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[報告] NIHONBASHI SPACE WEEK 2024でみちびきに関する講演を実施

2025年01月16日

2024年11月18~22日の5日間、アジア最大級の宇宙ビジネスイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK 2024」(主催:一般社団法人クロスユー、共催:三井不動産株式会社、後援:内閣府宇宙開発戦略推進事務局、総務省、文部科学省、経済産業省、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)が東京・日本橋で開催されました。会期中は国内外の政府や宇宙機関、学術団体、民間宇宙ビジネスなど100以上の企業・団体が参加し、150を超えるスピーカーが登壇しました。
その中で、11月20日にプレゼンテーションステージで行われたのが「準天頂衛星システムみちびき~7機体制の実現と11機への拡張」です。みちびきコミュニティによる発表として「2023年度 みちびきを利用した実証事業公募」に採択された6事業者がそれぞれの取り組みを紹介しました。

講演する三上参事官と聴講者

会場の様子

三上参事官

事業者による発表に先立ち、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官(準天頂衛星システム戦略室長)が挨拶しました。三上参事官は、2024年度内に次のみちびきの打上げが行われる予定であり、2025年度にはさらに2機が追加され、2026年度から7機体制となることを説明し、「みちびきはこれから来年にかけて7機体制となりますので、皆さまどうかご活用ください」と呼びかけました。

水上氏

オーシャンソリューションテクノロジー株式会社(OST)の水上陽介代表取締役は、漁業者支援サービス「トリトンの矛」を紹介しました。みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応した自社開発のIoT機器を船舶に設置し、取得した船舶の航跡をもとにAI(人工知能)を活用して操業日誌を自動作成するものです。他には、漁船からの転落時に転落者の位置を通知する救難位置通報システム「トリトンの矛 レスキュー」や、フィジー・マナ島にて行ったみちびきの災害・危機管理通報サービス(災危通報)及びMADOCA-PPPの実証事業、インドネシアにおけるIUU(違法操業)の取り締りや水産資源の評価・管理などの取り組みも紹介しました。

山本氏

株式会社コア GNSSソリューションビジネスセンターの山本享弘センター長(常務執行役員)は、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)及び信号認証サービスに対応した受信機「Cohac∞Ten++」を搭載するドローン「ChronoSky PF2-AE」を使用した実証実験について報告しました。「ChronoSky」は、みちびきを活用して顧客課題を解決するGNSSソリューションです。この他にCLAS対応ドローンによる砂防ダム点検や、気象庁がMADOCA-PPPに対応した海上GNSS観測装置を使って、対流圏遅延量を高精度に計測することで線状降水帯の予測に活用している事例なども紹介しました。

笹川氏

国際航業株式会社 LBSセンシング事業部 RSソリューション部 技術企画グループの笹川正担当部長は、MADOCA-PPPによる海洋離島のマッピング(基準点設置)サービスの実証事業について紹介しました。同社は、MADOCA-PPPの観測を実施した上で計測方法を定める技術ガイドラインの素案を作成すると共に、フィリピンにおいて同案に沿った海洋離島の基準点計測を、NAMRIA(フィリピン国立地図・資源局)の協力のもとで実施し、MADOCA-PPPの安定した計測を確認しました。今後は日本のODA事業などを活用し、海洋離島測量におけるMADOCA-PPP利用及び技術ガイドライン案の普及と定着を図る方針です。

園田氏

独立行政法人国立高等専門学校機構 仙台高等専門学校 総合工学科の園田潤教授はオンラインにて、CLASを活用し高精度の自動走行が可能なインフラ点検用地中レーダロボットの実証実験について報告しました。園田教授は、小型軽量のクローラロボットにCLAS対応受信機を搭載し、高精度測位による自動走行を可能にすると共に、地中レーダの調査結果に位置情報を付与するためのCLAS対応受信機をもう1台搭載することで、CLASの高精度位置情報を地中物体の位置特定にも活用しました。今後は、従来は人手で行っていた地中レーダ調査を自動化・無人化していく方針と説明しました。

菅野氏

株式会社松本コンサルタント 国土調査3課の菅野雄一係長は、実証事業で行ったCLASを地籍調査に活用するための精度検証について解説しました。同社は山林部の樹木下における地籍測量へのCLASの活用を検討し、そのための精度検証を行いました。その結果、農耕地や村落、山林等においてCLASは地籍調査(一筆地測量)に利用可能な精度、及び作業効率を有することが確認できました。また、一筆地測量の申請に利用可能な作業マニュアル案も作成しました。今後は実際の地籍測量の業務において使用すると共に、CLASを活用した基準点の設置や山林における測量への運用に向けた検証も実施する方針です。

藤田氏

LocationMind株式会社の藤田智明取締役は、位置情報が偽装されていないかをチェックして信頼性を向上できる「位置認証サービス」を紹介しました。これは、みちびきの信号認証サービスに対応したGNSS受信機と、位置情報の信頼性を評価するAI分析を組み合わせたサービスで、このサービスを活用したトラックのCO2排出量測定の実証検証も実施しました。藤田取締役は、位置認証サービスのターゲット領域として、ドローンや陸上物流、船舶、農機、港湾、マイクロモビリティ、要人監視など様々な分野を挙げた上で、実証実験の相談など幅広く受け付け中であると会場に呼びかけました。

中須賀代表理事

最後に主催者である一般社団法人クロスユーの中須賀真一代表理事(東京大学 教授)がオンラインで登場し、みちびきの認知拡大やユースケースの創出を目的としたコミュニティ活動「みちびきコミュニティ」の取り組みを紹介しました。みちびきコミュニティでは、非宇宙産業の事業者に対して基礎的な講座を開催することで、各分野の事業者がそれぞれの分野にみちびきを導入することで起こる可能性を掘り起こす取り組みを行っています。中須賀代表理事は、みちびきを活用したビジネスが新しいアイデアによってさらに進み、異なる分野の企業や研究者とのコラボレーションの中で新ビジネスが生まれることへの期待を表明しました。

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