹介しました。

衛星測位のセキュリティ面の課題について解説

東京海洋大の久保准教授

東京海洋大の久保准教授

続いて、G-SPASEの参加メンバーによる講演やハンズオンが行われました、衛星測位の関連では、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科の久保信明准教授が、衛星測位の歴史や原理について解説しました。現在は米国のGPSに加えて、ロシアのGLONASSや欧州のガリレオ(Galileo)、中国のBeiDouなどが打ち上げられるマルチGNSSの時代となっており、単独測位やRTK-GNSSなど、測位方式によっても精度に差が発生すると説明しました。
さらに、GPS信号の弱点や、GPSハッキングの事例など、セキュリティ面での課題を取り上げた上で、東京海洋大学の学生による、GPSの電波を偽造するシミュレーション装置を使ったスプーフィング(なりすまし)実験の結果報告も行いました。実験の結果、スマートフォンや低コスト受信機に搭載されているGNSSモジュールはスプーフィング攻撃を受けやすいが、高価な測量級受信機では簡単には攻撃を受けにくいことが確認できました。ただし、シミュレータ等で受信機を評価する方も多いため、そのバランスが難しいのでは、との感想を述べていました。

東京大の柴崎教授

東京大の柴崎教授

青学大の古橋教授

青学大の古橋教授

このほか、東京大学空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授による、宇宙技術及び空間情報技術を解説する講演や、青山学院大学地球社会共生学部の古橋大地教授による、Google Earth上で衛星データを見る方法を解説するハンズオン「Google Earth Engineチュートリアル」なども行われました。

事業構想大学院大の小塩客員教授

事業構想大学院大の小塩客員教授

締めくくりとして、事業構想大学院大学事業構想研究科の小塩篤史客員教授が、セミナーの意義と今後の予定を説明しました。次回は、8月3日(金)に入門コースを開催する予定です。また今後、「宇宙インフラに詳しい人が社会課題を把握して、解決策を実現する」、又は「社会課題を理解している人が宇宙インフラを活用して解決策を実現する」ことを目指す「宇宙ソリューションデザイン専門コース」の実施も予定しています。

(左から)久保准教授、古橋教授、柴崎教授、神武教授、小塩客員教授

(左から)久保准教授、古橋教授、柴崎教授、神武教授、小塩客員教授

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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