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東大地震研らの研究グループ、「海のGEONET」をめざす研究開発を開始

2016年08月26日

東京大学地震研究所の加藤照之教授を中心とする研究グループは、西太平洋全域に配置する高機能化GPS津波計の開発をめざし、それにつながる基礎研究として『海洋GNSSブイを用いた津波観測の高機能化と海底地殻変動連続観測への挑戦』と題した、「海洋版GEONET*」(*GEONETは、全国約1,300個所の電子基準点によるGNSS連続観測網)とも言うべき、5年計画の研究プロジェクトをスタートさせました(文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(S)16H06310) 。

災害軽減のための多目的GNSSブイ(模式図)

災害軽減のための多目的GNSSブイ(模式図、当日の記者発表資料より。東大地震研作成)

この研究プロジェクトに関する記者発表と説明会が、8月24日、村上水軍の拠点として知られ、古来より日本の造船・海運の中心地の1つとなってきた、瀬戸内しまなみ海道の弓削(ゆげ)島(愛媛県上島町)にある国立弓削商船高等専門学校で行われました。同校は練習船「弓削丸」(240トン、定員56名)で実験に参加します。

国立弓削商船高専の練習船「弓削丸」(模型)

国立弓削商船高専の練習船「弓削丸」(模型)

研究グループには東大地震研や弓削商船のほか、名古屋大学環境学研究科、情報通信研究機構(NICT)、気象庁気象研究所、高知工業高等専門学校が参加し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ソフトバンク株式会社、日立造船株式会社が協力機関として加わります。

記者会見に参加した研究グループの5人

記者会見に参加した研究グループのメンバー。左から弓削商船の二村彰 准教授、NICTの山本伸一氏、高知高専の寺田幸博 客員教授、弓削商船の木村隆一校長、東大地震研の加藤照之教授

GPS津波計は20年間にわたる技術蓄積があり、また同様の機器が全国の沿岸に「GPS波浪計」として19基配置され、リアルタイムに情報サービスを行う国土交通省の「ナウファスシステム」(NOWPHAS=Nationwide Ocean Wave information network for Ports and HArbourS、全国港湾海洋波浪情報網)として実用化されています。東日本大震災を引き起こした2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の際には、ナウファスの観測データが気象庁の津波予報値の引き上げに活用されたなどの実績もあります。

実験の概念図

実験の概念図(当日の記者発表資料より。東大地震研作成)

2013~14年にはみちびきのLEX信号で補強情報を送信、技術試験衛星「きく8号」でデータ収集を行い、沿岸のインフラの助けを借りず、高精度に海面変動をとらえる技術実証に成功していますが、さらに今回の研究プロジェクトでは、超音波を使って海洋ブイから海底の基準局の変位を把握するという困難なテーマに挑戦します。南海トラフ地震や、昨今話題とされるスロースリップ(スロー地震)などの兆候をいち早くとらえる「海底地殻変動の連続観測」の実現につながる技術となります。

東大・地震研究所の加藤照之教授

研究代表者の東大・加藤教授

研究代表者である東大地震研の加藤照之教授は、「国土地理院が整備したGEONETは、地殻変動観測に革命的な成果をもたらした。これを海上にも展開し、陸(海底)・海(波浪や津波)・空(水蒸気量)・宇宙(電離層)の状態を総合的に把握する観測プラットフォームへの道を開きたい」としています。

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※ヘッダ画像は、愛媛県北東部の弓削島にある国立弓削商船高等専門学校実習船係留場の艇庫。背後は弓削島と佐島を結ぶ全長980mの斜張橋「弓削大橋」(1996年開通)