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[セミナー] NEDOと楽天がLBJ2019でみちびき活用のドローン研究開発を報告

2019年06月27日

千葉・幕張メッセで6月12~14日に開催された「ロケーションビジネスジャパン(LBJ)2019」。展示会場に設置された講演スペースでは、位置情報の関連したさまざまな企業や団体によるセミナーが行われました。その中から、6月13日に行われた「DRESSプロジェクトにおける準天頂衛星を活用したドローンの研究開発状況」を紹介します。

ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクトを推進

このセミナーでは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の宮本和彦氏(ロボット・AI部 プロジェクトマネージャー)と、同機構が推進する「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)」に参画している楽天株式会社の久住仁氏(ドローン・UGV事業部NEDOプロジェクトグループ マネージャー)の2名が登壇しました。

NEDOの宮本氏

NEDOの宮本氏

宮本氏は、将来ドローンが活躍する社会のビジョンとして、「多くの物流ドローンが都市部で飛行できる社会」、「有人ヘリコプターなどと同一空域で安全に飛行できる社会」の2つを挙げました。2020年代には宅配便の取り扱い数が年間50億個に達する見込みで、物流においてドローンが活躍する社会が訪れると予測されます。また、ドクターヘリの配備も増加しており、2020年台には80機程度が配備される見込みです。こうした中、有人ヘリコプターとドローンとのニアミスを確実に回避する技術を確立する必要があります。

そのためNEDOは、ドローンによる12kmの自律飛行や、有人機と無人機の同一空域飛行、4機のドローンの同一空域飛行による遠隔巡回警備などの実証実験を行い、同一空域・複数ドローン事業者のための運行管理システムAPIの開発や、ドローンに搭載した衝突回避システムの探知性能試験、みちびきを活用した物流ドローンの配送実証実験など、さまざまな研究開発を進めてきました。

運航管理システムにおける飛行状況管理画面イメージ(出典:NEDO)

運航管理システムにおける飛行状況管理画面イメージ(出典:NEDO)

福島ロボットテストフィールドで行われた飛行試験の飛行経路図(出典:NEDO)

福島ロボットテストフィールドで行われた飛行試験の飛行経路図(出典:NEDO)

また、ロボットやドローンに関する国際標準化も推進しており、福島県南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」にドローンの相互接続性を実験できる環境を整備する予定です。福島県は、隣町である浪江町との約13kmの距離をドローンが行き来できるような飛行ルートを作る予定で、NEDOとしても今後飛行試験で活用していきたいと考えています。

参考情報

無人のドローンで新たな産業革命を起こしたい

楽天の久住氏

楽天の久住氏

続いて楽天の久住氏が、ドローン配送におけるみちびきの活用について説明しました。同社は今後、高齢化社会の進展により日用品の配送ニーズが高まると想定しており、配送ドライバーの不足などを考慮して、ドローンなどの無人ソリューションで新たな産業革命を起こしたいと考えています。この方針に基づき、「楽天ドローン」では「新たな利便性提供」「物流困難者支援」「緊急時のインフラ構築」の3つの事業に取り組んでおり、2016年から現在までさまざまな実証実験やサービス試験運用を続けてきました。

みちびきについては、GPS補完機能により、都市部でのドローン配送において衛星電波のマルチパス(直接届く電波と、ビルや山などに反射して届く電波が混ざって受信されること)を低減させること、そしてセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)により、機上や地上に高価な機材を設置しなくても個宅の庭先などへの配送を可能にできることの2つを活用ポイントと考えており、緊急時には災害インフラとしての活用も目指しています。

ドローンポート(出典:NEDO)

ドローンポート(出典:NEDO)

ドローンの実証実験は、今年2月に福島ロボットテストフィールドで運行管理システムと連携した10機のドローンを同時飛行させる実証実験に参加しました。そこでは、荷物収納機能を備えた電子鍵付きドローンポートとドローン運航者向けのドローンポート管理システムなどを開発して、注文から配送までをシームレスにつないだ運行管理を実施しました。このドローンポートは幅5m34cm、高さ1m97cmの大きさで、上部に開閉式の荷物取り入れ口、横側に開閉式の荷物取り出し口を備えています。

ユーザーがスマートフォンの「楽天ドローン」専用アプリから商品を注文すると、予約管理システムがそれを受け付けてドローンが離陸し、自律飛行で目的地へ向かいます。ドローンが目的地に到着すると、届け先のユーザーの専用アプリにその旨が通知されます。さらに、ドローンが自動的にドローンポートへ着陸し、荷物をリリースすると、ドローンポートに搭載されたロボットアームによって荷物が回収されます。荷物が到着すると、届け先のユーザーのアプリに暗証番号が通知されるので、この番号を使ってドローンポート横側取り出し口の電子鍵を解錠し、荷物を受け取るという流れになります。

また、3月には彩の国くまがやドーム(埼玉県熊谷市)で、みちびきのCLASを利用したドローン配送の実証実験を実施しました。ここでは、荷物を搭載したドローンが自動的に離陸・飛行・着陸し、荷物をリリースした上で帰還する実験を行いました。彩の国くまがやドームは上部をテフロン膜材で覆われ、衛星測位が可能とはいえ屋外と比べて電波が減衰する環境です。ただ、ドーム内であるため風の影響を受けず、ドローンの機体制御の性能に関して適切なデータを取得できるという利点があります。

同社が通常使用しているドローン配送用の画像認識用マットは3m四方ですが、みちびきのCLASを利用したこの実験では、1m四方内にドローンをピンポイント着陸させることに成功しました。今回、CLASによるドローンのピンポイント着陸を確認できたことで、従来のドローンポートよりも小型化を図れるようになると期待されます。また、衛星測位による位置情報のみでドローン配送を行うことについても、実現可能性を確認できました。

着陸精度実験結果の一例

着陸精度実験結果の一例

関連リンク

久住氏は、「すべてのドローンでみちびきの高精度測位が使えれば、有限の空域を効率的に活用できるだけでなく、ドローンポートも小型化でき、たとえばドローンポートを駐車場の空きスペースに設置して物流の拠点にするなど、効率的に配置・運用できます」と、みちびきの高精度測位に期待を寄せました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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