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イームズロボティクスが農機に後付けするみちびき対応自律走行ユニット開発へ

2019年12月09日

福島県を拠点に産業用ドローンなどの自律機器の製造・販売を行うイームズロボティクス株式会社はこのほど、GNSS受信機を提供するマゼランシステムズジャパン株式会社とパートナーシップ契約を締結し、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)を活用した「自律走行ユニット」の共同開発を開始しました。

ユニット後付により低コストで農機を自動化

両社が開発する自律走行ユニットは、農業用機械に後付けすることで、屋外における高精度で正確な自動運転の実現を目指します。
大手農機具メーカーはすでに高精度の衛星測位技術を使った直進走行の自動操舵が可能なトラクターを開発しており、GNSSやカメラに加えてレーザーセンサーや超音波センサーなどを組み合わせることで、無人状態での自動走行が可能なレベル2の自動運転の実用化を開始しています。一方で中小農機具メーカーは開発力や資金の不足により、自律制御が可能な農機具を開発することが難しい状況です。
イームズロボティクスとマゼランシステムズジャパンはここに着目し、既存の農機に後付けして自律制御化を可能にする「自律走行ユニット」の開発に取り組むことにしました。

みちびき対応型UGV

みちびき対応型UGV(無人車両、Unmanned Ground Vehicle)

多周波対応GNSSアンテナ

自律走行ユニットに使用するマゼランシステムズジャパンの多周波対応GNSSアンテナ

この自律走行ユニットは、機器の大小に関係なく、また動力源がエンジン駆動・バッテリー駆動に関わらず、操作系が電子制御化されていれば自動走行させることができます。操作や設定はWindowsタブレットで行うことができ、登録したルートに沿って走行させるモードやエリアを指定してジグザグ走行させるモードなどを用意しています。また、指定した位置で農機を停止・旋回させることもできます。
なお、農機具はメーカーごとに電子制御の方法に違いがあるため、このユニットを組み込む際は、エンジニア立会いのもとユニットの搭載方法の検討や電気信号の受け渡し方法などを協議し、メーカーごとの専用品として量産できる状態で納品します。量産は福島県のイームズロボティクス本社で行う予定です。

CLAS対応の農業用ドローンもリリース予定

イームズロボティクスによると、ユニットのサイズは高さ15cm×幅8cm×奥行8cm程度のコンパクトなものを目指しています。ユニット本体は農機の内部と外部に関わらず自律走行に影響のない範囲で自由な場所に設置可能で、農機具メーカーによって設置箇所が異なるため、ユニットの外装の形状も変化する可能性があります。
また測位方式にRTK(Realtime Kinematic、固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する)でなく、みちびきのCLASを採用したのは、一般農家が農業用機械を自動走行させるに当たって屋外ですばやく自動走行ルートを作成するには、より簡易に測位できるCLASのほうが適切と判断したためです。

走行試験の様子

みちびき対応型UGVの自動運転走行試験

画面例

ミッションプランナー画面

ユニットを制御するソフトウェアにはオープンソースのMission Plannerを採用します。オープンソースであるため、世界中の技術者がこのソフトをドローンなどの無人機に組み込んで開発を進めており、そこから技術的な課題がイームズロボティクスにフィードバックされて進化し続けています。
イームズロボティクスはCLASに対応した農業用ドローンも2020年初頭から提供開始する予定で、こちらにもアグリ版Mission Plannerを自社開発しています。自律走行ユニットと農業用ドローンの開発は並行して行われ、一部共通の技術を用いながら双方のノウハウを活かして進められています。
自律走行ユニットの開発者は、「センチメータ級測位補強サービスはGPSに比べてはるかに高精度な測位を実現しています。今後、運用時間や気象、地形条件に左右されずに安定した高精度測位を行うためにも、今以上にみちびきの数が増えてほしいと思います」とみちびきへの期待を語ってくれました。
同社はこの自律走行ユニットの今後について、2020年初旬にサービスを開始して同年中に販売にこぎつけたいとしています。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

※記事中の画像提供:イームズロボティクス株式会社

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