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うるう秒で1秒長かった2017年の元日

2017年01月10日

元日の朝、「8時59分60秒」が59秒と00秒の間に挿入されました。前回2015年7月1日以来、1年半ぶりの「うるう秒」の処理でした。

「8時59分60秒」が表示された時計

「8時59分60秒」が表示された時計(画像提供:国立研究開発法人情報通信研究機構)

地球の自転速度は、実はゆらいでいます。「うるう秒」は、地球の自転・公転を基準にした協定世界時(UTC=Coordinated Universal Time)と、原子時計が刻む時刻とのズレを小さくするために実施されるもので、1972年以来、全て1秒加える処理で計27回行われてきました。この調整は、7月1日か1月1日のどちらかの協定世界時の午前0時に世界一斉に実施されます。日本標準時(JST=Japan Standard Time)はUTC+9時間なので、元日の午前9時ちょうどに調整が行われたわけです。

測位衛星が利用する「GPS時」では、時刻は変えずに、通算のうるう秒調整分が何秒分であるかを航法メッセージに載せて放送する形をとっています。GPS時が始まった1980年1月6日以降にうるう秒の調整は18回行われているため、今回の調整でGPS時はUTCより18秒進むことになり、「GPS-UTC=+18s(GPS時はUTCより18秒進んでいます)」との記載に変更されました。

地球の自転・公転の正確な把握が必要

うるう秒が必要かどうか、必要ならばいつ処理すべきかを判断するには、地球の自転・公転速度を正確に把握しなければなりません。そのためには地球の外に基準が必要です。外と言っても月(約38万km)や太陽(約1.5億km)は近すぎて目印になりません。もっと遠くの星が出す電波を利用して、地球の自転や公転の速度がどの程度ゆらいでいるかを精密に測定する必要があります。

石岡測地観測局

石岡測地観測局(画像提供:国土地理院)

その役割を担う、世界にいくつかある拠点の一つが、国土地理院の石岡測地観測局(茨城・石岡市、2016年5月運用開始)です。昨年暮れまで運用されていた国土地理院本院(同・つくば市)のアンテナに代わり「VLBI観測」を行う最新鋭設備です。VLBIとは、数千km隔てた2つのアンテナで遠方の天体からの電波を同時に受信することで、アンテナ間の距離をミリメートルの精度で導きだす手法です。これによって「地球上における日本の正確な位置」を1mmの精度で定め、測量の基盤とするのが石岡測地観測局の役割です。

そしてVLBI観測では、アンテナ間の距離と同時に、地球の自転速度も正確に計測できます。こうした測定結果をもとに、パリにあるIERS(=International Earth Rotation and Reference Systems Service、国際地球回転・基準系事業)が「うるう秒」の調整を決定します。日本ではNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が実施する体制です。

オーストラリアでは、カンガルー1匹分のズレ

一方、オーストラリアでは、同じ今年1月1日に、大陸の地図上の位置を赤道方向(北方向)に約1.8m動かす処理が行われました。

VLBIや衛星測位を使うことで、大陸の位置は以前よりも正確に把握できるようになりました。これまでオーストラリアが使ってきた位置の基準は1994年に定められたものでしたが、大陸そのものがプレート運動に伴い、北方向に毎年約7cm移動しているため、現在では衛星測位で示される位置と地図との間に約1.5mのズレが生じているといいます。このニュースを報じた英国のBBC(=British Broadcasting Corporation、英国放送協会)は、このズレを「カンガルー1匹分」とユーモラスに表現しています。

なお、実際のズレ(1.5m)より今回の調整値(1.8m)のほうが大きいのは、2020年頃にほぼ正確になるよう、あらかじめ多めに動かしたということのようです。

参照サイト

※ヘッダは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のウェブサイトより。

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