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国土地理院でGNSS技術に関する研究セミナー開催

2018年02月20日

国土地理院の地理地殻活動研究センターでは「談話会」と名付けた技術セミナーを定期的に開催しています。このセミナーは職員だけでなく一般にも公開され、近隣の研究機関や大学などとの情報共有の場としても活用されています。2月7日に行われた第133回談話会では、GNSSの高度利用に関連する2つの発表がありました。その概要を紹介します。

迅速・高精度なGNSS定常解析システムの構築に関する研究

── 宇宙測地研究室 中川弘之氏

GEONETとは「GNSS連続観測システム」の略称です。GEONETを構成する電子基準点はみちびき/GPS/GLONASS/ガリレオなどの測位衛星を常時観測し、データを取得・伝送しています。このデータを使って電子基準点の位置を繰り返し測ることによって、地面の動きを捉えることができます。その情報は関係省庁や委員会に提供され、地震活動や火山活動の評価に活用されています。

地理地殻活動研究センター宇宙測地研究室 中川主任研究官

中川弘之氏(地理地殻活動研究センター宇宙測地研究室 主任研究官)が取り組む「迅速・高精度なGNSS定常観測システムの構築」は、宇宙測地研究室が今年度から3年にわたる特別研究テーマとして取り組んでいるもので、従来以上の頻度と時間分解能で電子基準点の座標値を求めようという研究です。
この研究が目標とするのは精密単独測位(PPP-AR)により、電子基準点全点の1秒ごとの座標値24時間分を、約2時間で求めるシステムです。水平精度は約1cmを目標としています。この速度、精度、頻度が実現できれば、たとえば続発する複数の地震による地殻変動を別々の動きとして捉え、地震メカニズムのより正確な解明に役立てるといった活用ができるようになります。

JAXAが開発した解析ソフトウェアMADOCA(Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)を使用して世界中に分布する最大93点の観測点のデータにより推定した、衛星軌道や人工衛星に搭載された時計の誤差などの情報をもとに電子基準点の座標値を求める解析を行います。試験的な解析では、1台の計算機を使って、90分間で約450点の電子基準点について、24時間分の1秒刻みの座標値を得ることができました。中川氏は、「精度については今後さらなる改善が必要なものの、解析時間が目標とする範囲に収まるメドがついた」としました。

小型GNSS 観測装置の製作と精度評価

── 宇宙測地研究室 宮﨑隆幸氏

電子基準点は日本全国に約20km間隔で配置されています。地殻の動きをより詳細に把握するには、観測点のさらに高密度な配置が求められます。たとえば国土地理院が火山活動の監視のため運用するREGMOS(GNSS火山変動リモート観測装置)は、電線も通信線も不要で独立動作するいわば「コードレスなGNSS観測点」です。

宮﨑隆幸氏(地理地殻活動研究センター宇宙測地研究室 研究官)は、このREGMOSの機能を縮小したスタンドアローン型GNSS観測装置を数千円~数万円程度のローコスト1周波受信機で試作し、その性能を評価しました。この種の装置が「使える」とすれば、高密度に配置することで地殻変動の精密把握が可能となり、地震断層モデルのより正確な推定につながるからです。

屋上に設置した試作装置

屋上に設置した試作装置

ケースには受信モジュールなどを配置

ケースには受信モジュールなどを配置

試作装置には、NEO-M8T(u-blox製)などローコストの受信モジュールやアンテナを使用、記録・制御用コンピュータには電子工作ファンに人気のあるRaspberry Pi 3を使い、電源部には太陽電池パネル+充電コントローラー+12V鉛蓄電池を使用しました。

REGMOS-H

装置を試作するヒントになった、国土地理院が展開するREGMOS(国土地理院ウェブサイトより)

試作した装置と近隣の電子基準点(つくば1・阿見・守谷など)による測位結果を、測量用受信機(Trimble R7 GNSS)による精度と比較したところ、短基線(距離数km以内)であれば遜色ない性能が得られたが、基線長が10kmを超えると誤差の拡大が見られたといいます。発表後の意見交換では、「(それほど小型軽量の機器ならば)既設の電柱や通信基地局などへ併設の可能性も考えられるのでは?」といったアイデア提示もありました。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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