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WTP2018で内閣府・小暮参事官、東大・中須賀教授が講演

2018年06月04日

5月25日、東京ビッグサイト(東京・有明)で開催された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2018」(主催・情報通信研究機構/YRP研究開発推進協会/YRPアカデミア交流ネットワーク)3日目のセミナー会場では、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の小暮聡参事官と、東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一教授が講演を行いました。その概要をお伝えします。

セミナー会場

セミナー会場

「準天頂衛星システムとその利活用について」

── 内閣府 小暮参事官

内閣府の小暮参事官

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の小暮聡参事官(準天頂衛星システム戦略室 室長代理)は、みちびきの概要、及び現状と今後の予定、そしてさまざまな分野での利活用の進捗状況について講演しました。みちびきは2017年に2、3、4号機の3機が打ち上げられ、初号機を含めた4機体制でのサービスを11月1日に提供開始する予定で準備を進めています。また、みちびきのサブメータ級測位補強サービスやセンチメータ級測位補強サービスに対応した受信機の開発も複数のメーカーで進行中で、2018年以降の販売が順次予定されています。

こうした状況の中、さまざまな産業分野において、みちびきの各種サービスを活用した実証実験や実証事業が実施されています。小暮参事官はその活用事例として、農機や自動車、除雪車などの自動走行、高精度カーナビゲーション、渋滞緩和、地盤や構造物の変位計測・監視サービス、船舶の自動離着桟システム、ドローン制御、歩行補助システム、バスロケーションシステム、スポーツのトラッキング解析、衛星航法補強システム(SBAS)などの可能性について紹介しました。
いくつかの応用事例についてはその後のセッションで、一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)松岡繁氏(国内事業担当部長)、ソフトバンク株式会社の永瀬淳氏(ICTI戦略統括部ICTI戦略室 シニアテクニカルマネージャー)、株式会社シード・プランニングの唐弓昇平氏(エレクトロニクスICT部門 主任研究員)らからも紹介されました。

さらに、将来のみちびき7機体制に向けた性能向上の検討にも言及し、衛星測位の基本性能の向上や、測位補強サービスのアジア太平洋地域へのサービスエリア拡張、なりすまし(スプーフィング)を信号認証によって防止する機能の搭載など、さまざまな検討を行っていると語りました。

「準天頂衛星による新しい宇宙開発利用の夜明け」

── 東京大学 中須賀教授

東京大学の中須賀教授

ほどよし超小型衛星プロジェクトのプロジェクトリーダーであり、内閣府の宇宙政策委員会の委員を務める東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一教授は、みちびきの利活用事例として、農業や自動運転、ドローン、測量、建機管理・制御、交通管理、観光サービス、不動産管理などを挙げた上で、防災・減災への利活用についても紹介しました。

みちびきは、測位サービスのほかにメッセージ機能も搭載しており、防災情報をみちびきから送信する「災害・危機管理通報サービス」や、安否登録情報を専用端末を使って衛星に送信する「衛星安否確認サービス」などの提供を予定しています。また、みちびきの高精度測位によって、津波による海面の上下運動や地面のスライドを把握するといった活用が可能となる点も示しました。

中須賀教授はまとめとして、位置計測はすべてのインフラの基盤であるとして、みちびきの重要性を語ると共に、衛星による災害監視や被災後の情報把握の重要性にも触れた上で、「準天頂衛星を始め、観測衛星や通信・放送衛星など、宇宙技術がわれわれの生活にどんどん入ってくる中で、宇宙を利用するアイデアをみなさんに期待したい」と話して、講演を締めくくりました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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