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八代市がQ-ANPI活用した災害時安否確認の実証実験を開始

2021年12月13日

2021年6月30日、熊本県の八代市とトヨタ自動車九州株式会社、株式会社SUNABACOの三者が、ハイブリッドカー用電源キット「Re-Q(リキュー)」及びみちびき衛星安否確認サービス「Q-ANPI」を活用した実証実験の実施について連携協定を締結しました。本協定締結を受け八代市では、孤立が想定される地域での実証実験や、住民参加型防災訓練等において機器の活用を行っています。

連携協定締結

(左から)株式会社SUNABACO、八代市、トヨタ自動車九州株式会社で連携協定

災害被災地から避難所や安否情報等を収集

この実証実験では、携帯電話回線などの地上ネットワークが途絶えた場合を想定し、災害被災地からQ-ANPIを利用して避難所情報・安否情報等を収集し、状況を把握します。

中村市長

説明を受ける中村博生市長

Q-ANPIの仕組み

Q-ANPIの仕組み

「令和2年7月豪雨災害」では八代市内を流れる球磨川が氾濫し、道路の崩落や携帯電話通信網の途絶、電力供給等のライフラインが寸断されたことにより、被災地の「安否確認」を求める問い合わせが八代市に殺到しました。そこで、通信網が使えない時でも現地の状況を収集できるみちびきのQ-ANPIに着目し、2021年1月に内閣府から機器の貸与を受けて実証実験を開始しました。
「豪雨災害時の教訓として、携帯電話回線や道路が途絶された状況でも現地の状況を把握できる仕組みづくりが必要と考えていた時に、SUNABACOから情報をいただき、内閣府がQ-ANPI実証実験への参加を募集していると知り、ぜひ参加したいと思いました」(八代市 総務企画部 総括審議員兼次長 黒瀬琢也氏)

八代市の谷口氏、黒瀬氏、小林氏

(左から)八代市 総務企画部の谷口佳久氏(危機管理課 危機管理係 主事)、黒瀬氏、小林和也氏(危機管理課 主幹 兼危機管理係長)

ハイブリッドカー用電源キットも使用

今回の実証実験では、電源供給システムとしてトヨタ自動車九州株式会社が開発したハイブリッドカー用の電源キット「Re-Q」も使用します。
「豪雨災害を経験し、携帯電話や固定電話などの通信網が途絶している時は被災地において電力供給を喪失している可能性が高く、“安否確認”と“非常用電源”の確保を両輪で進めていく必要性を再認識しました。そうした中、SUNABACOにトヨタ自動車九州とつないでいただき、Q-ANPIのシステムだけでなく、Re-Qの実証も併せて行うことにしました」(黒瀬氏)

Re-Qの仕組み図

非常時の電力供給のためRe-Qを活用

Re-Qはハイブリッド自動車「プリウス」を活用して発電し、約30Aの電力供給を行うシステムです。災害発生時に停電が起きた場合でも、避難所に必要な電力を安定的に供給し、Q-ANPIによる安否や状況の確認を可能にします。ガソリンが満タンなら約80kWhの電力を生み出すことができ、これは大人10人が2日間、快適な生活を送るために必要な電力に相当します。また、一度に300台のスマートフォン端末を充電でき、1日に約7,200台を充電できる計算になります。
災害発生時のためだけに発電機を準備するのと異なり、必要な場所に簡単に移動できる上、災害時のみに備える機材ではないため、そのコストも抑えられます。また、災害発生時に初めて使うものだと、いざ必要となった時に使用方法が分からないといったトラブルが発生しがちですが、普段から使用していれば、そのリスクを回避できます。

迅速に安否確認できる体制めざす

端末の操作訓練

八代市職員の間で行われたQ-ANPI端末の操作訓練

八代市はQ-ANPIとRe-Qを掛け合わせ、インターネットや電話回線などの通信インフラに加えて、電源等のライフラインが寸断した場合の「迅速な安否確認」が可能な体制づくりに取り組んでいるところです。
「通信回線が途絶し、道路が寸断される状況は、今後の日本の中山間地の災害では頻発すると想定されます。こうした災害が起きた際に、みちびきを活用して被災地の状況をしっかり届けられるQ-ANPIは非常にありがたい仕組みであり、行政だけが使うのでなく、国民の方々もスマートフォンなどでQ-ANPIが収集した情報を見に行くという行動が一般化すれば、災害発生時でも速やかに安心できる体制が整うと期待しています」(黒瀬氏)

実証実験の様子

防災訓練において実証実験を実施。赤丸内がQ-ANPIの受信端末

タブレット

タブレットに情報を表示

八代市は今年、職員によるQ-ANPIの操作訓練や、住民参加型の防災訓練において、Q-ANPIとRe-Qを併せて活用する実証実験を行いました。中山間地域ならではの「ドローン」を活用した実証実験など、「令和2年7月災害」を経験した八代市だからできる防災体制の底上げに向けて取り組みを進めていく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※本文画像提供:八代市、トヨタ自動車九州株式会社、株式会社SUNABACO

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