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コアがCLAS対応ドローンの目視外点検でウェビナー開催

2023年01月10日

株式会社コアは2022年12月15日、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)対応受信機を搭載する国産ドローンを活用して、立ち入りや目視が困難な場所での点検業務を行うなどの利活用事例を紹介するウェビナーを開催しました。同社スタッフのほか、外部講師として一般財団法人先端ロボティクス財団の野波健蔵理事長(千葉大学名誉教授、日本ドローンコンソーシアム会長)も参加しました。
この日のウェビナー構成に従い、1)コア・GNSSソリューションビジネスセンターの最上谷真仁氏によるChronoSkyを使った点検・監視サービスの紹介、2)先端ロボティクス財団の野波理事長によるCLAS測位対応ドローン東京湾縦断飛行の紹介、3)コア GNSSソリューションビジネスセンターの宮本翔氏によるCLASを活用した資材・安全管理ソリューションの紹介、の順に講演概要をお伝えします。

──コア・GNSSソリューションビジネスセンター 最上谷氏

顔写真

最上谷氏

最上谷氏は、CLAS対応国産ドローンのChronoSky PF2を活用したソリューション「Cohac∞ ChronoSky」について、ドローンとみちびき、AI(人工知能)を組み合わせて、作業現場への負荷が少ない測量や点検、データ解析の自動化・効率化を実現すると説明しました。例えば、CLASを活用することでモバイル通信の圏外でも高精度測位が利用可能となり、測量の際に正確な水平位置と標高を示す「標定点」を設置する必要がなくなり、ドローンが狭い場所でもピンポイントに離発着でき、また、高精度な3次元データを取得することも可能となります。
ChronoSkyは、標定点を使わずに広域ドローン測量を実現する「広域測量」や、測量の結果から体積量や体積の変化量を計測する「体積計測」、ドローンで精密な点検・監視を行う「点検・監視」などのサービスを提供しています。最上谷氏はその中の「点検・監視サービス」にテーマを絞って、砂防ダムを事例に解説しました。

ChronoSky PF2

CLAS対応ドローン「ChronoSky PF2」(提供:株式会社コア)

近年は山中の架空送電線や砂防ダム、河道閉塞など、人が立ち入るのが困難な場所の点検にドローンを活用したいというニーズが増えています。一方で、そうした場所はモバイル通信の圏外が多く、インターネットが使えないためRTK(リアルタイムキネマティック)測位による精密な飛行が難しいという課題があります。最上谷氏は、砂防ダム点検の業務フローを例に、従来の点検方法と「目視外点検見える化ソリューション」を使った方法を比較して説明しました。

砂防ダム点検の業務フロー

砂防ダム点検の業務フロー(提供:株式会社コア)

砂防ダムの点検では、従来は事前に現場を訪れて点検対象となるダムの概観を撮影した上で、損傷箇所を計測して報告書を作成していました。それに対してドローンを使う方法では、まず予備飛行で複数枚の写真を撮影し、3Dモデルを作成するSfM(Structure from Motion)処理ソフトウェアを使って現場で3D地図を作成します。それをもとに3D飛行計画ソフトウェアを使って飛行ルートを簡単に作成でき、作業効率が大幅に向上して1日に2基以上の点検が可能となるといいます。

3D地図作成

現場でリアルタイムに3D地図を作成して飛行ルートを設定(提供:株式会社コア)

この方法では、点検当日の状況をそのまま3Dモデル化できるので、従来は特定の場所から撮影した写真のみで検証していたのに対し、いつでも過去のデータを多様な角度から見返すことができます。また、損傷箇所が見つかった時も、従来は人が危険な場所に入って計測していましたが、砂防ダム点検ソフトウェアを使えば、3Dデータをもとに長さなどを計測でき、安全かつ簡単な作業に置き換えられます。

3次元点検

後から3次元データを見返して点検可能(提供:株式会社コア)

さらに、損傷の進行具合や新たな損傷の有無など、前回点検時からの経年的な変化を確認する“4次元点検”も可能となります。高精度測位で精密な飛行を行うドローンを使うため、毎回同じ場所から同じ角度で撮影でき、地図上から場所を選ぶだけで撮影写真を参照でき、写真を時系列に管理して損傷箇所をマーキングすれば、効率的に確認を行えます。

4次元点検

同じ箇所で異なる時期を比較すれば経年変化を検出可能(提供:株式会社コア)

なお、ドローンはCLAS対応の「ChronoSky PF2」以外にも、コアが開発中のCLASを活用したRTK簡易基準局とRTK対応ドローンを組み合わせて使うことも可能です。

── 先端ロボティクス財団 野波理事長

顔写真

野波理事長

野波氏が理事長を務める先端ロボティクス財団では、首都圏の横浜市と千葉市を結ぶ東京湾縦断飛行によるドローン物流の実現を目指しており、設定された飛行経路をドローンが逸脱しないようにするためにCLASによる高精度測位を活用しました。将来、多くのドローンが飛び交う際の衝突回避には高精度測位が必要不可欠であり、ニアミス回避と安全離隔距離確保のためにCLASが有効となります。野波氏は、効率的にドローン物流を行うには、複数機の編隊飛行やドローンステーションへの高精度着陸も必要であり、その実現にもCLASは有効だと説明しました。

先端ロボティクス財団は、ドローン物流を始めるに当たって、歯科技工物の輸送を計画しています。歯科技工物は高価であり、軽量であり、できるだけ早く輸送することを求められる製品として、ドローン物流のビジネスモデル構築に最適です。東京湾の上空を飛行するドローンであれば、プライバシーや騒音などの問題も発生しません。車両搬送では、湾岸道路を使うと距離60km、アクアラインを使うと80kmで、いずれも片道で約100分の時間がかかりますが、ドローンの東京湾縦断なら片道50kmを約30分で運べます。

歯科技工物を輸送

歯科技工物を輸送(提供:一般財団法人先端ロボティクス財団)

実験では、固定翼と回転翼を組み合わせたVTOLカイトプレーン「不死鳥」に、コアのCLAS対応受信機「Cohac∞ Ten」を搭載しました。野波氏はCohac∞ Tenの魅力として、測位レートが最大100Hzと高く、起動してから1分程度の早い時間で測位可能となることなどを挙げ、「Tenは軽量コンパクトでありながら性能が良く、私どもは非常に評価しております」と語りました。

不死鳥

VTOLカイトプレーン「不死鳥」(提供:一般財団法人先端ロボティクス財団)

Cohac∞ Ten

CLAS測位とGNSS単独による測位結果を比べると、CLASではドローンを3分間静止させてもGNSS単独と比べてズレることが全くなく、移動軌跡や着陸ポイントで見てもGNSS単独に比べて誤差が大幅に少なくなりました。

静止時3分間の軌跡

CLASとGNSS単独の静止時3分間の軌跡比較(提供:一般財団法人先端ロボティクス財団)

一辺3mの四角形を移動

一辺3mの四角形移動でCLASとGNSS単独を比較(提供:一般財団法人先端ロボティクス財団)

東京湾縦断飛行は2023年のビジネス開始を予定しているため、千葉市内上空の物流実証実験などを継続して行い、今後は離島や山間部でのビジネス開始も検討する方針です。

ロードマップ

東京湾縦断飛行のロードマップ(提供:一般財団法人先端ロボティクス財団)

野波氏は、ドローンの自動飛行において現状ではナビゲーション(航法)とコントロール(制御)の機能しか実装されていないため、今後は飛行中の異常診断や衝突回避などを行うためのAI(人工知能)によるガイダンス(誘導)機能を搭載する必要があると考えています。高度な自律性を持つ“大脳型”のドローンへと進化することで、ドローン飛行が高密度化しても問題なく飛行できると考えています。

──コア・GNSSソリューションビジネスセンター 宮本氏

顔写真

宮本氏

コアの宮本氏は、CLAS対応受信機を活用した位置管理サービス「QzLocation」による資材管理や安全管理の方法を紹介しました。QzLocationを使えば、CLAS対応の受信機「Cohac∞ Ten」や、CLASとMADOCA-PPPに対応した受信機「Cohac∞ Ten+」を活用して、従来は管理が難しかった埋設物や埋め立て位置、資材などの把握・管理などを行えます。対象物の状態を写真で把握・管理できるほか、対象物のトレーサビリティも管理できます。CLAS対応受信機とタブレットを組み合わせることで位置情報を取得し、専用アプリで位置情報を管理し、クラウド上で管理・共有します。

資材管理事例

ストックヤードでの資材管理(提供:株式会社コア)

アプリでは、地図上で指定したストックヤードや積み下ろし許可・禁止エリアを視覚的に判断できます。これにより、資材積み下ろし場所のミスを低減させ、危険エリアへの侵入を防止したりすることができます。
また、スマートグラス(メガネ型のウェアラブルデバイス)にも対応しており、現実の風景に重ねてAR(拡張現実)による作業指示や埋設物の位置を表示できます。他に、禁止エリアへの接近・侵入時に警報システムと連動させられるほか、既存地図に位置を表示したり、ドローン撮影で作成したオリジナルの高精細地図と連携させたりすることも可能です。

埋設物管理事例

埋設物管理(提供:株式会社コア)

資材管理では、コンテナの位置管理やモータープールにおける車両の位置管理、雪で埋もれたメンテナンス用マンホールの位置特定、埋設された土管の管理などに活用できます。また、安全管理では、車両や作業員にGNSS端末を装着し、車両同士や車両と作業員の接近を検知して安全を確保するシステムなどに活用できます。作業員や管理者はクラウド経由で作業情報や異常などを共有できます。

安全管理事例

近接車両検知による安全管理(提供:株式会社コア)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※画像・図版提供:株式会社コア、一般財団法人先端ロボティクス財団

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