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海保庁調査で、南海トラフ震源域の海底が1年に最大5.8cm移動

2015年09月04日

海上保安庁は8月18日、南海トラフ巨大地震の想定震源域の海底において、初めて詳細な動きを捉えたことを発表しました。年間数cmという微小な動きを海底で捉えることは技術的に非常に難しいとされていますが、今回、東日本大震災後から今年6月までの約4年間に蓄積したデータを解析した結果、海底が概ね北西方向に最大で1年に約5.8cm移動していることが分かりました。

海上保安庁では、巨大地震の発生が懸念されている南海トラフで、長期にわたって海底の動きを観測しています。南海トラフとは、東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形のことで、東日本大震災後、観測体制を強化するため観測点を増設し、静岡県沖から宮崎県沖にかけて陸側プレート上の海底に15カ所の観測点を設け海底地殻変動を観測してきました。海底の動きを観測することで、海溝型巨大地震震源域の固着状態が推定され、震源域の推定や発生メカニズムの解明に貢献することを目的としています。

南海トラフ付近の海底の移動速度(図解)

(画像提供:海上保安庁)

今回の観測では、海側のフィリピン海プレートが陸側プレートの下に年5〜6cm潜り込んでいることが分かりました。陸側プレートが引きずり込まれることでひずみが生まれ、この力が解放される際に地震が発生する仕組みです。陸側プレートの移動で大きかったのは静岡県沖の年平均5.8cm、和歌山県沖の5.6cm、愛知県沖と高知県沖の5.1cmの順で、逆に小さかった宮崎県沖では2.2cmと場所によりばらつきがありました。

この移動速度はプレート境界の固着状態によって異なるため、国土地理院が観測する陸域で得られている結果よりも大きな移動速度を示している場所もあります。

GPS/音響測距結合方式による海底地殻変動の観測

GPSの電波が届かない海底の位置を決定するには、測量船を中継として、海上での「GPS測位」とともに、音波で船と海底との距離を測る「音響測距」を海中で行う「GPS/音響測距結合方式」が用いられます。

海底地殻変動観測の概念図

海底地殻変動観測の概念(画像提供:海上保安庁)

海中の音響測距では、船と海底間の音波の往復伝搬時間から距離を求めます。測量船(船上局)の船底に設置した音響トランスデューサから音響信号を発信し、受信したミラートランスポンダ(海底局)が信号をそのまま送り返し、その時間を記録して距離を測定する仕組みです。

海中の「音速度」は水温や塩分濃度によって変化する上、測量船も常に波に揺られ続けているため、距離を正確に把握するには時間的にも空間的にもかなりの困難を伴います。海上保安庁は、そうした状況下で東京大学生産技術研究所と共同で研究開発を重ね、「GPS測位」と「音響測距」を結合した手法による海底地殻変動観測システムを構築してきました。

今回の調査結果は、8月21日に国土地理院関東地方測量部で開催された第208回地震予知連絡会でも報告されました。

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※ヘッダ画像は、イメージです。