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日本航海学会講演会でGPS/GNSS研究会・航空宇宙研究会を開催

2026年07月06日

公益社団法人日本航海学会は2026年6月4・5日の2日間、東京海洋大学の越中島キャンパス(東京・江東区)で第154回(2026年度春季)講演会・研究会を開催しました。2日目の6月5日には同学会傘下のGPS/GNSS研究会・航空宇宙研究会による講演会が行われ、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の佐藤雄大企画官、日本電気株式会社の西川綾氏、三菱電機株式会社の早瀬夏子氏が登壇してみちびきをテーマに講演を行いました。

開会挨拶
GPS/GNSS研究会 坂井丈泰会長
GPS/GNSS研究会 坂井丈泰会長

講演会の冒頭、GPS/GNSS研究会の会長として挨拶に立った国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所の坂井丈泰氏(航法システム領域 工学博士)は、「みちびきは当初、通信とセットの衛星として構想されていましたが、2006年にナビゲーションに特化した衛星システムとなることが決まりました。2026年の今年は、それから20年後の節目の年に当たります。本日行われる3件の講演では、ぜひ活発なご議論をお願いしたい」と参加者に呼びかけました。

準天頂衛星システム「みちびき」の最新動向
内閣府 佐藤雄大企画官
内閣府 佐藤雄大企画官

内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の佐藤雄大企画官は、日本の宇宙政策の体制と、みちびきの概要や最新動向を解説しました。

講演スライド1-1

宇宙の開発利用に関して設定された4つの柱(目標と将来像)

日本の宇宙政策は、内閣総理大臣を本部長として、内閣官房長官や宇宙政策担当大臣をはじめとする全閣僚で構成される“宇宙開発戦略本部”が宇宙基本計画を策定して実施しています。宇宙開発利用に関して「宇宙安全保障の確保」「国土強靱化・地球規模の課題への対応」「新たな知と産業の創造」「宇宙活動を支える基盤強化」の4つの目標と将来像を設定し、計画を策定の上、宇宙産業への支援に取り組んでいます。佐藤企画官は、みちびきの整備・運用もこの宇宙基本計画に沿って進められていると説明しました。
また、測位衛星が天頂付近にあることのメリットを説明すると共に、CLAS(センチメータ級測位補強サービス)やMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)、災危通報(災害危機管理通報サービス)、信号認証サービスなど、みちびきが提供するサービスについても紹介しました。
みちびきのサービスは、受信機さえあればランニングコスト不要で高精度な位置情報が得られるため、受信機の小型軽量化・低価格化に伴い普及が進んでおり、みちびきを誰もが使える環境は概ね整ってきています。今後は、人や車の動きの定量化や防災システムの強靱化など、みちびきの“使いどころ”の周知を図ると共に、イベントや展示会への参加を促すことでよりユーザーの裾野を広げていく方針であると語りました。

講演スライド1-2

6機での運用期間における高精度測位の機能強化

講演スライド1-3

現在運用中の5機での安定した高精度測位サービスを変わりなく提供

最後に昨年12月のH3ロケット8号機打上げ失敗によりみちびき5号機が喪失したことを振り返り、今後の開発スケジュールに変化はあるものの、現行運用中の5機による安定した高精度測位サービスを今後も変わりなく提供し、引き続き既存のサービスの機能や信頼性・可用性の向上を図りながら7機体制の早期構築、及び11機体制の開発加速に尽力するとの展望を語り、講演を締めくくりました。

講演スライド1-4

11機体制への拡張

準天頂衛星みちびきの現在地 — 利活用事例と製品化の最前線
NEC 西川 綾氏
NEC 西川 綾氏

みちびきの運用を行うPFI事業の代表企業である日本電気株式会社(NEC)の西川綾氏(エアロスペース事業部門 スペース&インテリジェンスシステム統括部 第三宇宙システムグループ)が、みちびきの利活用推進の取り組み、及び利活用事例を紹介しました。西川氏はみちびきを活用した製品・サービスの実用化の推進や、啓発・認知向上などのプロモーション活動を担当しており、開発や事業化の支援を目的として実証事業の公募も行っています。公募実証の対象となる実用化のジャンルは、農業・林業や畜産、物流、防災・減災、ドローン、海洋、自動車・車載器、LBS(位置情報サービス)など多岐にわたります。

講演スライド2-1

実用化のジャンルは多岐にわたる

また、みちびきを利用した実証事業の事例として、ドローンによる肥料の精密散布(東光鉄工)や、SLASを活用した仮想柵用デバイス(滋賀県立大学)、林業植栽機械化のためのCLASを活用した自動走行実証(ビスペル)、CLASを活用した橋梁点検支援ロボット(ジビル調査設計)、MADOCA-PPP対応海象ブイを活用した海外向け漁業支援システム(日東製網)、MADOCA-PPPを活用したドローン船による気象観測(JAMSTEC)、SLAS対応ゴルフウォッチ(グリーンオン)、SLAS受信機を活用したごみ収集管理(ニュージャパンナレッジ)、災危通報を活用した津波バルーン(東北大学 災害科学国際研究所)、ロータリ除雪車の自動化(NEXCO東日本)、CLAS対応の長距離飛行マルチユースドローン(ACSL)、水道メーターの位置情報管理システム(KIS)などを紹介しました。

講演スライド2-2

SLASを活用した仮想柵用デバイス(滋賀県立大学)

講演スライド2-3

林業植栽機械化のためのCLASを活用した自動走行実証(ビスペル)

講演スライド2-4

MADOCA-PPPを活用したドローン船による気象観測(JAMSTEC)

西川氏は、みちびきを活用することで地理空間情報に新たな付加価値を与える取り組みが幅広い分野で広がっている現状を説明した上で、今後も利用拡大を推進していく方針を表明し、ぜひみちびきに注目してもらいたいと呼びかけました。

※過去に実施した実証事業は、下記ページで紹介しています。

準天頂衛星システムセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)の運用状況とサービスの高度化
三菱電機 早瀬夏子氏
三菱電機 早瀬夏子氏

三菱電機株式会社の宇宙総合システム部でCLAS利便性向上サブプロジェクトマネージャーを務める早瀬夏子氏(鎌倉製作所 宇宙総合システム部 準天頂衛星利用技術課)は、CLASの概要、運用・性能の状況、サービス高度化について以下のとおり説明しました。

講演スライド3-1

誤差要因を補正する補強情報を送信してセンチメータ級測位を可能とするサービス

CLASのサービスプロバイダーを担当する三菱電機は、CLASの運用状況の評価を6カ月単位で定期的に実施してウェブ上で公開しており、現時点でサービス仕様を大きく上回る高いアベイラビリティ(可用性)を実現しています。性能評価は全国72点の電子基準点において定常的に実施しており、ユーザーの受信機を模擬するツールキット「CLASLIB」を使って精度をモニタリングしています。日々の評価結果をもとに電子基準点の運用状況を勘案しながら、補強情報の生成に使用する電子基準点の追加やバックアップ点への切り替えなどを随時行うことでサービス性能を維持しています。

講演スライド3-2

CLAS精度評価結果の月次推移(移動体モード、全国72評価点での95%値)

2018~21年にはパラメータのチューニングや補強対象衛星数等の増加によりCLASの性能向上を図ると共に、2023年以降も測位側のパラメータチューニングによりTTFF(Time to First Fix:初期収束時間)を改善しました。一方、2022年以降は太陽活動の活発化に伴って電離圏の電子数が常時多く、電離層擾乱の影響を受けやすい状況が続いており、特に2024年9~11月は太陽活動による顕著な影響を受けて性能の低下が見られました。2025年以降は、2024年との比較においては太陽活動の影響は低減しましたが、現在も依然として太陽活動が活発な状況が続いています。

講演スライド3-3

補強対象衛星のスロット増加により高精度測位の安定化と可用性向上を促進

太陽活動の影響に加えて、CLASの補強対象となり得る測位衛星が今後増えると見込まれることから、CLASの補強対象衛星(誤差を補正できる衛星)を増加させることで、将来増える測位衛星を有効活用する取り組みも行っています。1機のみちびき衛星の信号に含められる情報の容量には限りがあるため、CLASの補強情報を2つのパターンに分けて、複数のみちびきの衛星からそれぞれ送信することで補強対象衛星を増やして、高精度測位の安定化と可用性の向上を促進します。このサービスは昨年(2025年)9月1日より開始しており、今後打上げ予定のGalileo衛星などが加わることで補強対象衛星として利用可能な衛星が増加し、その効果が現れると期待されています。

講演スライド3-4

補強メッセージの認証情報をL6E信号の空き領域を活用して送信する

さらに、みちびきの信号認証サービスを利用して、補強メッセージに関する認証情報をL6E信号の空き領域を活用して送信するサービスを来年(2027年)春頃に開始する予定です。こうした対応により、高いセキュリティが求められる分野へのCLASの利用拡大促進が期待されています。
早瀬氏は最後に、高精度測位の進歩や社会の変化に応じて今後もCLASのサービスを高度化させて品質の維持・向上に努めるとの決意を示し、講演を終えました。

閉会挨拶
航空宇宙研究会 宮崎裕己会長
航空宇宙研究会 宮崎裕己会長

閉会挨拶は、航空宇宙研究会の会長を務める国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所の宮崎裕己氏(特別研究主幹 工学博士)が行いました。宮崎氏は、「本日は非常にバランスのとれた発表で、みちびきの技術や開発状況を聞ける良い機会となりました。今後もこうした形で研究会を活発に実施していきますので、引き続き皆様の参加を期待しています」と話して閉会しました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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