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真冬の絶景「ジュエリーアイス」をGPSで追跡、北見工大が研究スタート

2018年02月22日

北海道の帯広から車で45分ほど、十勝川河口の豊頃(とよころ)町にある大津海岸では、厳冬期に太平洋の波で打ち寄せられた十勝川由来の氷が海岸を埋め尽くすことがあります。淡水でできた透明度の高い氷は宝石のように光を透過・反射することから「ジュエリーアイス」と名付けられました。地元・豊頃町ではこれを観光資源と位置づけ、「遠路来られる方をがっかりさせたくない」(豊頃町企画課)と、現地までの交通アクセスや日々の発生状況を伝えるウェブサイトを今年から立ち上げ、情報提供に務めています。

豊頃町の新絶景/ジュエリーアイス

氷の出現メカニズムを探る研究も開始

さらに「ジュエリーアイス」の形成とその出現メカニズムを探る研究も始まりました。河川工学、特に結氷した河川の治水・利水・環境をテーマとする国立大学法人北見工業大学工学部 地域未来デザイン工学科の吉川泰弘助教は、北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)の支援を得て、株式会社福田水文センターと共に研究グループをスタートさせています。

北見工大の吉川助教

北見工大の吉川助教

吉川助教は現段階で、ジュエリーアイスの形成とその出現のシナリオとして以下を想定しています。
──
<ジュエリーアイスの生成メカニズムと主たる要因>
1)氷の形成(気温、水位)
2)氷の破壊(潮汐、水位)
3)氷の輸送(風向風速、潮流)
4)氷の堆積(潮汐、風向風速)
それぞれのプロセスがどんな条件下で進むかが分かれば、気象予報や潮汐と見比べることで「ジュエリーアイスの発生日予報」も期待できる。
──

このうち「3)氷の輸送」について吉川助教らのグループは、市販のGPS発信機を内蔵し、氷と同じ比重にした実験機器を、1月15日に十勝川の河口近くで放流。同日22時に沖合約10kmで通信が途絶えるまで、継続して位置情報を取得することができました。

投入前の浮子

投入前の浮子

輸送プロセス解明のためのGPS機器

輸送プロセス解明のためのGPS機器

GPS機器の輸送経路

GPS機器の輸送経路

吉川助教は今回の試行の成果について、以下のように語っています。
「調査当初は、氷の輸送プロセスを解明するために、生分解性の素材を用いた浮子(ふし=流速を測定する浮き棒)を河川に投入して海岸で回収し、その位置情報をGPSにて測定していました。ただ、流したすべてを回収できる訳ではなく、流した場所と回収した場所は分かっても、経路が確実に分かる訳ではありません。そして海に出てしまえば回収率は激減します。機器の輸送経路をトラッキングできたことで、今後の研究のヒントに活かすことができました」

無人赤外線カメラ

氷の堆積プロセスを解明する無人赤外線カメラ

氷の大きさを測定

氷の大きさを測定

加えて、「土木工学や河川工学の分野でもGPS/GNSSの技術は、情報化施工や斜面災害監視などの用途で多く使われているものの、この種の用途はなじみがなく、私も今回が初めての試行でした。機器の回収こそできませんでしたが、貴重なデータが得られました。今後は浮子などとも組み合わせ、さらにデータ取得に努めます」と今後の展望を語っています。

回収時の浮子とGPS機器

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

※画像および図版提供:豊頃町、北見工業大学 吉川泰弘助教