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G-SPASE(社会課題解決型宇宙人材育成プログラム)2017年度最終報告会を開催

2018年03月08日

東京・港区にある慶應義塾大学三田キャンパスで2月22日、文部科学省委託事業「グローバルな学び・成長を実現する社会課題解決型宇宙人材育成プログラム」(G-SPASE)の2017年度最終成果報告会が開催されました。
このプログラムは、宇宙と地上のインフラを統合して問題抽出から課題解決に関わることのできる人材の育成と国内外のネットワークづくりを目的としており、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科が代表機関を務め、東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科、青山学院大学地球社会共生学部、事業構想大学院大学事業構想研究科が参加しています。

会場風景

会場となった慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール

参加学生はアジアやオセアニアなどの大学・政府機関などとの連携を通じ、現地の多様な社会課題に取り組んでいます。報告会は、東京大学CSISの柴崎亮介教授の開会挨拶で幕を開けました。

東京大学CSISの柴崎教授

東京大学CSISの柴崎教授

A.T.カーニー 石田真康氏

「宇宙以外の分野からどう人材を呼び込むかが課題」

A.T.カーニー 石田真康氏

米国を本拠とする経営コンサルティング会社A.T.カーニー(A.T. Kearney)の石田真康氏は、「宇宙ビジネスの新潮流」と題した講演を行いました。民間企業による新たな宇宙産業が近年、次々と起こっているとして、その市場は、宇宙に行く手段を低コスト化して高頻度に打ち上げなどを行う「宇宙アクセス革命(SpaceX)」、次世代衛星インフラ構築、衛星データ利活用、軌道上サービス、宇宙旅行・ホテル、深宇宙(探査・移住)などさまざまなセグメントに分かれていると語りました。さらに、過去10年に行われた日本の法整備と宇宙政策について解説した上で、今後は人材育成の重要性もさることながら、これまで宇宙とは関係のなかった分野の人たちをいかに宇宙ビジネスに呼び込み、商業化していくかが大事な課題であると語りました。

JAXA 村木祐介氏

「G-SPASEなどの取り組みを通じた人材の育成に期待」

JAXA 村木祐介氏

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の村木祐介氏は、「宇宙技術を活用した社会課題解決と必要人材」と題して講演しました。アジア開発銀行での途上国開発援助において衛星データ利用の事業に携わった後、JAXAのミッション企画部で新規事業を企画したという経歴を持つ村木氏は、宇宙技術を活用した社会課題解決を促進するには、ニーズやシーズ、ファンディング、スキームなどに関する知見・人脈を持つ人材が不可欠であると語りました。同時に、国際コミュニケーション能力と異分野コミュニケーション能力をあわせ持ち、技術アイデアにとどまらず、全体構想を企画立案できるプロデューシング能力を持った人材も必要だとして、G-SPASEなどの取り組みを通じた人材の育成に期待すると語りました。

慶應大大学院 神武直彦准教授

「来年度は、宇宙ソリューションデザイン入門コースを実施」

慶應大大学院・神武直彦准教授

慶應義塾大学大学院SDM研究科の神武直彦准教授は、G-SPASEの目標および運用シナリオを紹介し、今年度実施した主な取り組みとして、学生プロジェクトや毎月開催のマンスリーチュートリアル、e-Learningシステム、タイのカオヤイ国立公園で実施したサマースクール/ワークショップ、学生が社会人と議論を行うイブニングスクール、高校大学連携、インドネシアのジャカルタで開催した国際シンポジウムなどを紹介しました。さらに、これらの取り組みに対してグッドデザイン賞が贈られたことを報告。宇宙分野に人材を育成するための次のアクションとして、宇宙に興味のある人が「社会課題解決のための宇宙インフラ活用」を理解し、考察・行動できるようになることや、「宇宙インフラに詳しい人が社会課題を把握して解決策を実現できる」または「社会課題を理解している人が宇宙インフラを活用して解決策を実現できる」ことを目指して、来年度は、宇宙ソリューションデザイン入門コースや、同専門コースの実施を予定していると語りました。

参加学生によるプロジェクト成果報告

▽学生プロジェクト・口頭発表

学生プロジェクト・口頭発表
  • アジア地域のGNSS基準点利活用:アジア各地にGNSS基準点を設置し、設置後の基準局がしっかり動いているかのガイドラインを示したマニュアルなどを追加。(東京海洋大学・高橋漱さん)
  • Using Machine Learning and GIS for Agricultural Microfinance:農業分野における小口金融を実現するために機械学習とGISを活用。(慶應義塾大学・Naomi Simumbaさん)
  • GNSSを活用したスポーツパフォーマンス計測:ラグビー選手の背中にGNSSレシーバーを装着して選手の動きを計測し、効果的なデータの利活用方法を提案。(慶應義塾大学・見城航さん)
  • Taxi Probe Data Analysis for Taxi Driver Profit:タクシーのプローブデータを解析して乗客の獲得を支援することにより、運転手の利益向上に貢献。(東京大学・Saurav Ranjitさん)

本プログラムで学生が実施したプロジェクトの口頭発表を行った後、各プログラムを紹介するポスターセッションが行われました。
ポスターセッション

宇宙関連のコミュニティや新しい取り組みの紹介

宇宙関連の技術を活用した社会課題の解決に取り組んでいるコミュニティや、企業による新たな取り組みなどを紹介するセッションが行われました。

▽宇宙コミュニティの取り組み紹介

宇宙コミュニティの取り組み紹介
  • 「UNISECを通して得たもの、その先にあるもの」:学生による超小型衛星やロケットの開発など実践的な宇宙教育活動を支援する大学宇宙工学コンソーシアム「University Space Engineering Consortium:UNISEC」の紹介。(UNISEC・牟田梓氏)
  • 「宇宙開発がより多様な価値を生む未来に向けて今僕が目指すもの」:社会にとって宇宙開発の存在意義について考え、宇宙開発フォーラムなどの企画・運営などを行っている宇宙開発フォーラム(Space Development Forum:SDF)について紹介。(SDF・今村俊雄氏)
  • 「宇宙が私にくれたこと、宙畑で目指すもの」:宇宙ビジネスの裾野拡大のため、国内外の宇宙ビジネス拡大を目指すメディア「宙畑」について紹介。(宙畑・城戸彩乃氏)
  • 「起業家精神から考える宇宙コミュニティ」:毎週末に企業体験のイベントを開催している「Startup Weekend Tokyo Space」の紹介。(Startup Weekend Tokyo Space・長田大輝氏)
  • 「宇宙への興味を開拓する活動を通して感じたこと、そしてこれから」高校生をターゲットに宇宙への興味を喚起するフリーマガジンを発行している「TELSTAR」の紹介。(TELSTAR・山田駿氏)

▽宇宙分野での新たな取り組み

宇宙分野での新たな取り組み
  • 「宇宙ラボ:宇宙開発とクリエイティブで快適な社会に」:宇宙開発の技術を生かしたアイデアとソリューションで快適な社会の実現を目指す電通の社内横断組織「電通宇宙ラボ」の紹介。(電通宇宙ラボ・小田健児氏)
  • 「Screening Human Intelligence with AI」:AIを活用した人材評価システム「GROW」や、オンライン英語学習プラットフォーム「e-Spire」などを提供するIGS株式会社の紹介。(IGS株式会社・Fabien Roudier氏)

パネルディスカッション

プログラムの最後には、神武准教授(慶應義塾大学大学院SDM)がモデレーターを務めてパネルディスカッションが行われました。ディスカッションは前半と後半に分かれて、前半には「宇宙コミュニティの取り組み紹介」の登壇者など6名がパネリストとなり、宇宙コミュニティや宇宙産業の創出などをテーマに来場者からの質問に答えました。

パネルディスカッション前半の様子

パネルディスカッション前半の様子

後半は、基調講演の登壇者であるJAXAの村木祐介氏と電通宇宙ラボの小田健児氏の2名に加えて、G-SPASEの主催者である東京大学CSISの柴崎亮介教授、東京海洋大学大学院の久保信明准教授、事業構想大学院大学の小塩篤史教授の3名を加えた5名がパネリストとなり、これまでのG-SPASEの取り組みを振り返るとともに、宇宙人材の育成について今後の展望やアイデアなどを語りました。

パネルディスカッション後半の様子

パネルディスカッション後半の様子

最後に閉会の挨拶として、主催者の一人である東京海洋大学大学院の久保信明准教授から「本日は若い人の意見をいろいろ聞くことができ、たいへん触発されました。G-SPASEはこれで6年目が終わりましたが、来年度も頑張りたいと思いますので、ご支援をよろしくお願いします」とのコメントがありました。

東京海洋大学大学院の久保准教授

東京海洋大学大学院の久保准教授

このプログラムの成果報告会等は、次年度も継続的に実施される予定です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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