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[報告] みちびきアイデアソンを開催

2023年12月27日

2023年11月9日、準天頂衛星システムサービス株式会社の主催による「みちびきアイデアソン」を都内で開催しました。アイデアソンとは「アイデア」と「マラソン」を合わせた造語で、短期間で新たなアイデアの創出を目指すイベントです。今回はみちびき利活用の新たなユースケースのアイデア創出を目的に参加者を募り、開催当日はみちびきに関心を持つさまざまな業種の約50名が参加し、3時間にわたり議論を実施しました。議論では、事前に設定された5つのカテゴリーにおける課題について、みちびきの高精度測位を利活用した解決アイデアを議論し、解決アイデアの事業化可能性についても検討を行いました。

会場全景

会場となった会議室

冒頭、内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長 三上建治参事官が、「できるだけ自由な、常識にとらわれない発想で議論していただき、そこからビジネスアイデアを考えていくことは価値があり、オープンに話して膨らませていくプロセスは非常に楽しいので、今日は楽しんでいただきたいと思います」と挨拶しました。

三上参事官

三上参事官

続いて、準天頂衛星システムサービスの委託先であるNECソリューションイノベータ株式会社の神藤英俊主席プロフェッショナルがみちびきの概要を説明し、参加者のみちびきに対する認識や知識の共通化を図った上で、アイデアソンを開始しました。

神藤主席プロフェッショナル

神藤主席プロフェッショナル

アイデア検討の様子-1
アイデア検討の様子-2

各チームに分かれてアイデアを検討

グループ分けは「高精度測位×水上ドローン」「高精度測位×バイタルデータの利活用」「高精度測位×地図の高度化」「高精度測位×3次元点群データを活用したインフラメンテナンス」「高精度測位&信号認証×ドローン等による取得データの利活用」の5つのカテゴリーによるチームに分かれ、それぞれ自由に意見を出し合いました。
各チームにはファシリテーター(まとめ役)として、みちびきを活用したサービスアイデアの検討や情報発信に取り組む活動「みちびきコミュニティ」のエバンジェリストが1人ずつ入り、各分野の最新動向やみちびきに関する情報を提供すると共に、アイデアの事業化に向けた助言を行いました。すでにみちびきを活用した製品やサービスを提供している企業からの参加者もいれば、みちびきの知識をあまり持たない参加者もいて、幅広い層が集まった中で、ブレインストーミング形式でさまざまな議論を行いました。

アイデア検討の様子-3
アイデア検討の様子-4

オンライン会議にアクセスして意見を入力

議論の進め方は、各カテゴリーにおける社会課題や技術の動向を共有した上で、まずは技術的な実現の可能性を考慮せずに自由にアイデアを出し合います。この時、参加者の中に各カテゴリーに関する専門的な知見を持つ人がいたら、それらの知見も共有しながら議論を進めます。
次に、技術的な課題など実現する上でのボトルネックとなる要素を確認した上で、最後にアイデアが実現した場合にどのようなビジネスが考えられるかを検討しました。今回はリアルとオンラインのハイブリッドのアイデアソンのため、すべての参加者がオンライン会議にアクセスしながら、模造紙に付せんを貼っていくように、パワーポイント上にさまざまな意見を書き込みながらアイデアをまとめていきました。

議論を終えた後に、各チームのファシリテーターがそれぞれのアイデアを発表しました。チームごとの発表内容は、以下のとおりです。

春原氏

ファシリテーター:春原久徳氏

『水上ドローンをどのような用途で使えるかを検討しました。ドローンのような移動ロボットには、モノを運んだり、何かを撒いたりするなど「何らかの行為を代替すること」と、「情報を取ること」の2つの役割があります。水上ドローンというと物流のイメージが強いですが、今日は参加者の中に海上のデータを取得する取り組みを行っている方がいたので、その話を拡張しながら、課題などについて話しました。
課題として多く聞かれたのが、通信手段やバッテリー(電源)の確保の問題と、海上でのデータ取得に関するルール作りの問題でした。通信手段や電源の問題については、今後、洋上風力発電などが整備されたら、それを拠点として通信や給電を行うアイデアが面白いと思いました。海で使われているボートやブイなどをインフラとして活用することは重要ですし、それに関するグランドデザインを作ることで海外にも持っていけるという意見が出ました』

発表の様子-1

春原氏の発表

野澤氏

ファシリテーター:野澤宇一郎氏

『すでにバイタルメーターが付いたスマートウォッチなどのデバイスが存在しますが、そのような製品とは異なる、肌に身に付けて心拍などの細かい情報を取得できるバイタルメーターの活用法を検討しました。用途としては、まず除雪車のオペレーターの見守りが挙げられます。また、運送業の分野では荷物の放棄隠匿(とく)が課題となっているので、その解決策として配達人の心臓の動きをモニタリングするというアイデアが考えられます。あとはレーサーやスポーツ選手に装着して活動中のバイタルデータを取得したり、工事現場で作業員の熱中症を予防したりするアイデアも出ました。さらに、みちびきを使うことで登山において遭難したポイントを正確に把握するといった使い方もあります。また、屋外に放牧されている牛や馬の位置情報の把握やペットの見守りにも使えます。
課題としては、データを取得するためのコストが高いことや、通信方法や充電方法などが挙げられます。それを踏まえて事業化について話し合ったところ、機器メーカーとなってデバイスを販売したり、サブスクリプション形式で提供したり、補助金制度を利用したり、肌着メーカーなどとタイアップしたりといったアイデアが出ました』

発表の様子-2

発表する野澤氏

嶋田氏

ファシリテーター:嶋田敬一郎氏

『主に車椅子用の地図について議論を行いました。Googleストリートビューの場合、カメラの位置は地上から2mくらいの高さですが、車椅子ユーザーの場合は視点が約1mなので、見えている景色がまったく違います。そうした異なる視点からアプローチすると、どのようなサービスが必要かという話をしました。みちびきの活用法としては、精緻に標高を取得することで道の微妙な傾きを検知するとか、勾配がある場合の車椅子の速度の変化を可視化するといったアイデアが出ました。
課題は、「視点の高さ」「目的地への到達時間が分かりにくい」「店の入口が分かりにくい」ことなどが挙げられ、その解決策として人流データをもとに地図を作り、その上に車椅子ユーザーが自分たちで情報を書き込むUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)のようなサービスや、みちびきを使って取得した移動ログをもとに通りやすい車椅子用のナビゲーションを提供するサービスなどを考えました。マネタイズ方法としては、最初は有料で提供し、情報提供者は料金を安くすればユーザーが増えて精緻な地図ができるのではないかと考えています』

発表の様子-3

発表中の嶋田氏

佐藤氏

ファシリテーター:佐藤将史氏

『点群データをどのようにインフラメンテナンスに役立てるか、ということを議論しました。今回は高速道路を中心とした橋梁と、下水道の埋設管の2つのインフラを検討し、埋設管のメンテナンスソリューションを考えました。埋設管は地中に埋設されており、どこが壊れているかが分かりづらいため、壊れていそうな箇所を見当を付けて点検しないと効率が悪くなってしまいます。
老朽化する要因は、埋設管の材質や工法、太さなど老朽化する内的な要因と、地震や災害を経験した履歴や埋設管の上を走る道路の交通量、気温など外的な要因の2種類あり、これらの組み合わせによって不具合が発生します。そのため、これらの要因を総合的に診断するアルゴリズムを構築する必要があります。理想は日本中の埋設管をデジタルツインで可視化し、不具合が起きるリスクが高い場所はどこかを判断できるようにすることですが、コスト面で難しく、災害時に特に影響が大きそうなエリアに絞ってデータを取得し、アルゴリズムを構築して全国各地の自治体に販売するというアイデアにしました。
そのためには最初の研究開発が重要なので、全国共通のアルゴリズムを作るために、まずは国との共同研究によりベースを作った上で全国の自治体や事業者に販売することを考えています』

発表の様子-4

佐藤氏の発表

荒木氏

ファシリテーター:荒木健史氏

『スプーフィング(なりすまし)対策としては、放置自動車の廃棄物処理対策をするにあたって、画像と位置情報を改ざんできないようにすることで行政コストの削減が可能となります。一方、ビジネススキームを考えると政府向けだけでは難しいため、リサイクル事業者に情報提供するサービスも考えられます。
ユーザーによる利活用では、個人の認証と測位衛星の信号認証をどのように組み合わせられるかが課題となります。たとえばドローンをアバターにして見守りサービスに活用するといった使い方もあるし、そのように個人に1台ずつドローンが寄り添うようになった場合は信号認証によってドローンを区別できるようにする方法も考えられます』

発表の様子-5

荒木氏の発表

各チームの発表を聞いた後、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の和田弘人企画官が、「今日参加いただいた方々は、それぞれアイデアを持ち帰っていただき、ご自身が関心のあることに適用できるかをいま一度考えていただければと思います」と閉会の挨拶を行いました。

和田企画官

和田企画官

長時間の会合を終えた参加者からは、「いろいろな企業の人たちとディカッションできてとてもよかった」「自分の守備範囲ではない業種の方も参加していたが、自分が置かれた現状に合わせて話していただいたり、その話を得意分野の方が補足してくれたりして、非常に面白い議論になり盛り上がりました」といった感想が聞かれ、盛況のうちに終了しました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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