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WTP2018で専門家による講演会と衛星測位の紹介展示

2018年05月31日

無線通信技術をテーマとした国内最大級の専門イベント「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2018」(主催・情報通信研究機構/YRP研究開発推進協会/YRPアカデミア交流ネットワーク)が5月23~25日の3日間、東京ビッグサイト(東京・有明)で開催されました。ここでは初日のセミナー講演会の模様と、衛星測位関係の展示を紹介します。

セミナー会場

セミナー会場

GPS/GNSS測位の仕組みと将来展望

── 東京海洋大・安田名誉教授

東京海洋大学の安田氏

測位航法学会の会長も務める安田明生氏(東京海洋大学 名誉教授)は、測位衛星の概要や歴史、衛星測位の原理などを解説すると共に、単独測位やDGPS、RTK-GPSなどの測位方式と、各方式の誤差の違いについて説明しました。また、GLONASSやガリレオ、BeiDou、IRNSS(NAVIC)など世界各国の衛星測位システムの動向に加え、高仰角で衛星電波を捉えられるみちびきの特長なども紹介しました。
昨年、衛星3機が打ち上げられたみちびきについては、サブメータ級測位補強サービスや災害・危機管理通報サービスを実現する「L1S」、センチメータ級測位補強サービスを実現する「L6」、測位技術実証サービスを利用できる「L5S」など、利用可能な測位信号ごとにサービスの概要を説明しました。また、各国の衛星測位システムがこのように拡充していくと、2020年には世界の中でアジア地域がもっとも測位衛星を多く使える地域になるとの予測を示しました。

センチメータ級補正データによる実験結果

── 東京海洋大 久保准教授

東京海洋大学の久保氏

さまざまな分野で利活用が進む衛星測位ですが、特に自動運転支援や農業、建築土木の分野ではセンチメータ級の高精度な位置情報のニーズが高まっています。東京海洋大学の久保信明氏(准教授)は、こうした背景から、マゼランシステムズジャパンの受信機を使用したPPP静止実験と、三菱電機の受信機AQLOCを使ったセンチメータ級測位補強サービスの実験結果を報告しました。
AQLOCの実験では、静止状態と、高速道路における移動体(自動車)での測位を行ったところ、静止状態では水平方向の絶対誤差は数cm、高度方向も10cm以内となり、移動体での測位でもレーン判別に必要な性能が出ていることが確認できたとしました。また、船舶では、東京湾内においても数cmと良好な結果が得られたといいます。このほか、サブメータ級測位補強サービスの実験も行い、GPS単独測位に比べて、特に高度方向の誤差の改善を確認したとの結果も示しました。
久保氏は最後に「今後、長期及び日本全国での精度検証の結果が待たれます」と付加して、講演を終えました。

GPS/GNSS測位による測位利用可能な場所の違い

── 測位衛星技術 大薗主任

測位衛星技術の大薗氏

GPSだけでなく、みちびきやGLONASS、ガリレオ、BeiDouなどさまざまな衛星測位システムが利用可能となった今、都市部や山間部など上空視界が限られた環境でも多くの時間帯で測位が可能となっています。測位衛星技術株式会社の大薗伸吾氏(技術本部 営業技術部 主任)は、同社が行った静止状態におけるGNSSの後処理キネマティック測位の評価と、移動体におけるGNSSによるRTK測位の評価について解説しました。
評価では、GPSのみを使った場合と、複数のGNSSを組み合わせた場合とで精度を比較し、マルチGNSSによって高精度測位を行える場所が増加したことを確認したといいます。さらに、都市部ではGNSSのみで連続して高精度測位を行うことは難しいものの、IMU(慣性計測装置)と組み合わせることで連続高精度測位が実現できたと発表しました。

展示ブースでは、内閣府のビデオやパネルも展示

展示会会場

WTP2018の会場では、位置情報サービスをテーマとした「ロケーションサービスパビリオン」が設けられて、衛星測位関連機器や、位置情報を活用したソリューションなどの展示が行われました。
一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)のブースでは、内閣府宇宙開発戦略推進事務局によるみちびきのビデオ上映が行われ、衛星打ち上げや実証実験の模様などが紹介されました。また、みちびきの概要や優位性、今後の配備計画などについて説明したパネルも展示されました。

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の展示

ブース内には、みちびき利用促進の取り組みや、みちびき対応アンテナおよび受信機製品を紹介するコーナーも設けられ、株式会社アムテックスや株式会社コア、小峰無線電機株式会社、日本無線株式会社、三菱電機株式会社、古野電気株式会社、マゼランシステムズジャパン株式会社の製品が並びました。さらに、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の提供による、みちびきの8の字軌道が分かる模型も展示されました。

製品が展示されたブース内

製品が展示されたブース内

みちびき紹介ビデオの上映

みちびき紹介ビデオの上映

L6デコーダ(コア)

L6デコーダ(コア)

QZシリーズ(小峰無線)

QZシリーズ(小峰無線)

マルチGNSS受信機(マゼランシステムズ)

マルチGNSS受信機(マゼランシステムズ)

地盤変位観測システム(古野電気)

地盤変位観測システム(古野電気)

衛星軌道模型(NICT)

衛星軌道模型(NICT)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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