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[報告] ILS 2024でピッチやブース展示を実施

2025年01月20日

内閣府は、2024年12月2~5日に都内で開催された「イノベーションリーダーズサミット(ILS)2024」(運営:ドリームゲート/株式会社プロジェクトニッポン、後援:経済産業省/新エネルギー・産業技術総合開発機構/東京都/日本政策金融公庫/オーストラリア大使館)に参加しました。ILSはアジア最大規模のオープンイノベーションマッチングイベントで、国内外の主要機関が選出した有望スタートアップがピッチ登壇やブース展示、セミナー、交流会などを実施し、大手企業との商談や協業などを図ります。アドバイザリーボードとして参加した内閣府は、初日の12月2日にピッチ(短時間のプレゼンテーション)を開催し、みちびきを活用したビジネスを展開する4社が登壇すると共に、12月2、3日の2日間、会場内に展示ブースを出展しました。

三上参事官

内閣府の三上参事官

ピッチのオープニングに登壇した内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長の三上建治参事官は、みちびきが2024~25年度にかけて追加となる3機を打ち上げて2026年度から7機体制となり、さらに安定的に利用可能となると紹介しました。そして、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)やSLAS(サブメータ級測位補強サービス)などのサービスは社会に役立つと確信しており、イベント来場者とのマッチングによる新たなビジネス創出に期待していると述べました。

講演の様子-三上参事官
和田企画官

内閣府の和田企画官

続いて内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の和田弘人企画官が、みちびきの特徴や、提供するCLASやSLASなどのサービスの概要を解説しました。和田企画官は、みちびきは地理空間情報を高度に活用する「G空間社会」における基盤インフラであり、CLASに対応した受信機の小型化・低価格化が進んでいると現状を説明しました。また、2024年度からMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)がアジア・オセアニア地域で実用サービスとして開始されており、沿岸域から離れた洋上における高精度測位の利活用拡大に期待を表明しました。このほか、2024年度から災危通報(災害・危機管理通報サービス)においてJアラート情報(ミサイル発射情報)及びLアラート情報(避難指示)の配信を開始したことや、2025年度から豪・東南アジア諸国の災害情報も配信予定である点を説明しました。さらに、位置情報や時刻情報の信頼性を確保するため、信号認証サービスを開始したことも紹介しました。

講演の様子-和田企画官
大野氏

エゾウィンの大野氏

エゾウィン株式会社の大野宏CEOは、みちびきの高精度測位を活用したDX支援システム「レポサク」を紹介しました。レポサクは、みちびきに対応した端末を使って現場の行動データを収集し、スタッフ間で共有して農作業や自治体サービスなどの現場を効率化する支援サービスです。2023年までは、現場の行動データを収集するデバイスとしてSLAS対応のGNSSロガーを使用していましたが、今年発売した新端末ではCLASを採用して、位置情報の記録をより高精度に行えるようになりました。大野氏は、端末をUSBケーブルで接続するだけで簡単に記録を開始できるため、関係者すべての行動データを取りやすく、作業計画の立案や作業進捗の報告がスムーズになる点をアピールしました。また、牛が食べる混合飼料を作って農家に配達するTMRセンターにレポサクを導入したところ、収穫作業効率を18%向上させ、コントラクター(農作業受託組織)の事務作業時間を58%削減できたことも紹介しました。同社は今後、ごみ収集や除雪、パトロール、林業、バスなど他業種への展開も図る予定で、実証のための特別プランを提供中とのことです。

講演の様子-大野氏
五十嵐氏

ジェイアール東日本企画の五十嵐氏

株式会社ジェイアール東日本企画の五十嵐稔部長は、みちびきの災危通報に対応したデジタルサイネージの配信管理システム「Signadia(シグナディア)」を紹介しました。Signadiaは、みちびきの災危通報データを直接受信し、静止画やテロップにより、災害時の第一報をディスプレイに表示できるデジタルサイネージの配信管理システムです。五十嵐氏は、災危通報に対応したGNSS受信機を内蔵するSTB(セットトップボックス)をディスプレイに接続することで、地上の通信インフラ(インターネットや携帯電話回線など)が途絶した状態でも、みちびきが配信するL1S信号を受信し、地震や津波などの災害情報を表示できると、その機能を解説しました。また、現在は緊急地震速報や津波、洪水、台風など10区分の災危通報データを受信可能で、今後はLアラート及びJアラートへの対応や、音や回転警告灯による通知機能の強化、災危情報のネットワーク配信への対応などを検討中としました。避難所のほか、地域の人が集まる場所や学校などに設置し、非常時だけでなく平常時にも使える機能を充実させていく方針だと説明しました。

講演の様子-五十嵐氏
伊藤氏

ブルーオーシャン研究所の伊藤氏

株式会社ブルーオーシャン研究所の伊藤喜代志代表取締役は、みちびきのCLASに対応した海象観測ブイを紹介しました。このブイは、高精度測位による緯度・経度・高度を通信でクラウドサーバーに送信し、それをAIで解析して波高や流れを推定することで、海の状態をリアルタイムで観測できます。伊藤氏は活用例として、観光フェリーの接岸判定支援やコンビナート桟橋での輸出入港湾管理支援、定置網・養殖業の操業支援など、海洋観測プラットフォームとしてさまざまな用途に使われていると説明しました。今後は、洋上風力発電向けにリアルタイム海洋環境モニタリングシステムの提供を検討しており、このシステムを漁業者と情報共有すれば環境アセスメントにも活用できると、その可能性を示しました。同社は海象観測ブイを全国各地の海に設置することで観測コンステレーションの構築を目指しており、津波観測や異常気象対策への活用を検討しているほか、海洋観測ドローンを活用した海洋予報システムの開発にも取り組んでいく方針だと説明しました。

講演の様子-伊藤氏
藤田氏

LocationMindの藤田氏

LocationMind株式会社の藤田智明取締役は、GNSSのスプーフィング(なりすまし)により位置情報が偽装されていないかをチェックして信頼性を向上させる「位置認証サービス」を紹介しました。みちびきの信号認証サービスに対応したGNSS受信機とAI分析技術を組み合わせて、位置情報の信頼性を評価するサービスであり、ドローンや陸上物流、船舶、農機、港湾、マイクロモビリティ、要人監視など様々な分野をターゲット領域としています。藤田氏は、2023年度みちびきを利用した実証事業において、このサービスを活用したトラックのCO2排出量測定の検証を行ったとして、概要を解説しました。同社は配送トラックの軌跡データやマップマッチング技術、場所情報のデータベースなどを組み合わせて、位置情報をもとに稼働状況を解析する取り組みも行っており、今後は、位置情報を活用して高度な分析を実施したいというニーズにも対応していく方針とのことです。

講演の様子-藤田氏
展示ブース-1

みちびき関連の展示ブース

展示ブース-2

ピッチに登壇した4社は12月2、3日の2日間、同じ会場内に設置した展示ブースでビジネスアイデアや提供サービスを紹介しました。エゾウィンはCLAS対応のGNSSロガーを、ジェイアール東日本企画はSignadiaのSTBとデジタルサイネージを、ブルーオーシャン研究所はみちびき対応の海象観測ブイを、LocationMindは信号認証サービスに対応したGNSS受信機をそれぞれ展示しました。会場にはオープンイノベーションに関心を持つ人や投資家などが数多く訪れ、各社のサービスや製品の詳細な話を聞く人や、みちびきへの興味を示してブースに立ち寄る人などで賑わいました。

GNSSロガー

レポサクのGNSSロガー

デジタルサイネージ

Signadiaのデジタルサイネージ

海象観測ブイ

ブルーオーシャンの海象観測ブイ

受信機

LocationMindの受信機

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