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NTTデータ、災危通報の防災情報を屋外スピーカーで自動発信

2020年04月13日

株式会社NTTデータは、屋外スピーカーや戸別受信機を使った防災情報伝達システム「減災コミュニケーションシステム」の新機能として、みちびきの災害・危機管理通報サービス「災危通報」の防災情報を、屋外スピーカーから自動的に発信する機能を提供開始すると発表しました。2020年6月以降に納入するシステムには、原則として災危通報の受信機能を標準搭載します。

災危通報を自動受信して音声で放送

災害発生時、スマートフォンやタブレットなどには緊急速報メールが通知されますが、これらと並んで重要なのが、市町村の防災行政無線など屋外スピーカーを使った放送です。これらの放送は、街中に大きく響き渡る音声によって、子どもから高齢者まで幅広い年代の住民に向けて情報を届けることができます。
NTTデータが2007年から提供している「減災コミュニケーションシステム」では、自治体が屋外スピーカーや携帯通信網を介したスマートフォンやタブレット、緊急速報メール、LPWA(Low Power Wide Area)網などを使って防災情報を配信します。これまでは、携帯通信網を活用して職員が防災情報や避難情報をパソコンや送信機器に入力して屋外スピーカーへ配信したり、緊急速報メールなどを自動配信したりすることで情報を発信していました。
今回、みちびきの災危通報に対応した受信機を屋外スピーカー放送装置に設置したことで、災害発生時に地上回線が使えなくなった場合でも、みちびきの信号を受信して直接、屋外スピーカーから防災情報を放送したり、各家庭へ配信したりできるようになります。

システム図

災危通報を屋外スピーカーや戸別受信機で利用可能(図版提供:株式会社NTTデータ)

GNSS受信機には、古野電気株式会社が2020年夏に発売予定のQZ-DC1を採用しています。みちびきの災危通報で配信される防災情報を受信可能な受信機で、GNSSアンテナと電源を接続するだけで、地上の通信ネットワークに依存することなく災危通報を取得できます。
受信した防災情報は位置情報と共に出力され、これをコンピュータのSTB(セットトップボックス)などに接続することで、テキストや音声などさまざまな形式で防災情報を利用可能となります。
このQZ-DC1を減災コミュニケーションシステムの屋外スピーカー放送装置に組み込み、放送装置内の音声合成機能を使って、受信した信号から生成したテキストデータをもとに、放送装置に内蔵される即時音声合成機能を利用して放送用音声を生成し、外部スピーカーで音声を放送する仕組みです。

各家庭の戸別受信機にも防災情報を配信可

NTTデータの内山武明部長(社会基盤ソリューション事業本部 デジタルコミュニティ事業部 第一ビジネス事業部 観光・防災推進担当)は、みちびきの災危通報への対応を図った理由を次のように説明します。

内山部長

NTTデータの内山部長

「市町村が整備する防災行政無線は大きなシステムとして構築されていて、携帯電話網やインターネット回線など、どこかで通信経路が途絶えると情報の配信が止まってしまう恐れがあります。そこで、自律的に情報を得て住民に伝達できる設備が必要と考えて、衛星から直接、情報を受信することが可能なみちびきの災危通報に着目しました」(内山部長)

減災コミュニケーションシステムで提供される屋外スピーカー放送装置は、停電時でも自営電源だけで72時間(オプション利用時は最大で144時間)稼働でき、単独で災害情報を発信し続けられます。そのため、LTEやWi-Fiなど地上の通信網が途絶えた場合の備えとして有効です。
さらに、他社にはない設備としてIoT(Internet of Things)向けのLPWA通信網を通じて情報を受信できる戸別受信機も用意しています。この戸別受信機を自治体が各家庭に配布すれば、大雨などで屋外スピーカーの声が聞こえない場合でも、戸別受信機が災危通報の防災情報を音声で知らせることができます。戸別受信機には時計やアラーム機能、ラジオなども搭載されており、防災情報を受け取るだけでなく、平常時にも使用できます。なお、LPWAの送信機は屋外スピーカー放送装置に搭載されています。

NTTデータの山口智孝課長(社会基盤ソリューション事業本部 デジタルコミュニティ事業部 第一ビジネス事業部 観光・防災推進担当)によると、LPWAは送信できるデータ量が少ないため、LPWA対応の戸別受信機にも音声合成機能を内蔵しており、受信端末側で音声を合成して防災情報を再生する仕組みになっています。

山口課長

NTTデータの山口課長

「私どもは、その時点の最先端の技術を可能なかぎり採り入れながら多層的・多重的に、どのような災害が起きても何かしらの伝達手段が残ることをコンセプトとしてシステムを構築しています。屋外スピーカーは荒天時などに聞こえないことがあるので、他の手段でも使えるようにするために拡張性を持ったシステムを目指しており、戸別受信機もその一つとして用意しました」(山口課長)

今年に入って各地で実証実験を実施

NTTデータは2020年2月、災危通報に対応した減災コミュニケーションシステムの実証実験を沖縄県うるま市で実施しました。気象庁から防災情報が発せられた事態を想定して、実環境でも災危通報の信号を正常に受信できるかを実験し、日本の南方エリアにおいて、想定どおり屋外スピーカー及び戸別受信機が鳴動することを確認できました。同社は今後、北海道でも実証実験を実施し、北日本エリアでもシステムが正常に作動するかを検証する予定です。

実証実験で使用した屋外スピーカー放送装置

実証実験で使用した屋外スピーカー放送装置(画像提供:株式会社NTTデータ)、下の映像は実証実験で津波警報を知らせる音声が流れる様子(38秒)

実証実験は、津波を警戒している沿岸部を中心に行っています。これは、減災コミュニケーションシステムを津波のリスクが高い地域に展開していきたいという思いがあるからです。
「みちびきの災危通報は、衛星携帯電話などを使う方法に比べてハードウェアが安価で、通信コストも無料なので、普及する可能性はとても高いと思います。また、操作が不要で、受信した情報をダイレクトに発信できるため、津波に襲われる可能性のある沿岸部に設置するには最適です。現状では、災危通報は気象庁が発表する警報しか提供していませんが、今後はそれ以外の避難指示や避難所情報などを提供したり、海外の情報を配信するなど、情報を増やしていろいろな用途に使えるようになると期待しています」(内山部長)

すでに約10の自治体に向けて800台の屋外スピーカー放送装置の設置が決まっており、今後も災危通報の受信機能やLPWA対応の戸別受信機など、他社のサービスにはない特色を活かして営業展開を図っていく方針です。
「既存の防災行政無線のシステムを置き換えるだけでなく、沿岸部や、土砂災害・河川氾濫が起きる可能性のある地域にスポット的に本システムを追加することも考えています。現状は自治体向けを想定していますが、いずれは民間企業の危機管理室や工場などにも展開していきたいです。災危通報の認知度を高めていけば、自治体や企業もみちびきをもっと使おうという流れになり、広範囲にサービスを考えていけると思います」(内山部長)

自治体の防災情報伝達システムに、みちびきの災危通報の受信機能をいち早く標準搭載したMTTデータ。同社は災危通報が持つ可能性に期待を寄せています。

ポートレイト画像

(左から)社会基盤ソリューション事業本部 デジタルコミュニティ事業部の山口智孝課長、内山武明部長、戸上巌基氏

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※ヘッダ画像の屋外スピーカーはイメージです。

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