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[報告] GPS・QZSSロボットカーコンテスト2019を開催

2019年11月18日

第13回目を迎えた「GPS・QZSSロボットカーコンテスト2019」が11月3日、東京海洋大学 越中島キャンパス(東京・江東区)で開催されました。本コンテストは、衛星測位しながら自律走行するロボットカーで獲得ポイントを競うイベントです。
一般社団法人測位航法学会が主催し、一般財団法人衛星測位利用推進センター、公益社団法人日本航海学会 GPS/GNSS研究会、準天頂衛星システムサービス株式会社が共催に加わるこのコンテストは、衛星測位に関わる人材の育成と技術レベル向上などを目的に毎年秋に開催されています。今年も出走する19チームが秋晴れのグラウンドに集まりました。ロボットカーには、ほぼすべてのチームがみちびきの測位信号を利用しています。

今年はダブルパイロンにREIWAポイント加算

ロボットカーが2つのウェイポイント(Waypoint)に置かれたパイロン(三角コーン)間を8の字走行する「ダブルパイロンレース」は、チームの技術レベル向上に合わせルールが改定されてきました。所定時間内の周回数を競い、終了時にスタート地点に戻れば高いポイントが与えられるのは例年どおりですが、より精密に走行制御をすることで、さらに高得点が狙える競技となっています。
中でも、昨年までとの大きな違いは「REIWAポイント」です。メインパイロン周回後に、メインパイロンとサブパイロンの間を通過するか、サブパイロンに触れることで、REIWAポイント(30ポイント)を獲得できます。

今年のダブルパイロンにはREIWAポイントが加算された

東京海洋大学に設置されているRTK基準局の補強情報が利用でき、他にはジャイロセンサーと地磁気センサーも使用可能ですが、競技中の遠隔操作は不可となっています。競技をスムーズに進めるためグラウンドに2面の会場が設定され、パイロンが置かれた緯度・経度の座標値が競技前に公開されます。出走するチームはこの座標値を走行制御のプログラムに書き込んで、スタートに備えます。競技は、2回走行したうち高いほうのポイントで順位が決定されます。

TDU_Craft.Labの「MegaStar」が優勝

MegaStar(TDU_Craft.Lab)

MegaStar(TDU_Craft.Lab)

今回の優勝は、TDU_Craft.Lab(東京電機大学)の「MegaStar」。RTK基準局を持ち込み測位精度の向上とFIX時間短縮を狙い、ラジコンカーそのものの走行性能も相まって、高得点を記録しました。測位モジュールはREACH M +(EMLID)、制御用マイコンはAdafruit HUZZAH32を使用しています。

TMB(パイオニア位置推定集団_F組)

TMB(パイオニア位置推定集団_F組)

準優勝は、社会人チームであるパイオニア位置推定集団_F組の「TMB」。1回目の走行ではグラウンドの芝が駆動機構に絡まるトラブルもありましたが、2回目で高得点を獲得。終了時にスタート位置でピタリと停止し、ニアピン賞(0cm)も受賞しました。測位モジュールはZED-F9P(u-blox)、制御用マイコンはRaspberry Pi 3 Model B+でした。

Roboter Auto(Team MJ2)

Roboter Auto(Team MJ2)

第3位は、Team MJ2(名城大学)の「Roboter Auto」。パイロン激突やボディ脱落などのトラブルを乗り越えての入賞となりました。測位モジュールと制御用マイコンは、パイオニアチームの「TMB」と同じ構成でした。

上位入賞して表彰を受けたチームの代表者たち

上位入賞して表彰を受けた(左から)パイオニア位置推定集団_F組(準優勝)、TDU_Craft.Lab(優勝)、Team MJ2(第3位)の代表者

視聴者投票で「KTN-250R」と「ゴリアテ」選出

競技終了後にはライブ中継の視聴者による投票が行われ、イベントを盛り上げた2チームに賞が送られました。静岡大学の木谷研究室は2輪車「KTN-250R」で出走。安定走行のためにスピードを上げたところコントロールを失い観客席へ突入するひと幕や、部品の制御用マイコンが脱落して場外に飛び出すシーンも見られました。個人参加の「ゴリアテ」は、クローラーでゆっくりゆっくりとボディを軋ませながら走行し、終了時にはスタート地点から1cmのところにピタリと静止し、白旗を上げるギミックで大きな拍手を浴びました。

バイクを手に持ち笑顔の木谷研メンバー

バイクを手に持ち笑顔の木谷研メンバー

ゴールして白旗を上げるゴリアテ

ゴールして白旗を上げるゴリアテ

2周波モジュールが当たり前のツールに

今大会の印象を、茨城工業高等専門学校の岡本修教授(下の画像右)は、「走行性能の高いマシンが登場し、さらに競技ルールを拡張する必要を感じました。去年は見るだけだった2周波の測位モジュールが、当たり前の便利ツールとして使われていたのが感慨深かったです」と話してくれました。

静岡大学の木谷友哉准教授(下の画像中央)も、「2周波モジュールで自分の座標が分かった状態からスタートできるということは、制御ロジックの出来が競技結果に反映されます。また、ラジコンバイク用に軽量な2周波アンテナを探して搭載したら、知り合いの防災研究者に『ドローンに載せたい』と興味を持たれたりもしました。コンテストのための取り組みが、さまざまな分野に波及してほしいと思います」と語りました。

※大会をインターネット中継したNVSのYoutubeチャンネルから(キャプチャ画像)

※大会をインターネット中継したNVSのYoutubeチャンネルから(キャプチャ画像)

スポンサーが提供する個性的な賞品も話題の一つですが、シャープ製タブレットコンピュータを提供したアイサンテクノロジー株式会社と、収穫したばかりの新米を提供した岩城農場に、今年は新たに小峰無線電機株式会社とソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が加わりました。小峰無線電機は、個人向け販売開始前のみちびき対応の小型2周波対応アンテナを、ソニーセミコンダクタソリューションズは、GNSS受信機能をオンボードで備えたみちびき対応のワンボードマイコン「SPRESENSE」を提供し、参加チームの関心を集めました。

小型2周波対応アンテナ(小峰無線電機)

小型2周波対応アンテナ(小峰無線電機)

SPRESENSE(ソニーセミコンダクタソリューションズ)

SPRESENSE(ソニーセミコンダクタソリューションズ)

毎年、大会運営に関わっている熊本高等専門学校の入江博樹教授は、「2周波測位モジュールが登場した初めての年で戸惑った部分もあったと思います。来年の大会でさらに上手に使いこなしてくれるのが今から楽しみです」と話し、大会を締めくくりました。

公式サイトには、大会要項や過去年分も含めた競技結果などの情報が掲載されています。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)