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[報告] S-NET第2回分科会(和歌山)

2017年02月27日

内閣府宇宙開発戦略推進事務局は1月19日、宇宙関連の新産業・サービス創出をテーマとしたネットワーキング組織「スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(略称:S-NET)」の第2回分科会を、和歌山市内で開催しました。当日は「宇宙×レジリエントな国土形成」と題して、宇宙関連の技術を防災に活かす取り組みの事例発表や議論などを行いました。

会場の和歌山県民文化会館

[開会挨拶] 地域で実際に使えるシステムを実装したい

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の守山氏

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の守山氏

冒頭、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の守山宏道参事官は、昨年は和歌山市で「第1回宇宙×G空間ワークショップ」を2月に開催し、続いて県内においてみちびきの衛星安否確認サービスQ-ANPIの実証実験を行ったと紹介し、地域の防災システムの中で実際に使えるシステムを実装していくことを見据えて活発な議論をしていきたいと挨拶しました。

[来賓挨拶] みちびきは新産業の創出につながる

和歌山県総務部危機管理局の藤川氏

和歌山県総務部危機管理局の藤川氏

次に来賓として和歌山県総務部危機管理局の藤川崇局長が登壇しました。藤川氏は、みちびきの高精度測位機能は、地盤の変化や津波の観測、自動車の交通管理などに欠かせないとして、このような機能は単に防災にとどまらず、新しい産業の創出につながるとの期待を語りました。その上で、今回の分科会は防災分野が中心ではあるものの、第一線の研究者の講演はビジネスにも役立つと確信していると挨拶しました。

▽防災・減災概論

[講演1] 挑戦を繰り返すことで災害対応が進化する

京都大学防災研究所の畑山氏

京都大学防災研究所の畑山氏

最初に京都大学防災研究所の畑山満則教授が、「ICTを活用した防災対策の現状と課題~つながる防減災対策の実現」と題して講演を行いました。畑山氏は、災害におけるさまざまな問題を「こんなことが可能になれば、こうして解決できるのに」といった技術の問題に落とし込めれば、達成すべき技術目標ができるため、それに向けていろいろなやり方を考えられるとしました。さらに、技術を提供できる人などがつながることにより“挑戦”が生まれ、“挑戦”を繰り返すことでボトルネックが解消され、災害対応が進化していくと語りました。

[講演2] 県内企業との連携を進めたい

和歌山大学災害科学教育研究センターの秋山氏

和歌山大学災害科学教育研究センターの秋山氏

続いて和歌山大学災害科学教育研究センターの秋山演亮教授が、「つながる防災対策の実現に向けた宇宙技術の役割と人材育成」と題して講演しました。秋山氏は、超小型衛星を使って地上のセンサーデータの収集システムを構築するプロジェクトや、「世界津波の日」に和歌山県内で実施したみちびきのQ-ANPI防災利活用の実証実験などを紹介しました。さらに、地上のさまざまな場所にIoTセンサーを置くため、センサーユニット「あひるさんボード」を使って、ふだんから地元の現場を調査するネットワークを作る試みなどを紹介し、県内企業と連携してこの動きを進めていきたいと語りました。

[講演3] 宇宙技術と融合した新サービス登場に期待

日本リモートセンシング学会の伊東氏

日本リモートセンシング学会の伊東氏

一般社団法人日本リモートセンシング学会の伊東明彦氏(事務局長補佐)は、防災の観点からリモートセンシングの利活用法を研究している「国土防災リモートセンシング研究会」の取り組みを紹介しました。さらに、国土管理や防減災について衛星リモートセンシングの処理実績が蓄積され、利用方法や効用・限界が整理されると同時に、超小型衛星による多頻度モニタリングによって災害時利用の課題が解決されつつあると現状を分析。今後はみちびきなどの宇宙技術との融合により、新サービスの登場や高度化が期待されると語りました。

▽具体的な取り組み事例

[事例1]ドローンバードで迅速な地図づくり

クライシスマッパーズ・ジャパンの古橋大地氏

クライシスマッパーズ・ジャパンの古橋大地氏

NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパンの古橋大地理事長は、自由な地理空間情報を市民の手で作るプロジェクト「オープンストリートマップ(OSM)」や、災害時にドローンを使って空撮し、OSMを使って迅速に地図を作るプロジェクト「ドローンバード」、航空写真を共有するプラットフォーム「オープンエアリアルマップ(OpenAerialMap)」などを紹介しました。さらに、全国各地のドローン操縦者をつなぎ合わせてチームとして地域で活躍できる仕組みを作るため、さまざまな自治体と防災協定を結んでいることも説明しました。ドローンバードはさまざまな宇宙技術を活用したいと考えており、災害時には特例で衛星データを無料化するなど、使いやすいライセンスで提供してほしいと語りました。

[事例2] 道路の被災状況を段差計測アプリで調査

バンプレコーダーの牧内氏

バンプレコーダーの牧内氏

バンプレコーダー株式会社の牧内穂高氏(取締役)は、スマートフォンを使った道路段差計測アプリ「BumpRecorder」を活用した道路インフラの日常・被災時の見守りサービスを紹介しました。このアプリをインストールしたスマートフォンを車両に設置して走行すると、災害時でも道路の被災状況を迅速に調査できます。ただし、このような計測は被災後の計測だけでは不十分で、平常時にも計測しておき、被災時と比較する必要があるため、同社は道路調査会社のグローバル・サーベイ株式会社の協力により、2012年から日本全国の計測を実施しているほか、IoT端末を使った計測など、平常時活用の促進に取り組んでいると語りました。

[事例3] 地盤・インフラ変位モニタを事業化

日本電気株式会社の村田氏

日本電気株式会社の村田氏

日本電気株式会社(NEC)電波・誘導事業部の主席技師長で、データサイエンス研究所の主席技術主幹を務める村田稔氏は、人工衛星データの解析による地盤・インフラ変位モニタリングのサービスの開発・事業化への取り組みを紹介しました。同サービスは、地表の人工構造物や地盤の経年変位(mm/年)を、人工衛星に搭載した合成開口レーダーで取得したデータの解析により非常に高い精度で導出/提供するもので、広域のスクリーニングや予防保全、補修後の健全性把握、詳細調査の優先付けなど、さまざまな用途に活用できます。今後は、他データと組み合わせた解析や“見える化”技術の深耕により、多様なバリューチェーン(Value Chain、価値連鎖)を構築し、IoTやデジタルデータとの融合によって安全・安心な社会造りに貢献したいと語りました。

▽パネルディスカッションで活発な議論

国土技術政策総合研究所の木村氏

国土技術政策総合研究所の木村氏

パネルディスカッションは、講演を行った6名の登壇者に加えて、国土技術政策総合研究所道路構造物研究部の木村嘉富部長を加えた7名によって行われました。モデレーターは、京都大学防災研究所の畑山氏が務めました。

宇宙技術や人工衛星などによる計測技術を使って地域の人々が災害にどのように対応していくのかという課題や、リモートセンシングデータの活用・普及に向けた課題、今後取り組むべきプロジェクトなど、さまざまなテーマについて活発な議論が行われました。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

参照サイト

「S-NET」分科会(2016年度)

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