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[報告] NECがみちびきに関するメディア向け説明会を開催

2026年01月13日

※本記事は、みちびき5号機打上げ(2025/12/22)の約1カ月前に行われた「みちびきに関するメディア向け説明会」の紹介記事であり、5号機の運用を前提とした内容を一部含みますが、当日の説明内容をそのままお伝えするものです。


日本電気株式会社(NEC)は2025年11月18日、内閣府、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、三菱電機株式会社と共同で、準天頂衛星システム「みちびき」に関するメディア向け説明会を東京・港区のNEC本社ビルにて開催しました。この会合は、みちびきを活用したサービスや、みちびきの開発・運用に携わる各者の役割を説明するためのもので、新聞社やネットニュースなど多くのメディア関係者が参加しました。会場にはみちびきについて解説する展示ブースも設置され、見学の時間も設けられました。

説明会の会場

会場に集まったメディア関係者

説明会の冒頭、NECセンシングプロダクト統括部の吉川志郎統括部長が挨拶に立ち、「みちびきは多くの研究者や企業等に参加いただき、力を合わせて日本の宇宙の技術を結集して作り上げていくものです。高精度の測位サービスとアプリケーションを提供することで、暮らしや産業のあらゆる場面で役立つ社会のインフラとして育てていこうと取り組んでいます」と語りました。

吉川統括部長

NECの吉川統括部長

準天頂衛星システムみちびき/いよいよ7機のフル体制に!
── 内閣府 三上参事官
三上参事官

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官(準天頂衛星システム戦略室長)は、みちびきの概要及び運用体制について、次のように説明しました。

図版-1

みちびきは内閣府がシステムを保有し、衛星の製造は三菱電機が担当し、追跡管制局や主管制局、監視局などの地上システムはNECが中心となって整備しています。これに加えて、JAXAがミッションペイロードのうち高精度測位システム(ASNAV)の開発を担当し、準天頂衛星システムサービス株式会社がみちびき全般の運用を担当しています。

図版-2

みちびきの高精度測位サービスの利活用は拡大しており、2025年8月末の時点で対応製品数は465件に上り、受信機やスマートフォン、カーナビ、スマートウォッチなど50分野にわたります。みちびき自体も2024年度から新たに信号認証サービスの運用を開始したほか、将来に向けてスマートフォンのような一般的な受信機でも測位精度が向上するASNAVの開発にも取り組んでいます。今後追加の衛星が打ち上げられて7機体制となり、将来は11機体制へと拡張する予定です。

図版-3

三上参事官は、現在、様々な業界に向けて広報を実施中であり、みちびきを活用したより良いサービスやビジネスを呼び起こしてくれるような記事や放送を期待していると、参加したメディア各社に呼びかけました。

準天頂衛星システムの提供サービス「CLAS」の概要
── 三菱電機 早瀬氏
早瀬氏

三菱電機 宇宙総合システム部でCLAS利便性向上サブプロジェクトマネージャーを務める早瀬夏子氏は、CLAS(センチメータ級測位補強サービス)の概要を次のように説明しました。

図版-4

三菱電機はみちびきの衛星バスシステムに加えて、CLASのサービスプロバイダーも担当しています。CLASは衛星測位の誤差を補正するための測位補強情報を配信してセンチメータ級の高精度測位を可能とするサービスで、水平6~12cm程度の位置精度を実現します。みちびきの衛星から誤差補正情報を直接配信することにより、専用の受信機を利用すれば日本全国で、だれもが無償で利用できます。

図版-05

近年の太陽活動の活発化に伴い、太陽面爆発現象(太陽フレア)が発生した場合に電離圏などの宇宙環境が変動し、測位精度の低下が発生している課題への対策として、CLASの補強対象衛星(誤差を補正できる衛星)を増加させることにより、安定した高精度測位を実現すると共に都市部などにおけるCLASの可用性を向上させるサービス高度化の取り組みも行っています。

図版-6

今後はみちびき7機体制や欧州の衛星測位システムであるガリレオ(Galileo)など、将来増える測位衛星も有効活用する方針です。一つのみちびき衛星の信号に含められる情報の容量には限りがあるため、CLASの補強情報を2パターンに分けて複数のみちびきの衛星からそれぞれ送信することで補強対象衛星を増やすことにより、高精度測位の安定化と可用性の向上を促進します。

準天頂衛星システム「みちびき」事業におけるJAXAの取り組み
── JAXA 松本氏
松本氏

JAXA第一宇宙技術部門 高精度測位システム(ASNAV)プロジェクトチームの松本暁洋プロジェクトマネージャは、みちびきの事業においてJAXAがこれまで果たしてきた役割を次のように説明しました。

図版-7

JAXAはみちびき初号機の開発・実証の事業を担当し、「みちびき」という愛称はJAXAが行った公募で決まりました。開発後も2010年9月から2017年2月まで約6年半にわたり測位サービスの運用を実施した後、その運用を内閣府に移管しました。4機体制の構築に向けては、初号機を開発・実証した知見をもとに技術支援を実施し、初号機のLEX信号で実証した単独精密測位の技術をもとにMADOCA-PPP(高精度補強サービス)を2022年9月から試行し、2024年4月から運用しています。

図版-8

2017年からは7機体制に向けた新規衛星に搭載する測位精度向上のための新たな技術開発に着手し、ASNAVプロジェクトとして開発及びその実証運用に取り組んでいます。ASNAVは従来のみちびきのシステムに衛星間測距機能、衛星/地上間測距機能を加えて、より正確にみちびきの位置と時刻を特定し、スマートフォンのような一般的な受信機でも測位精度を向上させることを目標としています。将来すべてのみちびきの衛星に衛星間測距システムと衛星/地上間測距システムが搭載されれば、現状は5~10mの測位精度が約1mに向上する見込みです。

図版-9

さらにその先の11機体制に向けた取り組みとしては、ASNAVの成果を運用システムに実装すると共に、3号機後継機と8号機の開発に2025年度から着手しています。新規衛星では、軌道制御に伴うサービス中断時間を短縮し、配信信号の書き換えに対応する測位信号生成装置などを搭載する予定にしています。

準天頂衛星システム「みちびき」へのNECの貢献
── NEC 西尾氏
西尾氏

NECスペースプロダクト統括部の西尾昌信プロジェクトマネージャは、NECによるみちびきの事業への貢献について次のように説明しました。

図版-10

NECはみちびき初号機から一貫して測位ミッションペイロード及び地上システムの開発を担当すると共に、PFI事業の代表企業としてサービス運用を含む全体システムも担当しています。

図版-11

測位ミッションペイロードでは、衛星から測位信号を生成して地表へ送るシステムをNECが開発し、5~7号機では新たに衛星間測距機能、衛星/地上間測距機能のための高精度測距システムペイロードを新規搭載すると共に、地上システムにおいても衛星/地上間測距機能を具備します。測位ミッションペイロードの開発においては、電気性能試験や宇宙空間を模擬した熱真空試験などの試験を行っています。
新たに搭載する測位ミッションペイロードでは、従来よりも安定度が高い原子時計に対応するタイムキーピングユニットを新規開発し、衛星基準クロックの安定度向上を実現すると共に、リソース削減の観点から複数信号の変調器を1台の変調器に統合しました。さらに、衛星測位信号の異常時に軌道上で信号の品質を監視する「オンボードインテグリティ監視機能」も実装しました。また、高精度測距システムペイロードは、衛星間や衛星/地上間の距離を精密に計測するために、衛星内部で生じる遅延時間や変動量を高精度に管理することで距離を超精密に計測し、遠くへ電波を送ることができるよう高出力の電力増幅を行います。

図版-12

地上システムでは、追跡管制局と衛星が24時間365日リアルタイムに通信を行っており、みちびきと常時接続できるように種子島以南に配置すると共に、災害発生時に備えて配置場所を分散しています。7機体制に向けては、高機能化した追跡管制局4局を新設(うち1局は改修)しました。衛星/地上間測距のために7.6mアンテナの電波中心をセンチメータレベル、局内遅延時間を10のマイナス10乗秒レベルで管理・補正しています。

会場風景

質疑応答の様子

4氏がそれぞれの立場からみちびきについて説明した後、質疑応答が行われました。メディア関係者からはASNAVとCLASの違いや、みちびき5号機の打上げによって実現するメリット、みちびきに採用されている衛星バスの技術進化、11機体制に向けた衛星バスの開発、CLASのユースケース、みちびきの海外展開、信号認証サービスの対応受信機など様々な質問が寄せられました。

展示ブース

展示ブースの様子

展示品-1

左から時刻保持ユニット(TKU)、測位信号受信機(NAV-RX)、L帯変調器(MOD)、追跡管制局のアンテナ模型

説明会の会場には展示ブースも設けられ、みちびきのサービスに対応した各社の受信機やゴルフウォッチが展示されたほか、みちびきに搭載されている時刻保持ユニット(TKU)や測位信号受信機(NAV-RX)、L帯変調器(MOD)、みちびきの追跡管制局のアンテナ模型、みちびきやASNAVの概要を説明するためのジオラマなどが展示されました。展示ブースにおいても見学者から様々な質問が寄せられ、説明員が解説することによりみちびきへの理解を深めていただきました。

展示品-2

ASNAVの解説模型

展示品-3

みちびきの仕組みを説明するジオラマ

展示品-4

上段は株式会社コアのCLAS・MADOCA-PPP・信号認証サービスに対応した受信機「Cohac∞ Ten++」(左)とCLAS対応受信機「Cohac∞ Ten」(右)、下段はビズステーション株式会社のCLAS対応受信機「RWS.DC」「RWS.DCM」「RWM.DC」(左)、グリーンオン株式会社のSLAS(サブメータ級測位補強サービス)・災危通報(災害・危機管理通報サービス)対応ゴルフウォッチ「THE GOLF WATCH A1 III」(右)

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