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「みちびき×GPS!」特集が話題の『トランジスタ技術』編集部に聞く

2019年02月18日

1964年の創刊以来、雑誌を通じてアマチュア無線、半導体、コンピュータなどの情報提供を行ってきた月刊誌『トランジスタ技術』(通称:トラ技)。同誌は、3年前の2016年2月号と、昨年の2018年1月号でGNSSを特集に取り上げ、今年に入って出した2019年2月号では、みちびきを前面に押し出した特集を企画しました。エレクトロニクスの総合誌として半世紀以上も継続してきた同誌が、GNSS活用や高精度測位に対する関心や期待の高まりをどのように見ているのか。発行元のCQ出版社(東京・文京区)を訪ねて、話を伺いました。

「科学少年」の好奇心を意識して記事づくり

寺前編集長

寺前編集長

CQ出版株式会社 常務取締役で『トランジスタ技術』編集長の寺前裕司氏は、その想定読者層について「科学少年」というキーワードを挙げます。年齢も性別も、現役か元か、アマかプロかを問わず、好奇心とチャレンジする意欲をもった人たちを意識しながら記事づくりを進めていると言います。

「GPSを本格的に扱ったのは、約10年前の2008年2月号が最初です。最近では2016年2月号で、仕組みから応用までさらに踏み込んだ内容を扱った特集号を出しています。その号では高精度測位にも触れましたが、タイミングや基準周波数発生に重きをおいた内容でした。トラ技の読者の中にはアマチュア無線機やスペアナ(=電気計測器、スペクトラムアナライザの略)など、正確な周波数源を必要とする人が多いのではないかと思ったからです。GPSからの信号をソースにすれば、非常に安価に、高精度の時刻同期や安定した周波数が得られるところに、メリットを感じてもらえるのではないかと...」(寺前編集長)

2016年2月号

2016年2月号

2016年2月号では、この特集と連動する形で発売された電子工作キット「GPS同期10MHzPLLシンセサイザ製作キット」も人気を呼びました。

 

さまざまな産業に横串を通すGNSS技術

これを受け、次なるGPS特集の企画が進められました。

「2017年にはみちびき2~4号機の打ち上げがありましたが、それを意識しつつ特集号の企画を準備し、高精度測位にフォーカスしたGNSS活用の特集を2018年1月号で出しました。併せて、実際にキットを製作して持ち帰れるセミナーを実施したところ、座席はすぐに埋まり、追加開催が必要になるほどでした。この年で一番の売り上げを記録したのも、この号ですね」(寺前編集長)

2018年1月号

セミナーには、大学や高専などの教育機関、自動車関連、農業、測量関係、計測技術関係などから申し込みがあり、GNSS技術が幅広い産業分野から注目されていると実感したそうです。また、この号に合わせて企画された、みちびき対応受信チップを使った受信キットも人気を集めました。

みちびき対応受信チップを使った受信キット

「高精度測位にチャレンジしたい人を対象にした、決して初心者向けとは言えないキットでしたが、初期ロット50台が蒸発するように捌(さば)け、結局その20倍近くが売れるほどの人気でした」(キットを担当した編集制作部の内門和良氏)

「“科学少年”たちは、この技術分野が非常に目新しく面白いということに気付き始めています。GNSSによる位置制御や時刻同期は、さまざまな産業分野に横串を通す技術でもあります。私自身も、雑誌編集者として長年仕事をしてきた中で、このテーマに今まで経験したことのないような新しい手応えを感じるようになりました。鉱脈を掘り当てた、という感覚です」(寺前編集長)

「センチメータ級測位の時代は絶対来る」

2019年2月号

2019年2月号

2018年11月のみちびきサービス開始を受け、2019年2月号ではさらに衛星測位の特集号を企画。特集の中では、みちびきが提供するセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)についての踏み込んだ解説記事も掲載しました。

「CLASやMADOCAなどの高精度単独測位は、技術的にも非常に高度で難解なものです。ハードルも高かったのですが、執筆者の方と何度もやりとりしながら、どうしたら読者に伝わるか、面白いと思ってもらえるか、に知恵を絞りました」(この号の編集を担当した及川健氏)

「これまでの反響を通じ、個人的にはセンチメータ級測位の時代は絶対に来るという確信が生まれています。そこまで詳しくする必要があるのかというぐらいの情報を提供し、いろんな分野の方に興味をもってもらい、一緒にその時代をつくっていきたい。こんな面白いネタをつかんだからには、絶対離さないぞ! という思いです」(寺前編集長)

同号では高精度測位の実力を実感してもらう工夫として、茨城工業高等専門学校・岡本修教授の協力のもと、軸にアンテナを装着した毛筆で「みちびき」としたため、その軌跡も併せて紹介しました(下の写真、左端の冊子表紙)。

(左から)編集部の及川氏、寺前編集長、キット担当の内門氏

(左から)編集部の及川氏、寺前編集長、キット担当の内門氏

RTK基準局用アンテナを指差す内門氏

内門氏が指差すのは、編集部の屋上に設置した2周波タイプのRTK基準局用アンテナ。無保証ながら無償で利用できる「勝手基準局」として公開し、広い層の体験・参加を呼びかけている

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

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