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NEXCO東日本、CLASを活用したロータリ除雪車の自動化運用を開始

2024年04月08日

東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)は2023年10月、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)を活用したロータリ除雪車自動化の技術開発を完成し、今冬より北海道内の道央道(岩見沢IC~美唄IC間の約21km)での運用を開始しました。

路線図

自動化された区間

NEXCO東日本は、除雪作業の省力化・効率化を目的として雪氷対策高度化システムを「ASNOS (*)」と総称し研究開発を進めています。このうち、「準天頂衛星を活用した運転支援システム」を搭載したロータリ除雪車自動化の技術開発が昨年までの検証段階を経てこのたび完成し、実運用が開始されたものです。
(*) ASNOS(アスノス):Advanced/Autonomous Snow and ice control Operation Systemの略で「明日(未来)の雪氷対策高度化システム」との意味をもつ。

システムの開発において測位システムを担当したNEXCO東日本北海道支社 技術部 技術企画課の栗田裕樹課長代理と、NEXCO東日本のグループ会社である株式会社ネクスコ・エンジニアリング北海道 土木事業部 土木技術部 交通環境課の伊藤俊明課長に話を聞きました。

栗田氏写真

栗田氏

伊藤氏写真

伊藤氏

CLASの高精度測位で除雪車の自律走行を実現

ロータリ除雪車の機能説明

ロータリ除雪車

ロータリ除雪車とは、オーガ(集雪装置)と呼ばれる雪を掻く装置で路肩部の雪を掻き込み、シュート(投雪装置)で路肩の外へと吹き飛ばす除雪用の車両のことで、雪質や天候の状態に応じて時速約2~5kmの速さで走行します。今回運用を開始したのは、2017年にCLASを活用して開発した運転支援システム(ガイダンスモニター)をベースにしたものです。2017年度の段階では、CLASに対応したアンテナと受信機を除雪車の屋根に設置して、運転席のガイダンスモニターに映し出した高精度地図上にCLASで得られた除雪車の位置情報を表示します。ガイダンスモニターには除雪車の通行位置のほかに、ガードレールなどからの距離や走行車線へのはみ出し、ガードレールなどへの接触を回避するための車体修正角などの情報を表示して、オペレータの運転操作を視覚的にサポートするものでした。

開発工程

ロータリ除雪車自動化の開発工程

概要図

自動化システムの概要

2020年には、このガイダンスモニターを搭載したロータリ除雪車を使って、オペレータがステアリングやブレーキを操作することなくCLASの高精度位置情報をもとに自動的に走行操舵するシステムが完成し、メディア向けの公開実験において自律走行の様子を公開しています。この自律走行の次の段階として、同社は除雪装置操作の自動化にも取り組み、今回運用を開始したシステムでは、ロータリ除雪車の自律走行システムとオーガ及びシュートの作動制御装置を連動させることで、除雪車の走行及び除雪作業のいずれも自動化を実現しました。

ロータリ除雪車
ロータリ除雪車

自動化システムを導入したロータリ除雪車

位置情報と除雪装置の動作を正確に再現

図版

除雪装置の動き

自動化の手順は、まず準備段階として、オペレータが積雪時の高速道路の路肩において実際にロータリ除雪車を運転しながら、手動でオーガやシュートを操作して除雪を行い、オーガの昇降やシュートの姿勢などを位置情報と共に記録する「ティーチング」を行います。記録するのは、CLASによって取得したロータリ除雪車の高精度位置情報や車両の方向、オーガの昇降動作、そしてシュートの動作です。シュートは状況に応じて最適な方向・距離に投雪するため、方向と角度を変える「旋回」、シュートの筒の長さを変える「伸縮」、筒の出口の開き具合で投雪の勢いを調節する「キャップ」の3つの要素を記録します。
このティーチングで、事前に位置情報と除雪装置の動作を記録しておき、同じ区間で再度除雪する際に、記録した内容を再生させます。こうしてオペレータは、運転席のステアリングや操作レバーなどに触れることなく、正確な走行及び除雪装置の操作を行うことができます。

2つのアンテナで位置情報を取得

アンテナの位置

GNSSアンテナ(赤丸部分)

2020年に自律走行の様子を公開した時点では、CLAS対応のGNSSアンテナ及び受信機が1組しか搭載されていませんでしたが、その後RTK対応のGNSSアンテナ及び受信機を1組追加し、車両の前部と後部にそれぞれアンテナを設置して、受信機も2つ設置することで、同時に2点の位置情報を取得して車両の方向を正確に把握できるようになりました。ネクスコ・エンジニアリング北海道の伊藤氏は、次のように説明します。
「以前は移動軌跡をもとに車両の方向を検知していましたが、ロール方向に(車体の前後の軸に対して回転するように)揺れると方向が狂ってしまうことがあり、アンテナを2つ使ってそれぞれの位置情報から方向を求める仕組みにしました。これで以前よりも高い精度で方向を把握できます」(伊藤氏)

受信機

運転席に設置された受信機(上がRTK対応、下がCLAS対応)

モニタ画面

ガイダンスモニターの映像

走行ラインを数センチ刻みで調整

ロータリー除雪車

除雪中の様子

伊藤氏によると、システム開発で苦労したのは、ティーチングを行う時の除雪車の速度と、その記録をもとに自律走行を行う時の除雪車の速度が異なると、シュートが動くタイミングが合わなくなる点でした。除雪車がゆっくりした速度の時に記録した動きを、速い速度の時に再生するとシュートの動きが間に合わなくなってしまうので、速度に応じてシュートが動くタイミングが最適になるように調整する必要がある訳です。
また、ティーチングで記録した除雪車の走行ラインを数cm刻みで細かく調整する機能も追加しました。これにより、除雪車が現場の雪の状況に応じて「右に5cm」「左に10cm」とリアルタイムで走行ラインをずらすことが可能となり、オペレータが狙ったラインを正確に走行できるようになりました。
さらにオーガやシュートの動きは、さらさらした雪やべったりと重い雪など、雪質に応じて昇降のタイミングや投雪の方向・勢いを変える必要があり、今回のシステムでは、ティーチングのパターンを複数記録できるようになっています。オペレータがその日、除雪を行う際の雪質や天候に応じて最適なパターンを選んで再生するという仕組みです。

将来は標識車や除雪トラックも自動化へ

今回導入した自動化システムは、このように走行状況により細部を調整できる余地を残した形となっていますが、それでも現場のオペレータからは、人によって除雪装置を操作するタイミングが異なるため、ティーチングで記録した操作を再生する際に違和感を覚えるという声や、自動運転を行う際は衛星測位の誤差を考慮して、除雪装置がガードレールに接触しないように約20cm(白線1本分の幅に相当)の余裕を持たせていますが、そこに煩わしさを感じるといった感想もあったといいます。
一方では「走行が楽になった」という好評価の声も寄せられており、同社では、課題がある点を認識しつつ、今後もシステムの導入を進めていく方針です。現在、ロータリ除雪車にはオペレータが2名乗車していますが、今後必要な安全対策等に取り組み、1名乗車での運用を目指していきます。また、現在は道央道の岩見沢IC~美唄IC間において自動運転システムを搭載したロータリ除雪車は2台稼働していますが、今後の展開はこの2台の運用状況から判断していく予定です。

伊藤氏は、みちびきのCLASについて次のように説明します。
「2020年に補強対象衛星数が17機に拡大して、CLASの精度はかなり良くなりました。CLASによる測位が不安定となった場合に備えて、今回、一時的にRTK(リアルタイムキネマティック)方式に切り替えるシステムも導入しましたが、RTKはモバイルネットワークが必要で、大規模災害が発生した場合は使えない可能性もあります。私たちは、これからもCLASをメインに使っていきたいと思います」(伊藤氏)

最後にNEXCO東日本の栗田氏に、今後の展望を話してもらいました。
「将来的には、ロータリ除雪車に追従して走る標識車の自動化も実現したいと考えています。また、路肩だけでなく本線を走る除雪トラックについては作業操作の自動化を検討しており、ロータリ除雪車より走行速度が速く難しい点はありますが、除雪作業の省力化・効率化を目指していければと考えています」(栗田氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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